今回は、4月15日の日本上映開始作と、恵比寿映像祭2022上映/展示作などから15作品+αを扱います。(含短篇7作/再掲1作+α)
タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート
[https://twitter.com/pherim]まとめの第217弾です。
強烈オススメは緑、
超絶オススメは青で太字強調しています。
(2020年春よりドラマ含むネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしばタイトル黒太字表記です。)
■4月15日公開作
『勝手にしやがれ』1960
ジーン・セバーグの溌溂、ジャン=ポール・ベルモンドの放埒。
瑞々しさ全編に充ちる本作の、真の主役は疾走感それ自体っていう。幾多の追従を生んだ伝説の数珠繋ぎも今観ると、恋する惑星ほどに響かなかった感性のありようが偲ばれ面映ゆい。なんにせよ名作4Kレストアの流れ素敵よね。
"A bout de souffle" "Breathless" https://twitter.com/pherim/status/1513786913844473859
『気狂いピエロ』1967
画としてヤバいカットの洪水すぎて、
話追えないけどまいっか、ってなる散らかし系良趣。
アンナ・カリーナかわいいって好評のベトナム女装、でもホーチミンの姪設定で雑すぎるベト語擬態とか当該国心情とも無関係に今ならNGよなとか。そもキチ〇いと読ませてたおおらかさ。
"Pierrot le Fou" https://twitter.com/pherim/status/1514797291508420614
『勝手にしやがれ』4K &『気狂いピエロ』2Kレストア上映:
http://katte-pierrot.2022.onlyhearts.co.jp/#
『バーニング・ダウン 爆発都市』“拆彈專家2”
香港国際空港での核爆弾炸裂描く冒頭部がすでに圧巻の完全リブート作。
外観は上質な中国市場向けザ・香港アクションながら、巧みに織り込んだ空港占拠含む2019夏の暗喩が胸熱。
アンディ・ラウのほか姜皓文、袁富華ら熟練陣の継続出演も嬉しい。
"拆彈專家2" "Shock Wave2" https://twitter.com/pherim/status/1505877972074389504
『バーニング・ダウン 爆発都市』でのアンディ・ラウは冒頭で片足を失い、序盤で記憶を失くす。
警察官の物語が、無間道はおろか3年前の前身作のようにさえ、容易には大義と結びつき難くなった香港社会を反映するかのよう。ちな袁富華は今回チャラい下っ端悪役で登場します。
『インファナル・アフェア』(無間道)殉職シーン https://twitter.com/pherim/status/1162556844167946240
袁富華/ベン・ユエン近作ツイ https://twitter.com/pherim/status/1422395480407896067
■国内過去公開作(含映画祭上映作)
『ショック ウェイブ 爆弾処理班』(拆彈專家) ’17
アンディ・ラウ主演で爆弾物処理局の潜入捜査を描く。
“雨傘運動以降の香港警察描写”に着目すると製作兼任アンディ・ラウの本気度が推し量られ、中盤の青年警官の殉職場面に、同監督&同主演作SHOCK WAVE2の2020年との決定的な温度差が結晶する。
"拆彈專家" "Shock Wave" https://twitter.com/pherim/status/1504372986719002628
アンディ・ラウ デビュー作『投奔怒海』 https://twitter.com/pherim/status/1160807559923527681
■恵比寿映像祭2022
https://www.yebizo.com/jp/
テーマは「スペクタクル後」。3階の過半が博覧会史の資料展示。
博覧会が“未来”だった時代、あったよな。スクリーンもいよいよ過去の遺物になりそうね。とか。
木村伊兵衛《四谷見附》1945
林忠彦《サーカス見物 (後楽園)》1947
沢田教一《フエ》1968
(→https://twitter.com/pherim/status/1505378261248794626 )
『ガールフッド』2014フランス
教師に進学の望みを断たれ、不良グループへ加わり解放感を味わうも未来が見えないマリエム16歳。
『燃ゆる女の肖像』のセリーヌ・シアマ監督作。欲望と怒り、葛藤と閉塞感にまみれつつも前へと進む少女の鮮烈な横顔が印象的。
"Bande de filles" "Girlhood" https://twitter.com/pherim/status/1505378261248794626
セリーヌ・シアマ監督2019年作『燃ゆる女の肖像』 https://twitter.com/pherim/status/1332916626879094784
パリ郊外映画“Le cinéma de banlieue”スレッド: https://twitter.com/pherim/status/1232142772452282369
『ガールフッド』“Bande de filles”では中盤、少女がスケバン番長に認められ、新人から武闘派若頭へ成長(?)しゆく姿が描かれる。
その覚醒シーンとも言える、リアーナ“ダイアモンズ”が流れるダンス場面。日常の鬱屈、友との結束、つかの間の解放。佳き。
Rihanna“Diamonds”当該場面動画ツイ
https://twitter.com/i/status/1482548532993302529/video/1
Pathompon Mont Tesprateep
“On-going Part I: Pleng-Krom-Dek (Lullaby)”
タイ深南部最奥の地で渉猟される民謡や子守唄。パトムポン・モン・テートプラティープ監督自身はイサーン出身、同シリーズには他に深南部出身作家による第二次大戦後の政治小説物(恵比寿非上映)あり。
