今回は、1月28日~29日の日本上映開始作と、特集上映
《タル・ベーラ 伝説前夜》、
《カール・テオドア・ドライヤー特集》上映作等から11作品 3話を扱います。(含再掲2作)
タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート
[https://twitter.com/pherim]まとめの第206弾です。
強烈オススメは緑、
超絶オススメは青で太字強調しています。
(2020年春よりドラマ含むネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしばタイトル黒太字表記です。)
■1月28日公開作
『クレッシェンド 音楽の架け橋』
パレスチナとイスラエルの演奏家でオーケストラを組む試みは、互いの差別心に阻まれ続け、各々親族に反対され、新たな悲劇さえ招く。
その困難を予め熟知してなお若者らへ希望を賭けゆく老指揮者が、ナチスの両親に生まれたと語られる中盤からの強勢に脳髄痺れる。
"Crescendo" https://twitter.com/pherim/status/1484859145891512320
パレスチナの思想家サイードとユダヤ系指揮者バレンボイムが組み、ドイツ人ゲーテの詩集に因む実在楽団に基づく本作が底部で描くのは、分かち合うことを知った若者達になお立ちはだかる透明の壁の高みであり、自身涙した感動作であると同時に極めて峻厳な一作です。
『ロックフィールド 伝説の音楽スタジオ』
1960年代ウェールズの酪農家兄弟が、滞在型スタジオへの屋根裏改造を思い立つ。
UKロック史を体現する半世紀。音楽映画にも頻出するど田舎のあれ、すべて同じ場所だったとは。クイーン、サバス、ローゼス、オアシス、コールドプレイ等々、等々。圧倒時空。
"Rockfield: The Studio on the Farm" https://twitter.com/pherim/status/1484734593400176640
『アダムス・ファミリー2 アメリカ横断旅行!』
長女ウェンズデーの抱く存在論的不安に導かれ、
破天荒な一家の全米紀行いざ開幕。
リアル南部へ紛れ込むような描画質感、凄くイイ。今回は吹替版鑑賞。杏&生瀬勝久の夫婦役やロバート秋山ら安定、長女役二階堂ふみのダウナーボイスが病み憑き感あり。
"The Addams Family 2" https://twitter.com/pherim/status/1486686840740462595
■1月29日公開作
『誰かの花』
嵐の日、団地の上階から落ちた花瓶が若い父親を殺す。
工場で働く青年が醒めた眼であたりを見回す。住人の冷えた距離感。痴呆の老父、疑われる中年男、被害者妻の硬直した瞳、少年の憎しみに歪む唇。湾曲するリアル。
寡黙な同僚が溶接し続ける町工場描写の醸す、静かな抜けは印象的。
"Somebody's Flowers" https://twitter.com/pherim/status/1485181386474803202
■特集上映《タル・ベーラ 伝説前夜》 1/29~
https://www.bitters.co.jp/tarrbela/
『サタンタンゴ』
438分のタル・ベーラ大作。“タンゴ”の語の醸す熱さ艶やかさ彩りのすべてが反転した裏世界、まさにサタン。此の現実は仮初めの夢であり、彼の現実こそ世界なのだと懐い出させるこの蠱惑、この地獄からの恩寵にただ戦慄する。観終えたあと外の景色が変わって感じられる真性のカルト作。
"Sátántangó" "Satantango" https://twitter.com/pherim/status/1174162136920023042
試写直後ツイ: https://twitter.com/pherim/status/1143485535001837568
『ダムネーション 天罰』“Kárhozat”1988
炭鉱町の場末酒場は雨また雨で色を失くして、
人々は行き場なく生き惑う。
泥撥ねる靴音、野良犬の咆哮、遠く響く機械音。むくつけき出口なし時空へ冷たい雨の降りそそぐ、その雨音がすべてを洗い露わにしたあと、削ぎ落とす。塊となり迫り来るリアルの豊穣。
"Kárhozat" "Damnation" https://twitter.com/pherim/status/1485812854930685953
