今回は、第34回東京国際映画祭(10月31日~11月7日)オープニング作品と、コンペティション部門上映作から計10作品を扱います。
タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート
[https://twitter.com/pherim]まとめの第198弾です。
強烈オススメは緑、
超絶オススメは青で太字強調しています。
(2020年春よりドラマ含むネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしばタイトル黒太字表記です。)
■第34回東京国際映画祭オープニング作品
https://2021.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3400TOC01
『クライ・マッチョ』
クリント・イーストウッド監督主演新作。
老カウボーイと誰も信じられない少年と雄鶏の、
メキシコ荒野二人+1羽旅。
奇跡の翁。91歳がロデオしカーチェイスしチンピラを拳でのす。でもすぐ昼寝するし早くは歩けない。91歳ですので。ぐっと穏やかなる『グラン・トリノ』更新版。
"Cry Macho" https://twitter.com/pherim/status/1454392686354440196
■第34回東京国際映画祭コンペティション部門1 (ふぃるめも200にてコンペティション部門2扱い予定)
https://2021.tiff-jp.net/ja/lineup/list.html?keyword=&...
『ザ・ドーター』
妊娠少女が、山小屋に匿われる。赤子を養子にもらう約束で山小屋に匿った夫婦が、少女の心変わりを受け入れられずモンスター化したところで少女の彼氏登場いざファイト!
雪の絶景下繰り広げられる終盤の「それ食べるの」「え、そこ隠れるの」みたいな意外性の小渋滞が案外楽しい。
"La Hija" "The Daughter" https://twitter.com/pherim/status/1481095440364113929
『クレーン・ランタン』
誘拐した女性4人全員から告発されない謎の男に、法学徒青年が迫る。
その筋立てに抱く『羊たちの沈黙』方向への期待値が開始5分で吹っ飛ぶ、どこを切っても金太郎飴な、動きすぎてはいけないバイダロフ様式美完成済み。
バイダロフ前作『死ぬ間際』を観てなかったらどう感じたろうというのは気になる。
"Durna Çırağı" "Crane Lantern"
『死ぬ間際』 https://twitter.com/pherim/status/1343369674998759424
『その日の夜明け』
スリランカ・セイロンへ、チリ参事官として赴任したパブロ・ネルーダ25歳児の倒錯と狂奔の黒歴史。
便所掃除の娘が不可触民と聞き、エリアーデ『マイトレイ』もビックリのエキゾチシズム情欲大爆発でがっつく無惨な姿。色々いびつだが実直執事翁は救い。
"Alborada" "The Dawning of the Day" https://twitter.com/pherim/status/1456979104629018629
『ネルーダ 大いなる愛の逃亡者』 https://twitter.com/pherim/status/927103966839586816
『四つの壁』
クルド人音楽家親父が、ボスポラス海峡見渡すアパート上階の絶景を手前に建ったビルに奪われ、憤怒の夜間爆音演奏挙行。
サイの季節な哲学的バフマン・ゴバディ監督作ゆえ、四壁って当然生老病死だろうと観始めたけど、その実コミカルでさえある軽快さが心地よい。
"The Four Walls"
『サイの季節』 https://twitter.com/pherim/status/677609713119309825
『オマージュ』
売れない映画監督ジワンが60年代映画『女判事』の修復作業を請け負うことに。良質韓国映画に名脇役として出まくるイ・ジョンウン、ずっと気になってたのでもう堪能。女性監督の苦難という主題とは別に、友達と観られる面白い作品撮ってという息子とのやり取りも激楽しい。
"Hommage" "오마주"
『アリサカ』
フィリピン・バターンの密林&原野を舞台とする追跡物サバイバルアクション。警察の腐敗に染まりきれない女性警官が、同僚に命を狙われながら先住民に匿われる。
ブリランテ調の前半から、バターン行進の日本兵遺骨と有坂銃が眠る洞窟を結節点とする後半の飛躍展開が鮮やかで楽しめた。日本軍と同じ侵略者として描かれる警察、さすがフィリピン。
"Arisaka"
@MikhailRed
『復讐』 “Payback ”
バイク泥棒の青年と、元締め組織との非対称戦争。
ブリランテ・メンドーサ安定の、貧困&暴力&汚職のコングロマリット。過去作『ローザは密告された』他より諸々巧緻化したウェルメイド感がしかし、メンドーサ映画の魅力向上と言えるかは微妙。とはいえこの路線の行方には期待大。
"Payback" "Resbak" https://twitter.com/pherim/status/1460083077669998598
『ローザは密告された』 https://twitter.com/pherim/status/889123911438184448
※本ツイ引用RTにて、いずれメンドーサ連ツイへ発展予定。
『ちょっと思い出しただけ』
伊藤沙莉がベスト・オブ・ベストの煌めき、凄すぎる。
その発光を引きだす池松壮亮の懐深さも圧巻。
失意の青年と女性ドライバーの恋が描く軌跡、その残響。演劇畑の松井大悟監督作とあって会話台詞が全編面白いなかでも、ふたりのやり取りはその日常温度がもう神話的。
"Just Remembering" https://twitter.com/pherim/status/1466739196845260810
東京国際映画祭観客賞受賞時ツイ: https://twitter.com/pherim/status/1457631366623817732
『もうひとりのトム』“El otro Tom”
アメリカでADHDの息子トムを育てる、
メキシコ人シングルマザーのエレナ。
投薬後の息子の変化に違和感覚える母が治療を拒んだ後、人々や福祉制度がみせる禍々しさ。あちら側でなく腕に抱くこの息子を選ぶと、こちら側の社会が牙むく鏡像世界のリアル描写に怯む。
"The Other Tom" "El otro Tom" https://twitter.com/pherim/status/1461170429150695430
余談。
『ちょっと思い出しただけ』観客賞受賞。
観客賞は劇場外部に掲示されたQRコードを読み取るスマホ投票で決まるのだけれど、これはもう順当というしかない結果。物語の吸引力が半端ない上に、役者の演技も余韻が濃く、日本の観客に対して限定になるけれど、芸術性で攻める他有力作群には太刀打ち不能のマス訴求力をもっていたように思います。
あと伊藤沙莉の演技は最優秀女優賞いける水準だったとさえ思うのだけど、そこは演技力だけで測られるようなものではそもないし、文脈が異なるのでしょう。ちな『もうひとりのトム』のフリア・チャベスが最優秀女優賞。これはこれで納得の。
そうそう、最優秀男優賞は『四つの壁』の4人。最優秀主演男優賞ではなかったと初めて気づくなど。てか性差で分けるのなんで、って潮流は未着なんですね。
おしまい。
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