pherim㌠

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pherim㌠さんの日記

(Web全体に公開)

2021年
11月08日
23:13

ふぃるめも196 ゲニウス=モノス

 
 
 今回は、10月29日~11月6日の日本上映開始作と、第7回新千歳空港国際アニメーション映画祭上映作から12作品を扱います。(含短編3作/再掲1作)
 
  ※開催中の第8回新千歳空港国際アニメーション映画祭ではなく、前回分。
  いつか更新しようと後回すうち一年たっちゃったシリーズPart4!!


 タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート[https://twitter.com/pherim]まとめの第196弾です。強烈オススメは緑超絶オススメは青で太字強調しています。(2020年春よりドラマ含むネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしばタイトル黒太字表記です。)


 
■10月29日公開作

『スウィート・シング』
ビリーとニコ。15歳と11歳の姉弟が歩む。
酒に溺れる父の元から、再婚した母の家へ。
義父の虐待を拒絶して始まる、子どもだけの心の冒険。
貧しいから、毒親だから、不幸なのか。大人の決めつけこそを乗り越えゆく生命力が、まぶしくも瑞々しい。子どもは大人の半分ではない。

"Sweet Thing" https://twitter.com/pherim/status/1452623043382026250

  拙稿「子どもの宇宙とこの自由」 http://www.kirishin.com/2021/10/27/51237/




『モーリタニアン 黒塗りの記録』
キレッキレのジョディ・フォスターと、自ら製作&出演決めたベネディクト・カンバーバッチとの凄絶なる対峙。
死刑を目的に動く中佐と辣腕弁護士との交錯が、現代世界の特異点たるグアンタナモの本質を白日の下へ曝け出す。瞳だけで語り切るタハール・ラヒムの鮮烈。

"The Mauritanian" https://twitter.com/pherim/status/1452054509748834309

  拙稿「グアンタナモの倫理 再監獄化する世界(4)」 http://www.kirishin.com/2021/10/29/51273/




『場所はいつも旅先だった』
サンフランシスコ、マルセイユ、台湾など巡る旅映画。
深夜&早朝メインの映像が快い。
スリランカ・シギリヤの僧院パートは殊に眼福。
同題書籍もつ松浦弥太郎監督の言葉は、沢木耕太郎ソフト版という印象。小林賢太郎のナレと、アン・サリーの主題曲が一層心くすぐる。

"" https://twitter.com/pherim/status/1453556377197027328




■10月30日公開作

『カウンセラー』
予約なしでヤバい患者が来ちゃったよ、って序盤からの三段ロケット式ヤバさの急加速がコワ楽しい。シンプルにベタを積み重ねた先に煌めく巧緻の乱反射。
あらかじめ短編作と知りつつ観始め、ああ面白かったなこの20分って確認したら42分作と知ってさらにホラー。後続作が楽しみすぎる。

"Psychology Counselor" https://twitter.com/pherim/status/1449936467829035010

※10/30下北沢トリウッドで公開スタート




『MONOS 猿と呼ばれし者たち』
圧倒的。コロンビアの森奥に暮らす、8人の少年少女ゲリラ兵、囚われの女性博士。
訓練、戦闘、仄かな情欲。雲下に煌めく砲火と、連絡将校のみにより感覚される外部世界。逃走、嫉妬、狂奔。
『蠅の王』の膂力と、映像音響の洗練。
色々破綻してる語り口、ゆえの稠密。

"Monos" https://twitter.com/pherim/status/1451815557083189248

  拙稿「子どもの宇宙とこの自由」 http://www.kirishin.com/2021/10/27/51237/




■11月5日公開作

『アンテベラム』

南軍将校らに酷使される黒人奴隷女の咆哮、
リベラル社会学者として名声を極める女の絶叫。
『ゲット・アウト』『アス』製作陣が、ストーリーラインと伏線のすべてを中盤の一点へ収束させ、一気に裏返しゆく。全スタッフ&役者が一点突破へ全集中する、脳が痺れるほどの小気味よさ。

"Antebellum" https://twitter.com/pherim/status/1454057540619173895




『花椒(ホアジャオ)の味』
香港の火鍋店主が急死、店をどうするか悩む娘は、台北と重慶に未知の異母妹がいると知る。
三姉妹の鮮やかな描き分けが香港/台北/重慶の美景に重なり、隠し味の謎探求が父との和解へ連なる多感覚堪能映画。
アン・ホイ製作パワーで、アンディ・ラウほか脇役陣も凄まじい。