『ファミリー・ネスト』“Családi tűzfészek”1977
夫の実家で暮らすイレンが、たまの贅沢で女友達へ料理を振る舞うも「金があるなら家へ入れろ」と義父爆発。
舅嫁戦争から役所での家探し問答まで、世知辛い当世ハンガリー事情描く、生々しく若々しきタル・ベーラ22歳時作品。遊園地場面なごむ。
"Családi tüzfészek" "Family Nest"
『ファミリー・ネスト』の家庭描写部は、トーマス・ハイゼが学生時の旧東独時代に撮った『一体何故この連中の映画を作るのか?』(1980)を、役所相談部は同じくハイゼ『家』(1984)を強く想起させた。旧東側ドキュメンタリー映画の同時代性、のようなもの。
『一体何故この連中の映画を作るのか?』(1980) https://twitter.com/pherim/status/1381213097424134147
『家』(1984) https://twitter.com/pherim/status/1381922861435154432
■カール・テオドア・ドライヤー特集上映 12/25~
http://www.zaziefilms.com/dreyer2021/
『裁かるゝジャンヌ』1928
ジャンヌ・ダルク最期の燃ゆる双眸。
不可視の一点を凝視し続ける彼女と、群れてニヤつく審問官達との透徹したコントラストに慄える。
顔面クローズアップの逐一を完璧な構図で描くカール・テオドア・ドライヤー渾身の不朽作を、デジタルリマスタリングにより鋭く刷新。
"La passion de Jeanne d'Arc" https://twitter.com/pherim/status/1481458480464936962
『怒りの日』“Vredens Dag”1943
魔女裁判と覚醒する牧師妻。
ナチス下デンマークの苦渋を魔女狩りへ重ね検閲に抗った、カール・T・ドライヤ―真正の気骨作。
壁面に揺らぐ焔、湖水にかすむ霧さえも計算し尽くされたモノクロームの鬼気迫る様式美。この精神極限は生半可なホラー表現より恐ろしい。
"Vredens Dag" https://twitter.com/pherim/status/1480862178500812806
『奇跡』1954
厳格な父と3人の息子。長男の嫁は産後の病に倒れ、次男は狂気に走り、三男は異宗派の娘との結婚を拒まれる。原題“ORDET”は御言葉の意。
キリストが憑依したように語り続ける次男を無視して物語は進行するが、その言葉の内へこそ命が宿りゆく。室内劇に心的宇宙を封じる構成の極み。
"Ordet" https://twitter.com/pherim/status/1483652388636721153
『ゲアトルーズ』1964
つねに虚ろな女の瞳、けっして交わらない男女の目線。
誰かか誰かの肖像画を映し返しつづける鏡面。
「愛こそすべて」ゆえに孤立へ邁進する女の前で、若さ/地位/名声を無力化された男達がただ見送る。幽かなひと突きで弾け跳びそうな緊張を終幕まで保つ奇跡の一篇。
"Gertrud" https://twitter.com/pherim/status/1487031642858217472
“あなたの信仰告白はこう。「僕が信じるのは、肉欲と、魂の癒しがたき孤独。」”
■国内配信中作品
『時光代理人 -LINK CLICK-』 1-3話
中国産異能力探偵アニメ、異様に面白い。
セクハラと企業スパイ、親友同士♀のラーメン起業と裏切り、廃部寸前のバスケ部。日本製アニメを制約してきた空気の支配、の外側で構想される語り口の異質さにまず惹かれる。中国アニメもやりおる、みたいな時期は完了してたのね。
"时光代理人LinkClick" https://twitter.com/pherim/status/1486531746845790213
余談。再掲作をのぞく長編10作でふぃるめも1回分を基本とし、これまでアニメやドラマは無謀にも1クールを長編1本とカウントしてきましたが、今回は3話分で1本に数えておきます。もとより配信作は観ても呟かないもののほうが圧倒的に多いので、ここをこだわっても意味はほぼないのですけどとりまさておき。
おしまい。
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