今回は、第8回新千歳空港国際アニメーション映画祭、オンライン配信作より33作品を扱います。
ふぃるめも通常回と異なり全て短編作、ネット動画貼附のないもの多め。タイトル右隣の国名は製作国ないし作者の現所在国を表し、ツイート時は国旗イラストで表現へ置換。数の多さ、将来的な被検索性等も懸案し、監督名込みの定型文を基本としました。
タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート
[https://twitter.com/pherim]まとめの第200弾です。
強烈オススメは緑、
超絶オススメは青で太字強調しています。
(2020年春よりドラマ含むネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしばタイトル黒太字表記です。)
■短編コンペティション (インターナショナルコンペ1-4, ファミリー)
https://airport-anifes.jp/programs/
“Steakhouse”スロベニア
夫婦のテーブル越しに展開する男の無自覚な抑圧と、黙々と受け流すようで溜め込む女の炸裂情念。東欧ジョーク独特の渇いた暗さってあるよなと思わされたŠpela Čadež監督作。
あと直近でみた『ダーク・アンド・ウィケッド』が想起され。(皿の上のあれ的に)
"Steakhouse" https://twitter.com/pherim/status/1469671916948815875
『ダーク・アンド・ウィケッド』 https://twitter.com/pherim/status/1462984035844513795
“Two Sisters”ロシア
漆黒の森の途方もなさと、闇中に焚き火の焔がみせる鮮やかさの神話的コントラストが半端ない。
Anna Budanova監督の名で検索し、エカテリンブルグ出身・ウラル国立建築芸術大学卒とわかってなるほど本物の原風景だったかと勝手に納得。ウラルの森の闇、想像膨らんでまう。
"Two Sisters" https://twitter.com/pherim/status/1470394291168354304
“Statues Game”中国
だるまさんがころんだ中国版がみせる創造的奥行き。瞬間が時間を超える迫真性。チョークで木の幹に文字を描くあたりの、日本のそれとの微細なズレも味わいあり。上海のHong Xiao @HongXiaoPorco監督作。
"Statues Game"
“HIDE” フランス
かくれんぼで遊ぶの少年が隠れたまま世界は歳月を経て、少年は暗闇から扉の隙間越しにそれを眺めつづける。押入れに隠れたまま異世界冒険する絵本が想い起こされたDaniel Gray @daninski監督作。
https://vimeo.com/490724436
"HIDE"
『リスの盛り上がり』中国
賢そうな銀毛リスが、どんぐり銃で黒リス♂を殺戮し獲た肉片から縞柄リス♀像を作成、黒リスの持ち寄るどんぐりを代価として像との性交渉機会を提供するダークファンタジー。
娯楽産業風刺ともとれるブラック・ユーモア鋭きXi Chen @chenxifilm監督作。
"Squirrel Fulfillment" https://twitter.com/pherim/status/1464870740516237315
“Krasue”
タイでは誰でも知ってる、女の生首に内蔵がぶらさがるオバケのガスー。
紫に発光する切り絵タッチはかわいいし、マフィアの市街戦から熱帯林への展開アツく、オチにはなごむ。このタイ人作家おもろいなと思ったら驚きの日本人作品でしたっていう、ひらのりょう@hira_ryo監督作。
"Krasue" https://twitter.com/pherim/status/1476560215554531328
“Kandittund! (Seen It!)”インド
驚きの《まんがインド昔ばなし》。水木しげるを想わせる、個性的で憎めない妖怪たちが跋扈するマラヤーラム月夜の森。