"On-going Part I: Pleng-Krom-Dek (Lullaby)" https://twitter.com/pherim/status/1511537656282304514
Riar Rizaldi
“Tellurian Drama”
西ジャワ州林中に眠る、オランダ領東インド期の遺構。
それは稜線間にワイヤーを張り、山をラジオアンテナの支柱とする植民地政策の残滓だった。
原住民労働と広範な野焼きが地球規模で実現させた通信網の痕跡と、見過ごされた祖霊のうめき。恵比寿’22 My Best。
"Tellurian Drama" https://twitter.com/pherim/status/1514075714399571971
Juanita Onzaga “The Jungle Knows You Better than You Do”
コロンビア辺境、暴力の気配、森奥の霊性。
観た流れもありアピチャッポン味ばかりが先に立つ。あとある種の政治表象のもつ軽薄化リスク(チャラくなりがち)とか。急激な眠気手伝い言葉追えず、再鑑賞機会に期待。
"The Jungle Knows You Better than You Do" https://twitter.com/pherim/status/1516252482942697472
コロンビア アピチャッポン『MEMORIA メモリア』https://twitter.com/pherim/status/1491968334459404289
【映画評】明滅するリアル http://www.kirishin.com/2022/03/04/53173/
“Mount Song”
香港の映像素材コラージュでテンポ良い映像。とはいえ前作(↑)中に襲来した眠気により鑑賞不能。再鑑賞機会に期待。
[動画見当たらず]
"Mount Song"
佐藤朋子
《オバケ東京のためのインデックス 序章 Dual Screen Version》
岡本太郎の都市論「オバケ東京」(’65)由来のレクチャー・パフォーマンス(@シアターコモンズ’21)録画を素材とする2画面展示。
東京地図パズル上にゴジラを歩かせ、進路に併せパズル破壊するなど。意味深く思い出深い芝浦会場。
[動画見当たらず]
SATO Tomoko "Index for a Obake Tokyo: Introduction, Dual Screen Version" https://twitter.com/pherim/status/1521844175968546817
“Buyer Walker Rover (Yiwu) Aka. There Then”
中国・義烏で就職を志す外国人女性描くアマリア・ウルマン監督作(『エル プラネタ』)。
機械翻訳のチープさが画面上へ良い味醸し、安物日用品の世界的卸売拠点である義烏の雑然と、多言語併記の混沌とがよく馴染む。無意味化する情報過剰のリアル。
"Buyer Walker Rover (Yiwu) Aka. There Then" https://twitter.com/pherim/status/1508736385607340032
『ありふれた話』“เจ้านกกระจอก”2009
下半身不随の青年と、彼を介護する看護師青年とを主人公に据えたアノーチャ・スウィチャーゴーンポン初長編。
中盤以降の圧倒感増し、数年前ネットで観たゲイ表現味先立つ印象との格差に驚く。まさに『暗くなるまでには』前継作感。
"เจ้านกกระจอก" "Mundane History" https://twitter.com/pherim/status/1524377688953462784
『暗くなるまでには』(ดาวคะนอง) https://twitter.com/pherim/status/1089312170582564864
“Krasue”
タイでは誰でも知ってる、女の生首に内蔵がぶらさがるオバケのガスー。
紫に発光する切り絵タッチはかわいいし、マフィアの市街戦から熱帯林への展開アツく、オチにはなごむ。このタイ人作家おもろいなと思ったら驚きの日本人作品でしたっていう、ひらのりょう@hira_ryo監督作。
"Krasue" https://twitter.com/pherim/status/1476560215554531328
遭遇パフォーマンス
小田香《muse》シリーズ、《Days of the Dead》《セノーテ・ラッシュフィルム》
ビーズ絵画に濡れた土面の温度。不意の『セノーテ』ScreenX。研ぎ澄まされる以前の素材ゆえの広がりと、歩行の自由がもたらす体感。束の間の拡張体験。たとえば3面スクリーンのどこを観るかという選択の。
[動画見当たらず]
"Days of the Dead" https://twitter.com/pherim/status/1494268947642064901
『セノーテ』 https://twitter.com/pherim/status/1319479884012351488
余談。恵比寿映像祭はもちろん他にも観てるし、すでにツイートしてるものもあるのだけど、とりあえずふぃるめもはこれだけで。ツイッター上の恵比寿映像祭スレッドは今後も不定期延伸する所存。
おしまい。
#ふぃるめも記事一覧: https://goo.gl/NXz9zh
コメント
04月14日
23:58
1: いなだ つつみ
たまたま、義烏の地名を見たので。
https://www.nhk.jp/p/gendai/ts/R7Y6NGLJ6G/blog/bl/pkEldmV...
中国も百均商品は儲けがないので日本向け安物からヨーロッパ向け安物にシフトしていて、日本の百均は消滅の危機なんだそうですよ。
04月15日
00:12
2: pherim㌠
とても納得できる話ですね。20年前と今とを比べると、日本では100円でできることは全く変わらないのに対して、中国でもタイでもインドでもできることは大幅に減りました。
アジアから日本へ「安いから」観光&買い物へ来る流れがコロナで不可視された分、経済実態と実感とのギャップは開いてるんだろうなとも。