pherim㌠

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pherim㌠さんの日記

(Web全体に公開)

2022年
02月21日
23:18

ふぃるめも209 不気味な牛の秘密

 

 今回は、2月18~19日の日本上映開始作と、《シネマテーク・フランセーズ 日本映画特集》配信作から13作品を扱います。(含中篇1作/短篇3作)

 タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート[https://twitter.com/pherim]まとめの第209弾です。強烈オススメは緑超絶オススメは青で太字強調しています。(2020年春よりドラマ含むネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしばタイトル黒太字表記です。)


 
■2月18日公開作

『オペレーション・ミンスミート ナチを欺いた死体』

コリン・ファース抜群の表情演技が光る主演新作は、のち007を書くイアン・フレミング少佐が発案者となった史実の諜報作戦描くスペクタクル。
WWIIの風向きを変えた嘘。近年機密公開されたMI5文書に基づく作戦進行の再現描写が、ガチ詳細で笑う。

"Operation Mincemeat" https://twitter.com/pherim/status/1493419764625989632




『マヤの秘密』“The Secrets We Keep”
ナチスに迫害を受けたロマ出身の主人公マヤが
米国移住後、街角である指笛を聴き恐怖を呼び起こす。
トラウマやPTSDと客観的事実の相克。
彼女が拘束した男は、果たして元ナチ軍人なのか。
製作&主演兼任のノオミ・ラパス、鬼気迫る精神の臨界へ降り立つ凄演。

"The Secrets We Keep" https://twitter.com/pherim/status/1490229791391305728

北欧美男子ジョエル・キナマンを誘拐するロマ女性役ノオミ・ラパス、その超絶特殊な感情演技は、『ストックホルム・ケース』の拉致犯イーサン・ホークに情抱く銀行員役と真逆にして通じるものあり。
あと一瞬マヤ遺跡冒険活劇かと思わせるPR意匠の罠感好き。

  『ストックホルム・ケース』 https://twitter.com/pherim/status/1323819561913704448




『君が落とした青空』
ツイートはしないけど、色々発見のあった一作。
『ハッピー・デス・デイ』+『時をかける少女』、でも主演アイドルは死なず、繰り返し死ぬ役は男子が肩代わりする。
懐かしのケータイ小説が12年の時を超え映画化というゾンビ感、汚れ演技はさせず内輪の論理でシーンが間延びし、どうみても後出しなのに先行作群を超えるチャレンジ皆無なのは、それでも回る需要を当て込んでいるからという、アレ。それでも育つものが育つならいいかという考え方もあり、かも。

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これ、十代の観客層には一定程度ウケるんだとおもう。
で、『時かけ』とか知って広がってく子もいるし、それ以外の大半の子はリア充人生を発展させるなか映画ってこういうものという程度にはコミュニケーション消費しつづける。

むかしほぼこういう文脈で、岩井俊二作品を筑紫哲也が腐してた。岩井俊二だよ、今は現代中国映画界からも大リスペクトの。だからたぶん、これはこれで良いのです。見通すのきつかったけど、そういう意味も込みで楽しめるひとには良い作品。言うまでもないことですが。




『白い牛のバラッド』
冤罪で夫を死刑にされたミナは、判事の謝罪を希求する。
誤審を知った判事は辞職し、償いを密かに模索する。
死刑執行数世界2位の本国イランで上映中止の本作、“子連れ未亡人”への義父義弟の抑圧含め、主演+共同監脚マリヤム・モガッダムの反骨精神宿る鋭い映像感覚に心慄える。

"Ghasideyeh gave sefid" "Ballad of a White Cow" https://twitter.com/pherim/status/1492751701635338245

※クルアーン&イスラーム法と映画をめぐり後日追記するかも。




■2月19日公開作

『銀鏡 SHIROMI』

500年続く銀鏡神楽。
宮崎の森奥、龍房山を御神体とする銀鏡神社で奉納される舞は冬至の太陽神を再生する儀礼に基づき、初めに北極星を祀る。
祝子(ほうり)を務める大人は語る。全ての前に感謝があると。闇の時間に神は音を伴い到来する。頬を赤らめ熱弁奮う神主おじいかわゆす。

"SHIROMI" https://twitter.com/pherim/status/1493939857009217542




■Cinémathèque française “Henri” Japan Fringe シネマテーク・フランセーズ・オンライン配信企画・日本特集
 https://cinemathequefr.github.io/henri/

『ひとつの歌』
ポラロイドで街なかや行き交う人の写真を撮って歩く青年と、カメラ屋の女性との出逢いが結ぶ固有の軌跡。
ありふれた西武線沿線の住宅地の光景が、漂う不穏さを含め懐かしく感じられる杉田協士監督作。その不思議な時空感覚の醸成に捧げられる、独特の手法たちの慎ましさは心地良い。

