pherim㌠

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pherim㌠さんの日記

(Web全体に公開)

2021年
11月11日
19:36

ふぃるめも197 さよなら恋するボストンキング

 

 今回は、11月12日の日本上映開始作と、ミムジー・ファーマー特集上映作などから12作品を扱います。(含再掲2作)

 タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート[https://twitter.com/pherim]まとめの第197弾です。強烈オススメは緑超絶オススメは青で太字強調しています。(2020年春よりドラマ含むネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしばタイトル黒太字表記です。)


 
■11月12日公開作

『アイス・ロード』

氷の道ゆくトラック野郎&姐が世界を救う。
地底に孤立した26人を救うため、今にも割れそうな4月の氷上道路を大重量積んで走る色々ギリギリ感。
『恐怖の報酬』オマージュてんこ盛り。リーアム・ニーソン運転手なら、そらさせたくなりますよねっていう。

"The Ice Road" https://twitter.com/pherim/status/1456614070405058561

  『恐怖の報酬』https://twitter.com/pherim/status/1065081326879961088

検索すると早くも『恐怖の報酬』劣化版系の感想乱れ打ち状態だけど、個人的には昔観てたナショジオ系ドキュメンタリー『アイスロード・トラッカーズ』をハリウッド映画化してくれた感が楽しかった。つまりローレンス・フィッシュバーン要素のほう。




『SAYONARA AMERICA』
細野晴臣が淡々と語り、歌い奏でる優しき一篇。
2019年NYライヴに集った人々の粋と、懐深い細野愛に驚く。
コロナ禍だからこその、ステージ進行を軸とする構成が嬉しい。誰もマスクをせず、思い思いに細野音楽を楽しみ、細野ジョークに笑う光景の穏やかさ、沁みゆく有り難さ。

"SAYONARA AMERICA" https://twitter.com/pherim/status/1458412084698312712




『カオス・ウォーキング』
トム・ホランド vs マッツ・ミケルセンの異星SF原生林ウエスタン。
デイジー・リドリーの瞳の浮遊感と、男の心は読めるが女の心は読めないSF設定のオヤジ並感。黒人牧師が強烈で、WALKING DEAD他にも通じるサバイバルコロニーの牧師強存在ぶりはハリウッドならではだなと。

"Chaos Walking" https://twitter.com/pherim/status/1457703460665659402




『ボストン市庁舎』
御年90歳を越えたフレデリック・ワイズマン、
その集大成にして野心作。272分をもたせる技量が半端ない。
市長マーティン・ウォルシュによる市民との旺盛極まる対話努力を軸に、市行政の多面的発光が齎す陰翳を余す処なく汲みとる不可能を成し遂げた、ほとんど奇跡にも近い巨篇。

"City Hall" https://twitter.com/pherim/status/1447765133753683972

『ボストン市庁舎』、全国公開11/12~。
なお今夜、山形国際ドキュメンタリー映画祭2021 @yidff_8989 にて単回オンライン上映、10/12(火)18:30~(~24:04/1時間の猶予あり)。 https://online.yidff.jp/film/city-hall/
そして23:14から、フレデリック・ワイズマン御大Q&A登場!! \(^o^)/ (↑Zoom@上記URL内より)

  『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』
  『ニューヨーク、ジャクソンハイツへようこそ』https://twitter.com/pherim/status/1051659069134532608
  『エッセネ派』"Essene" https://twitter.com/pherim/status/1056378071706611712


特に『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』が良かった人などは、本作のスケールに圧倒されること請け合い。

婚姻の場面、誓いの言葉を読み上げる役人の背景がファイル棚で、女性の同性婚カップルである今日性 この場面を冒頭10分かつボストン・レッドソックスの優勝祝賀式の直前に置くワイズマン仕草。この抑揚あっての4時間半が飽きさせない。

  トーマス・ハイゼ『家』(1984) https://twitter.com/pherim/status/1381922861435154432




『ファイター、北からの挑戦者』
ボクシングに覚醒する脱北女性ジナの物語。
脱北者専門のブローカーや生活支援、韓国社会の底辺を肉体労働で生き抜く様などリアル描写が興味深い。無表情一辺倒から徐々に喜怒哀楽増すイム・ソンミの演技も見処。『マダム・べー』監督新作。

