今回は、3月11~12日の日本上映開始作と現在公開中作品、マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル2022(MYFFF)から、15作品を扱います。
タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート
[https://twitter.com/pherim]まとめの第212弾です。
強烈オススメは緑、
超絶オススメは青で太字強調しています。
(2020年春よりドラマ含むネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしばタイトル黒太字表記です。)
■3月11日公開作
『林檎とポラロイド』“Mila”ギリシャ
記憶を失くした男の日々。
記憶はないが体はある。音楽に身体記憶が揺さぶられ、くねりだす秀逸ダンス。浮遊する現実認識を引き写す離人症的映像の、渇いた距離感が趣深い。
元ランティモス助監督と聞いて納得のクリストス・ニク監督作。ケイト・ブランシェット製作。
"Mila" "Apple" https://twitter.com/pherim/status/1479785546612604932
■3月12日公開作
『スターフィッシュ』“Starfish”2018
やっと、一人になれた。
世界にとり残された少女が、亡き親友宅へ引き篭る。内面のリアルを襲う怪物たちの彷徨は実存の直喩であり、手触りある現実こそ胡蝶の夢の裏側なのだと彼女は知る。
狼の毛皮で身を護り、煤けたカセットテープに導かれゆく、この宇宙。
"Starfish" https://twitter.com/pherim/status/1489219678991884295
■日本公開中作品
『エターナルズ』
海底隆起とかイシュタル門前戦闘など眼福。
これがしたいと強烈に伝わる映画って、それだけで観た甲斐ありと感じるし、そのうえポリコレに沿ってたりすると感心する。
でもポリコレ映画が撮りたいって強烈な意思を感じたのは初めてで驚く。しかもMCUで。
ふつうに面白い。ふつうに多様。
"Eternals" https://twitter.com/pherim/status/1500094616858624002
『エターナルズ』でもう一つ良かったのは、
最強を競ってたヒーロー達がどうにか倒した(人類を半減させた)サノスでさえ、「ああいう困った子いるよね」的に扱う連中が実は古代からおりまして、っていう。
これ多元宇宙の配合で少年ジャンプ構図を超越する、冨樫義博センセが昔から巧いやつ。大好物。
『偶然と想像』
時空がゆがみ眩暈する一瞬へ、
すべてが集束しゆく演出を三たび重ねる神懸かり感。
濱口竜介作常連&垂涎の役者達に加わる古川琴音よすぎた。にしても第1話終盤の、兜割る上段振り下ろしズーム笑う。これあって威力増す第2話ガチシリアス対面切り返し、滅茶面白いし今後が空恐ろしい。
"Wheel of Fortune and Fantasy" https://twitter.com/pherim/status/1499706415367143426
“でも、もし周囲から自分の人生が無価値だと思い込まされたなら、抵抗して下さい。社会の物差しに自分を測らせることを、拒んで下さい。村山さんは、自分だけが知っている自分の価値を抱きしめなくてはなりません。それをひとりでするのはとてもつらいことです。それでも、それをしなくてはなりません。そうして守られたものだけが、思いもよらず誰かとつながり、励ますことがあるからです。それは一生起こらないかもしれません。でも誰かがそれをしなくては、いつまでもそれは起こりません。”
“でも、わからなくなる。なんでここにいるのか。なんにでもなれたはずだったのに、気がつけば時間だけがたってしまった。大きな不満はないの。ぜんぶ自分で選んだことだし、これ以上を望むのは間違ってるとおもう。でも、心燃え立つものが、もう、なにもないの。どうすればいいかわからないの。時間に、ゆっくり殺されていく。”
渋川清彦と河井青葉のセリフ。二人への信頼厚すぎて熱い。
濱口竜介作品群スレッド https://twitter.com/pherim/status/859318925829349376
『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』
陶酔
スパイダーバースの高みへ実写で挑むにはこれしかないって隘路驀進に眩暈、ゼンデイヤ&デフォーの端的な風刺へ感服、カンバーバッチのインセプション・マニエラ時空で昇天
見ず知らずニキと観客2人きりのIMAX鑑賞だん
"Spider-Man: No Way Home" https://twitter.com/pherim/status/1498995386245025792
『スパイダーマン:スパイダーバース』 https://twitter.com/pherim/status/1085737242763522050
バンコクでは2年前、すでにスパイダーバースがリアル展開してましたなオマケ。↓
https://twitter.com/pherim/status/1085838678616768512
■マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル2022(MYFFF)
https://www.myfrenchfilmfestival.com/ja/
『目には目を』“Œil pour œil”
酒場で水夫を募り、大洋でお宝ねらう隻眼の海賊船長。
何度も失敗、再挑戦を繰り返す。
そのさまをカウンターから見守る酒場の女将が実は最強、なラスボス展開いとおしす。
"Œil pour œil" https://twitter.com/pherim/status/1512073595312226312