終幕の登場妖怪オールスターパレードも楽しい。市原悦男風味のナレーション(監督の父君かも)も味わい深いAdithi Krishnadas監督&@suresheriyat製作。
"Kandittund!" "Seen It!" https://twitter.com/pherim/status/1480533023292796928
『飯縄縁日』
祭りの会場を不思議な遠さから俯瞰する絵が、
ゆっくりスクロールし続ける榊原澄人監督作。
やがて視線の主はきっと幽霊なのだと感覚される。謎は仄めかすようにしてふと明かされる。気づかない人はそれでもいい、そこはあまり大事じゃないとでもいうように。
https://twitter.com/i/status/1382649909472493573/video/1
"" https://twitter.com/pherim/status/1468925792529039360
“Orders”スペイン
警察を装った電話に促され、スーパーの男性店員が女性店員を代理尋問した実際の事件を基とする短編。
アメリカ郊外を生きる人々の日常風景が、性的拷問にも近いセクハラへ及んだ顛末の音声全編に載る緊張感のただならなさ。Aleix Pitarch @aleixpitarch 監督作。
"Orders" https://twitter.com/pherim/status/1464227574121320449
“Love, Dad”チェコ
父が欲しかったのは娘でなく息子だった。
父は母を離れて別の女性と息子をもった。
わたしさえ、男の子に生まれていたら。
子ども心には耐え難い苦渋の反実仮想を語り切る、その立ち位置自体も興味深いベトナム系チェコ人Diana Cam Van Nguyen監督2021年作。
"Love, Dad" https://twitter.com/pherim/status/1466604451230547971
“Flowing Home”ベトナム カナダ
ベトナムから難民船でマレーシアへ渡った妹タオ15歳。
サイゴン攻防戦で死んだ恋人サンが忘れられない、ハノイに残った姉サオマイ17歳。
母の死や復興など長きに渡り文通が交わされる。家壁を這うひび割れの成長により20年の経過を表現する数秒の演出に感動。Sandra Desmazieres監督作。
"Flowing Home" https://twitter.com/pherim/status/1463511106408771584
“Easter Eggs”ベルギー
ふたりの男の子がみる、白昼夢とでもいうべき断章。
昨年の新千歳アニメ映画祭短編グランプリ受賞作ながら、個人的にはウェルメイドな現代寓話という以上のパンチは感じずやや意外。Nicolas Keppens監督作。(何気によくみるMiyu Productions)
"Easter Eggs" https://twitter.com/pherim/status/1503362561697193989
“DING (Thing)”ドイツ
超現実的街角で肉喰らう幼児に追われる主人公。色々イミフ、犬含め肌描写の虹色変幻が良いといえば良い。男性による男性嫌悪的強迫妄想、みたいな。Malte Stein監督作。
https://vimeo.com/558048317
"DING (Thing)"
“Chimes Era #1.2 : the Seat in Judgment (Assessment following the sacrifices of CE #1.1 : the Benching).”フランス
カテドラルの声明がボレロ展開するようなBGMに併せ、謎ギミックの詰まったAR空間のようなどこかで目的不明の手順が進行する。混沌として曇天。
https://vimeo.com/462156294
"Chimes Era #1.2 : the Seat in Judgment (Assessment following the sacrifices of CE #1.1 : the Benching)."