"A Song I Remember" https://twitter.com/pherim/status/1491263456355680262




『不気味なものの肌に触れる』
不気味なものの、ぬめる手触り。その温度。
濱口竜介近作『寝ても覚めても』『ドライブ・マイ・カー』他に響く不穏さ、震災の木霊のような表現の端源を、この2014年作に聴いた心地。欲望の不可能性。
あと河井青葉や渋川清彦の出る濱口作品に具わる物静かで質実な独特ムード、もっと観たいな。

"Touching the Skin of Eeriness" https://twitter.com/pherim/status/1498129929614991362

   濱口竜介作品群スレッド https://twitter.com/pherim/status/859318925829349376




『Out There』2016台湾日本
青年が街をローラースケートで駆け抜ける影。日本で暮らす台湾人青年を導き手に越境描く伊藤丈紘監督作。
モノクロ日本場面とカラーの台湾場面、語られる過去と語る現在の心地よい交錯と混濁に、恐怖分子的良趣を味わう。
近年集中した米国スケボー映画群の東洋版が観られた感。

"Touching the Skin of Eeriness"

  『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』 https://twitter.com/pherim/status/1319121235809202177
  『mid90s ミッドナインティーズ』 https://twitter.com/pherim/status/1298817354365718528
  『行き止まりの世界に生まれて』 https://twitter.com/pherim/status/1299651007433981956





『丸』“Ow”
民家に現れた謎の球体を見た瞬間、人は静止してしまう。そこで起こる事故と警察の隠蔽を週刊誌記者が嗅ぎつけ、物語は斜め上へ転がりだす。鈴木洋平監督2014年作。プロットも役者も秀逸ながら、わめくような演技過剰が生む勢いに頼る演出は、意図不明瞭でやや残念。松浦祐也際立つ存在感。

"Ow" https://twitter.com/pherim/status/1493204723679121413




『波のした、土のうえ』(2014)
陸前高田で“震災後”を生きる心情。ともに暮らしてきた人々を失って、なお。小森はるか+瀬尾夏美監督作。3篇構成のうち1篇は『空に聞く』(’18)の阿部裕美さんが語り手。寄り添う試みの軌跡と、『二重のまち』(19)へ至る複雑化の階梯など想う。
https://vimeo.com/148440440
"Under the Wave, on the Ground" https://twitter.com/pherim/status/1502073497497083910

  『空に聞く』(’18) https://twitter.com/pherim/status/1329582085724459008
  『二重のまち/交代地のうたを編む』(’19) https://twitter.com/pherim/status/1365520416752603138


「でもね。あのベルトコンベアーの音がとまると、ほっとする時があるの。」 

(ベルトコンベアー図付ツイ。この“ベルトコンベアー”は隣接する山を崩し、土砂を埋め立て区画へ運ぶため設置された超長構造物。例えばこの画とこのセリフを、重なりとして残すこと。小森連作の達成したかけがえなき価値の一つかと。)




『愛讃讃』2019
10歳のとき父が連れてきた、四川出身の新しい母。
作ってくれた地獄の池のように赤い鍋。TVでスプラッター映画をみながらついばむナツメ。カタコト大阪弁の人生訓。カラオケで歌う“甜蜜蜜”。
実体験に基づくという池添俊監督短篇。
古い8mmのざらつき醸す記憶の古色が味わい深い。

"Jujuba" https://twitter.com/pherim/status/1495731160617713665




『揺蕩』2020香港日本
ざらつくモノクロフィルムが仰ぎみる香港の高層住宅と、おもむろに横切るアロワナの揺れる髭。
なにか遠のく。つかない手触り。まつろわぬ風。
池添俊監督短篇、ブレる無意識。
https://vimeo.com/654571831
"Oscillation" https://twitter.com/pherim/status/1501385209710710784




『朝の夢』2020
衰えゆく祖母の昔語りへ、若い役者を使った再現描写を絡める池添俊監督短篇。
わたしはみるのをやめる
そのときとつぜんわたしは生きはじめる
(※老若の声が重なる終盤の朗読が良かったので一部書き下しました↓)
https://vimeo.com/601510527
"See You in My Dreams"

ひろがり

ものたちの広がりの中を わたしは歩きつづける
ふと風がたつ すると 時が身うごきする

ひそかな身ぶりも だがすぐ忘れる
ひとの気づかぬ広がりのなかに時の死がある 
人間のおもい及ばぬ広がりに 気づいていよう
わたしに無関心なものたちのあいだで
生き死ぬことを知ろう
わたしは歩きつづける
さながらわたしもものであるかのように
わたしはみるのをやめる
そのときとつぜんわたしは生きはじめる

 



 余談。

 コロナ禍を機に始まったCinémathèque française “Henri”。文化政策立国フランスの映画機関による企画とあって、他の特集もとても興味深いのだけれど、時間破産状態とフランス語不能ゆえ観られていません。残念なことです。
 
 ボローニャ復元映画祭との共同企画をめぐる連ツイ:
 https://twitter.com/pherim/status/1276294041726935040


 一日が48時間あっても、けっきょく足りないんでしょうけれど。




おしまい。
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