"파이터" "Fighter" https://twitter.com/pherim/status/1458990262710009861

  『マダム・ベー ある脱北ブローカーの告白』https://twitter.com/pherim/status/871155530911277056




『フォーリング 50年間の想い出』
粗暴な言動が認知症でより苛烈になった父と、
罵倒に耐えつつ幼い日の父想うゲイ男性。
ヴィゴ・モーテンセン初監督+脚本+製作+主演+音楽というヴィゴ尽くし。私小説的映像&音響表現で魅せる才能の奥行きに驚かされる。地味に医師役クローネンバーグ出演など渋い。

"Falling" https://twitter.com/pherim/status/1458772651455889413




『ドーナツキング』
伝説のドーナツ王、テッド・ノイ。カンボジアの貧しい家に生まれ高官の娘に恋し、内戦を経て移民、大富豪となるも一文無しへ転落。
リドリー・スコット製作。カリフォルニア州のドーナツ屋5千店、うち9割超がカンボジア系経営。そのルーツとなった男の軌跡。ピンクの箱も彼発祥。

"The Donut King" https://twitter.com/pherim/status/1458627334202744832




『皮膚を売った男』
難民化したシリア男性が、皮膚をアート化する芸術家の企みに乗り、作品として国境移動の自由=査証を得る。突如の絢爛と、自失へ陥る魂の怯え。
近年増えた現代アートをテーマとする秀作映画群、どれも金満臭ギラッギラだけど、一方の極に中東/移民問題を置く本作射程は比類なき。

"L'Homme Qui Avait Vendu Sa Peau" "The Man Who Sold His Skin" https://twitter.com/pherim/status/1459369705655848962




『恋する寄生虫』
潔癖症の青年と、視線恐怖症の少女。
頭の中の“虫”に操られる自分と、“虫”を駆除した未来への恐れ。
林遣都ほか男優陣の醸す演劇調のもっさり感と、盛り込み過ぎ抑制知らずの演出を、小松菜奈の超越風情で爆風鎮火する毎度の綱引きが面白い。閉鎖した豊島園や科博地球館ロケ良景。

"" https://twitter.com/pherim/status/1458274445349453825




■ミムジー・ファーマー特集上映 11/5~全国順次公開
 https://mimsyfarmer2021.com/

『MORE/モア』
ミムジー・ファーマーの身躯が、
ピンク・フロイドの音律に跳ね躍り弾けゆく。
沸騰する1969年のイビサへ素気ない恋人を追う男が、燦々と降り注ぐ陽光のもとハマり込む激情愛欲嫉妬の渦。
ロメール&トリュフォーの撮影監督アルメンドロスによる鮮烈映像も快い、シュローダー’69年作。

"More" https://twitter.com/pherim/status/1455335063910973440




『渚の果てにこの愛を』
旅の途上、老女から失踪息子と取り違えられ居候しだすと、他の人々も狂言続行を促して、あげく息子の美しき妹が現れ恋してまう。
本当に狂ってるのは誰なのかって『砂の女』展開ながらまばゆきミムジー・ファーマー、地中海の青空と火山灰原の黒が素肌を引き立て一層眩しき。

"La route de Salina" https://twitter.com/pherim/status/1457142409872113668


 

■国内過去上映作(含映画祭上映作)

『しゅうりりえんえん』

石牟礼道子自作朗読。
花の祈りが音楽になる寸前の言葉たち。
苦悩の深いものほど喋らない、空の奥に赤い花のように咲いているだけ。
「陰陽師って流行ってるらしいですね、私も好き」など収録インタビューも良い。被せられる映像音響悪くないが、アナウンサー朗読なら程よい音量バランスで、石牟礼の滑舌が処々潰れ気味。

""   

“そのような樹や草の姿は遠い昔、私達が海から生まれた生命であることを思わせます。海は原初そのものです。海を鏡に覗いてみれば、実に意味深い社会の姿が写しだされてきます。意味を解きしらせてくれるのは、死者達や苦悶の極で今も生き残り、生き返ろうとしている人々です” 石牟礼道子

  拙稿「水俣に命ながれる 『MINAMATA―ミナマタ―』」 http://www.kirishin.com/2021/09/23/50829/


 
 

 余談。この10~12月上旬は、フランス映画祭やドイツ映画祭など各国大使館後援系も含めアホかというレベルで映画祭イベントが過剰に乱立するのだけれど、正直もう少し分散させようよとは思います。「芸術の秋」概念に縛られすぎてるというか。そも劇場/スクリーン総数自体に通年で差は出ないわけで。バンコクではこういう過密さは感じたことなかったですね。

 消化に切羽詰まっては本末転倒、楽しんで参りとうございます。





おしまい。
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