“Night Bus”台湾
深夜の長距離バスで起こる怪事。居合わせた客と運転手らの関係性が次第に絡まりもつれゆく。
動くホラー紙芝居とでもいえそうな、独特の質感と昏さに中毒性を覚える谢文明/Joe Hsieh監督作。人里離れた岬でバスが立ち往生し、一切の逃げ場を失くす中盤からの絶望感素敵。
"夜车" "Night Bus" https://twitter.com/pherim/status/1490897373651898369
“The Wild Cow”米
すこやかなる青空のもと、おおらかすぎる野原をゆく小川で裸の男女がゆらゆらたゆたい、すんすん流れる。そして牛があらわれる。牛と見つめ合う。
牛だったなぁ、とおもう。それだけなのが不思議と心地良いTom Schroeder監督作。Tom Schroeder監督作。
https://vimeo.com/503220779
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“The Visit”シンガポール
収監の続く父を訪ねる。訪ねるたび、幼い頃の記憶がよみがえる。かつて面会室で一緒に父の誕生日を祝った兄姉は、何かと理由をつけもう訪ねることも稀になった。
中国語劇というだけで帯びてしまう今日性。Morrie Tan @morrietannn監督作。全編(英/简CC有)↓
https://www.viddsee.com/video/the-visit/n38ut
"The Visit" https://twitter.com/pherim/status/1475469894452137988
“Jean”フランス
無精ひげを生やして来いと言われた撮影現場に、スッキリひげを剃って現れ大目玉を喰らうジャン。
それだけのミスから撮影が遅れ、居場所をなくすジャン。ちょっぴり反省するけど、テキトー人間ぶりは変わらないジャン。いかにもフレンチおしゃれテイストなMarion Auvin監督作。
https://vimeo.com/478095294
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『はやく学校に戻りたい』コロンビア
コロナ閉鎖した学校建物や校庭の遊具や砂場に、子どもらの描いた動物や虫の絵が映り込む夜。プロジェクション・マッピングかと思ったがCG処理っぽくもある。それだけといえばそれだけだけど、意図のわかりやすさが比類なきAngel David Hurtado Orozco監督作。
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『骨噛み』
父の葬式から始まり、島で父と過ごした最後の夏の回想場面をメインとするこの掌編が、終わりに至って突如転化し生理へ襲い来る感覚はほのかに斬新かつ異様。死を味わうという異様。点描表現が結末に馴染む秀逸。矢野ほなみ監督作。
"A Bite of Bone" https://twitter.com/pherim/status/1463858433430482953
■学生コンペティション
https://airport-anifes.jp/programs/compe_st02/
“Blindness”韓国
いい感じに奔放にフロウに生きてた主人公が、情報の海に囚われ千と千尋の顔なしの首を締め、ぽにょの女神を呑み込み乗っ取るPark Yu-seon監督作。
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“BUT(bud)”米中
一輪の花がみる夢。存在論的ゲーム時空の、なんかここ来たことある感すごい。音響がまた、いかにも安めSteam3Dゲーとかにありそうなテイストで好めるHaomin Peng監督作。
https://vimeo.com/537634726
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“Belly Talkers”米
謎の二頭身キャラがむっくりのそのそ動くのだけど、2年間記録した作者の声帯チック症の音が使用されているとあとで知りびっくり。ちょっとどういうことなのか、いずれ再鑑賞して考えたいKate Renshaw-Lewis監督作。
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“Love is Just a Death Away”チェコ
ウェス・アンダーソン『犬ヶ島』のゾンビ版、という感あるBára Anna Stejskalová監督作。
"Love is Just a Death Away"
『犬ヶ島』 https://twitter.com/pherim/status/999979009931792384
■日本コンペティション
https://airport-anifes.jp/programs/compe_jp/
『古代戦殻ジェノサイダー 第22話OPED次回予告(再放送)+CM集』
新千歳空港国際アニメーション映画祭@airportanifes歴代コンペ出品作のなかでも怪作中の怪作かと。
奇跡的に発見された’80sアニメのVHS録画。という態で為される創意/洒落気の奥行きとニュアンスの分厚さと。
"" https://twitter.com/pherim/status/1461528329756889088
『わたしのトーチカ』
ボンベなしでは息もできない潜水服に身を固め、窮屈さに耐えきょうも学校へ通う少年。
「息をするのもつらいのに、どうして周りの子は平気そうだし楽しそうなんだ」とは幼い頃よく感じていたことなので共感しすぎて重かったが、透明度の高い画に救われる。石舘波子監督作。
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『駐車場でアメを食べたね』
結婚式を前に、幼馴染みに絶縁されるミヨ。
いつまでもあの時のようでいたかった自分と、早く大人になりたかった親友。手の他に足を4本もつ水色ウサギとピンクねこが、いきいき躍動するほどしんみりと切なさ際立つ。関口和希@pikoponpoko監督作。
https://vimeo.com/569852987
"Estrange" https://twitter.com/pherim/status/1465661682324180998
『プックラポッタと森の時間』
幼いころ絵本でこういうの読んだ気がするけど思い出せない。でもこういう森に生きるスナフキンみたいなの、きっと原型的にいるよね今でも心のなかに、など思わせる八代健志監督作。
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■ミュージックアニメーションコンペティション
https://airport-anifes.jp/programs/compe_ma/
『兔子洞』“Rabbit Hole”台湾
公園でふと眠りに落ちたら迷い込んだウサギの穴。
その先に待っていた人類史を遡る級の大冒険。
モノクロームのクレヨン画のような温もりあふれる画が良いし、音はほわほわしてるしの夢心地三昧なVooid MVアニメ、羅荷/He Lo監督作。全編↓
"兔子洞" "Rabbit Hole" https://twitter.com/pherim/status/1483770323501981697
作者による考察: https://twitter.com/hollylo33124/status/14007213291379793...