『たからもの』“Trésor”
海底で沈没船のマーメイド船首像を愛していたタコさん。
ところが愛しの姫が、トレジャーハンター船に引き揚げられ。
(ハンター船長&水夫は財宝箱も発見し、中は四角い穴の開いた金貨たっぷり。この和同開珎的な秦からあるやつ、基本銅銭だよね。金貨もあったのかな~とか)
"Trésor" https://twitter.com/pherim/status/1497904578917896194
『各駅停車』“Omnibus”1992
運行ダイヤの変更を知らず急行へ乗ってしまった男性が、どうしても止めてくれと車掌や運転士へ乞い願う。
他の乗客の好奇心、車掌の躊躇、運転士の気概。リアルの魔窟をなんと善意が掘り下げるSam Karmann監督作。
’92カンヌ短編パルム・ドール&’93アカデミー短編実写映画賞受賞。
"Omnibus" https://twitter.com/pherim/status/1493775850264694787
『誤植』“Erratum”
発掘したての古代ローマ期のフレスコ画に、現代フランス語のスラングを発見した教授。
教授は助手と精査熟考、試行錯誤するけどトンデモ学説にしかならず当惑。
「あっ」っていう抜けが心地良いGiulio Callegari監督作。オチでそこに飛ぶとはね。
"Erratum"
『強く抱きしめて』“Hold Me Tight”
言葉を知らない男女の形をまとったナニモノか同士の邂逅と交愛。
警戒する互いがふと“可能性”に気づき、やがて触れ合う情感描写に生命力あふれるLéoluna Robert-Tourneur監督短篇。
闇へ沈む森を地に、沸き立つ情熱が踊る図は“Two Sisters”が想起され。
"Hold Me Tight" https://twitter.com/pherim/status/1494646985588019200
“Two Sisters” https://twitter.com/pherim/status/1470394291168354304
『子ぐま』“Ourse”
夢遊病にかかった少女の夜のゆくえ。
無意識の足どりの謎を、いじめられっ子少年と組み解明に挑む冒険タッチが楽しいNicolas Birkenstock監督作。
少女の夢遊を追尾し見た真実を明かさないことで成長する少年も良趣。主演Armande Boulanger、表情繊細で今後かなり活躍しそう。
"Ourse" https://twitter.com/pherim/status/1501527831414652929
『月』“Lune”
刑務所上がりの女性が淡々と日常を暮らすなか、意を決してある男性をデートに誘う。
社会から逸脱してしまう人の苦悶と孤独、救済の緒描くZoé Pelchat監督。
寒色に満ちながらも、優しい。
"Lune"
『強い男』“Malabar”
ある夜、ベトナム系老人を轢いてしまう黒人青年と中東系青年。
初め逃走した2人が、救助者を装って言葉の通じない翁を助けたあとのシニカル&ユーモラス展開に和む。
老人の暮らす低所得者住居の多文化共同生活模様も印象深い、Maximilian Badier-Rosenthal @MaxBrst監督作短篇。
"Malabar" https://twitter.com/pherim/status/1503739839371710465
『アストラリウム』“Astralium”
砂浜へ掘った穴を貝たちで飾り、
小魚を入れ自分だけの生態系をうみだし眺める少女。
やがて潮が満ち、かりそめの世界は波にさらわれ悲しみに心が囚われる。
けれどその痕跡に残された輝くもの一つ。
可愛らしい物語、にして余韻の深い寓話。
創造とか、洪水とか。
"Astralium" https://twitter.com/pherim/status/1500311316254265344
『勇気を出せ!』“Haut les cœurs”
15歳少女ケンザは、弟のマーディが転校予定の同級生に片思いしてると知り、チャンスは今しかないぞとけしかける“パリ郊外映画”的Adrian Moyse Dullin監督作。
弟が蛮勇を奮う一方、初めは悪ノリするケンザの親友が次第に顔を曇らせる。
ある朝の通学バス内でほぼ全てが完結する一方、生徒たちは皆スマホを通じ、SNSで弟くんの尊い挑戦を共有する今日景。
"Haut les cœurs" https://twitter.com/pherim/status/1512998411271737348
“パリ郊外映画(Le cinéma de banlieue)”スレッド https://twitter.com/pherim/status/1234164785815515136
余談。
《マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル》にしろ《未体験ゾーンの映画たち》にしろ、オンライン配信のシステムがU-NEXTのプラットフォームを利用し始めたの、個人的には大歓迎ですね。これまでよくあった独自システムとか規模の微妙なところでの配信となると、UIが苦痛なレベルで使いにくかったりするので。
あと会期外でもU-NEXTで配信され続ける作品がそこそこあるのも地味に嬉しい。MYFFFに関しては、時間の制約から今回短篇のみしか扱えてないのも、長編でめぼしいものは会期を超えて視聴可能だったからというのもあります。(とはいえそれだと、結局観ずに終わる恐れも大きくなるのですけど)
というわけで、今回貼ったYoutube動画はMYFFFの10作すべて短篇、けっこう全編挙がってるものも多いです。お暇でしたらご覧あれ~。
おしまい。
#ふぃるめも記事一覧: https://goo.gl/NXz9zh