"花椒之味" "Fagara" https://twitter.com/pherim/status/1455170718144950272

  拙稿「香港の心のゆくえ」 http://www.kirishin.com/2021/11/06/51385/
  
  


■11月6日公開作

『これは君の闘争だ』

極右が台頭するブラジルで、高校生が立ち上がる。
公立学校の閉鎖、貧しい者がより貧しくなる社会へのド直球なプロテスト。
すべてがラテンのバイタリティ。学校に籠城、道路を封鎖し機動隊へ抗う全体をリズムが貫く。『時代革命』ばりに学校間で連携試みる場面とかもう胸熱。

"Espero tua (Re)volta" "Your Turn" https://twitter.com/pherim/status/1460239976805777410

  『時代革命』 https://twitter.com/pherim/status/1457270313599660032
 
 


『スズさん 昭和の家事と家族の物語』
生活史家小泉和子さんの母スズさんの知恵の数々。
関東大震災後の奉公や、横浜大空襲へ至る戦時下の生活模様めぐる語りも貴重ながら、映像に残された家事一つ一つの細やかな卓越性に、木造家屋や家具の工夫が密接に絡まり合う様は圧巻。失われゆくのはあまりにも惜しい。

"" https://twitter.com/pherim/status/1454247292668559360




『我が心の香港 映画監督アン・ホイ』
丸ごと香港電影史とさえ言える、
1952年に香港移住した許鞍華の一代記。
親しいアンディ・ラウやシルヴィア・チャンらの証言と日本で観難い過去作の引用豊富で、中国残留日本人の実母めぐる語りなど許映画の精髄そのもの。大陸で香港愛炸裂させる終盤もう激熱。

"好好拍電影" "Keep Rolling" "映画をつづける" https://twitter.com/pherim/status/1452828905803423745

  拙稿「香港の心のゆくえ」 http://www.kirishin.com/2021/11/06/51385/


 

■第7回 新千歳空港国際アニメーション映画祭(2020年)
 https://site2020.airport-anifes.jp/

“Genius Loci”
街に棲まう獣の気配。雑踏と混沌、赤子の視線、震える林檎。観終えてから題名がゲニウス・ロキ≒地霊、作者は“Song of the Sea”美術監督と知り深く納得。
闇なかに分裂し、融合する心の火炎。『マロナの幻想的な物語り』の手描き水彩&人間版のようとも感じる。

"Genius Loci" https://twitter.com/pherim/status/1342661462901227521
  
  『マロナの幻想的な物語り』 https://twitter.com/pherim/status/1298452729220628480
  



“Abandoned Village”
枯れ木の荒野に風雨が襲う光景をよく眺めると、廃屋や井戸の姿影が混じっている。
かつての村の残響。何かがあった痕跡。闇の中、ふと一軒に明かりが灯る。橙の輝点は瞬時に存在の中心となる。荒れ野が不意に命をもつ。
ジョージア(グルジア)発Mariam Kapanadze監督短篇、珠玉。

"მიტოვებული სოფელი" "Abandoned Village" https://twitter.com/pherim/status/1333753920418574345

※↑動画はメイキング。

“Abandoned Village”監督のMariam Kapanadzeは1991年生まれの女性で、ググると“枯れ木の荒野”イメージに取り憑かれた人とわかり興味深い。ジョージア国立手影絵劇場の俳優との由。
また喚起力の高い本作から直ちに想起されたのは、アブハジア紛争描く『とうもろこしの島』。

  『とうもろこしの島』 https://twitter.com/pherim/status/1336447301707960320
 
 “Abandoned Village”の原題"მიტოვებული სოფელი"でグーグル画像検索したら、かなり素敵な風景写真群に遭遇。おすすめです。
 などウロウロしてたら監督と相互フォローに。わいわい。
 (ってもう一年前のことですけど、はい。)





 余談。

 昨年の新千歳空港国際アニメーション映画祭、受賞作中心に実はあと長編含む10作品以上を観ているのですが、ツイートしたのは上記2作品のみ。オンライン配信を期限ギリギリに観だしたため、メモ書くより多くを観るほうを優先させた挙げ句、溜まりゆく未ツイ案件の山と化し、その時々の目先の山を優先しつづけた結果このありさまと相成り果てにけり。

 というのを教訓に、今年は早め早めに楽しんで参りとう。
 第8回新千歳空港国際アニメーション映画祭オンライン配信、きょうから。

  第8回新千歳空港国際アニメーション映画祭オンライン上映会場↓
  https://airport-anifes.jp/online/

 面白いですよ~。





おしまい。
#ふぃるめも記事一覧: https://goo.gl/NXz9zh
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