“Czarodzielnica”ポーランド
森奥の家に暮らす車椅子少女が真夜中、月明かりのもとで眠る/踊る。夢であれ幽体離脱であれ踊る。Klaudia Ptasińska監督作。
パーフェクトな義足とは別に、脳波入力HMD経由の体外離脱体験の実現など妄想。鍵穴から漏れる白光がもたらす余韻良い。全編↓
"Czarodzielnica" https://twitter.com/pherim/status/1488850983484477443
■Best of Feinaki 世界で活躍する新世代の中国アニメーション作家 キュレーター:朱彦潼
https://airport-anifes.jp/programs/mc_feinaki/
“The Six”
うごく十牛図煩悩版。
物欲しげな男が、より魅力を感じる女性へ次々と移り気したあげく、鶴になって当惑する不毛と循環する宇宙。Xi Chen監督作。
https://www.facebook.com/watch/?v=159130601720480
"The Six" https://twitter.com/pherim/status/1467132093834891267
■マスタークラス特集上映:岩井澤健治
https://airport-anifes.jp/programs/mc_on_gaku/
『山』 2010
2つ歳上だけど一緒に高校を卒業した山口くん。
工場へ就職した主人公と、山へ篭もった山口くんによる、卒業前の最後の儀式たちと、卒業後の山での塩辛くも熱い再会。
くすりと笑える小ネタ満載やがて切なき、名作『音楽』(2019)へ至る岩井澤健治監督作。
"" https://twitter.com/pherim/status/1504454305880809476
『太郎は水になりたかった』2019
中学新入生のふたりが好きな子論争をくり広げ、憧れのマドンナ上条さんとどちらが長く脳内で付き合えるかを競う。こそばゆいまでの厨二前夜感。この絵柄、大橋裕之原作なのね。
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余談。ふぃるめも200回。バンコクで夜な夜なメモりだした頃は、100回いったら凄いな、くらいの気持ちだったものです。習慣としてはアリだけど、ライフワークにするようなものでもないので、いずれ更新が止むときは来るでしょう。
せっかくなので、通常回ではないものを試みました。3分の短編でも3時間の映画でも、当然ながら1ツイートにかける時間に大差なく、常より短い呟き含むとはいえ33作品は意外に骨折れました。通常の3倍赤いヤツ。
ちなみにふぃるめもの本数カウントは、短編2本で長編1本カウント、再掲は0カウントが基本、で通算で各回10本ペースを初期からけっこう厳密に守ってます。新出長編12本扱ったら次回と次々回9本ずつとかで。8時間映画でも1本は1本、ドラマ1シーズンも1本カウント、その代わりというか50分作でも5分作でも短編は1/2カウント。短・長編の境目は一応60分。
この方針、初期に散発的に書いていたけれど、どこかでまとめて明記しておこうと思ったのでこれを機会といたしとう。あと今回は、この意味では初の特殊例外。
で、200回。なのでおおよそ長編2000本分。そう考えると、それなりの数ですね。
おしまい。
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