pherim㌠

<< 2022年4月 >>

12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930

pherim㌠さんの日記

(Web全体に公開)

2022年
04月21日
23:19

ふぃるめも218 ヴォイス・オブ・アンラッキー

 
 

 今回は、4月22~23日の日本上映開始作と、アン・ホイ監督特集上映作などから10作品を扱います。

 タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート[https://twitter.com/pherim]まとめの第218弾です。強烈オススメは緑超絶オススメは青で太字強調しています。(2020年春よりドラマ含むネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしばタイトル黒太字表記です。)


 
■4月22日公開作

『カモン カモン』

子育てに縁のなかった男が、甥っ子との暮らしで味わう奇跡の時間。
ありふれた日常を宝石のように輝かせる、マイク・ミルズ A24のモノクローム・マジックに陶酔する。
ホアキン・フェニックスと完璧に拮抗する子役ウディ・ノーマン圧巻。音が光を生み、余韻もカラフルな珠玉作。

"C'mon C'mon" https://twitter.com/pherim/status/1515179715815874568

ホアキン・フェニックスの、子供とのバディ物秀作として『ビューティフル・デイ』を想起。

  【映画評】 壊れているのは世界なのか 『ビューティフル・デイ』
  http://www.kirishin.com/2018/06/06/14944/





『リンダ・ロンシュタット サウンド・オブ・マイ・ヴォイス』
カントリー・ロックの女王君臨期70~80sから、ジャズやオペラに挑み、病で引退するまでの圧倒的歌声の軌跡。
女性シンガー同士で助け合う初期、メキシコ国境の町で育った幼年期へ呼応する90sスペイン語アルバム期など心打つ見どころ大漁。

"Linda Ronstadt: The Sound of My Voice" https://twitter.com/pherim/status/1515911077262868481




『山歌(サンカ)』
山の娘への恋心と、里の有力者である父への叛意との狭間で揺れる少年の瞳に映る、消えゆく山の民サンカ=山窩の影姿。
定住民との関係性の、『森のムラブリ』との温度差が侘しい。渋川清彦の存在感安定。説明台詞&立ちんぼ演出過多がやや残念ながら、削ぎ落とされた77分の良構成。

"" https://twitter.com/pherim/status/1515663363162124289

 『森のムラブリ』 https://twitter.com/pherim/status/1511312531553366016




『パリ13区』
低給で働く高学歴台湾系女性、教師の夢を中断する黒人青年、復学した法学院で理不尽な目に遭う訳あり女性、清濁併せ呑む日々に疲れたポルノスター。
ジャック・オーディアール セリーヌ・シアマ監脚と聞いて鰻登る期待値さえ超えるモノクロ美で、瑞々しくも新感覚の性愛描く真の快作。

"Les Olympiades, Paris 13e" "Paris, 13th District" https://twitter.com/pherim/status/1516049436140474370

  ジャック・オーディアール団地映画 『ディーパンの闘い』“Dheepan”
  https://twitter.com/pherim/status/1234173461729177601
  セリーヌ・シアマ団地映画 『ガールフッド』“Bande de filles”
  https://twitter.com/pherim/status/1515551267409465351
  セリーヌ・シアマ ノエミ・メルラン 『燃ゆる女の肖像』
  https://twitter.com/pherim/status/1332916626879094784





■4月23日公開作

『アンラッキー・セックス またはイカれたポルノ』

ラドゥ・ジュデ新作は、夜の録画が流出した教師の目を通し、コロナ禍の逼塞でパツンパツンのブカレスト市民心情描く。
ユダヤ蔑視、ポルノ氾濫、公開処刑。『コレクティブ』にも通じる社会批判の鋭さに、ウクライナ隣国の地に疼く切迫感をみる。

"Babardeala cu bucluc sau porno balamuc" "Bad Luck Banging or Loony Porn" https://twitter.com/pherim/status/1516610410073391104

  『コレクティブ 国家の嘘』 https://twitter.com/pherim/status/1443563926021566468

※街なか撮影をめぐり後日追ツイ予定




『インフル病みのペトロフ家』
流感に罹患した男の放浪、憤怒の焔宿す女の咆哮。
畸形的で譫妄的、同時に祝祭的。ソ連期への郷愁と怨念の隙間へ覗く、ロシア宇宙主義の弛んだ双眸。
ウラル東麓エカテリンブルクの夜を舞台とするセレブレンニコフ新作の、あまりにもロシア的な耽美と狂騒に眩暈する。

"Петро́вы в гри́ппе" "Petrov's Flu" https://twitter.com/pherim/status/1511907278848364545

  拙稿「【映画評】ルーシの呼び声(2)」 後日URL追記




■日本公開中作品

『ひまわり』“I girasoli”1970 50周年HDレストア版
大戦下、出征し雪原に倒れた男。
終戦後、男を探し鉄のカーテンを超えゆく女。
ひまわり畑の圧倒的生命力と、
かつての惨劇を囁く農婦。
ソフィア・ローレン&マルチェロ・マストロヤンニが駆けるウクライナの大地、今再び戦場化した大地が挽歌を唄う。

"I girasoli" "Sunflower" https://twitter.com/pherim/status/1514433140890120196

  拙稿「【映画評】ルーシの呼び声(1)」 http://www.kirishin.com/2022/04/16/53879/
  
  

 
■『我が心の香港 映画監督アン・ホイ』公開記念 アン・ホイ監督特集
 https://www.ks-cinema.com/movie/annhui/

『男人四十』
アラフォー夫妻と教え子女子高生の三角関係が、四半世紀を超え転移する。
張學友(ジャッキー・チュン) 梅艶芳(アニタ・ムイ)のひび割れながらも愛し合う姿と、これが映画デビュー作となった林嘉欣(カリーナ・ラム)の奔放さ。
全編の瑞々しさに慄える許鞍華(アン・ホイ)監督’02年作。

"男人四十" "July Rhapsody" https://twitter.com/pherim/status/1476175624662564866




■mubi配信作
 https://mubi.com/showing

『第一炉香』
上海事変の影響で、香港の叔母の邸宅へ預けられた少女が味わう、上流社会を生きる女の光と闇。
叔母役ユー・フェイホンの情念&妖艶眼力が半端ない。クリストファー・ドイル撮影、坂本龍一音楽、ワダエミ衣装で臨むアン・ホイ監督の張愛玲原作映画3作目、現状彼女以外には撮れない充溢。

"" https://twitter.com/pherim/status/1518561356500275200 




『アッカトーネ』“Accatone”’61
ヒモ男が転落末期へといたる、救済御免のパゾリーニ初監督作。郊外貧民窟(borgata)描写の各所で響くマタイ受難曲の屹立。
素人演技の横溢や、風紀紊乱の迫真場面と白昼夢カットのブツ切り接続など、素か狙ってるのか不明の演出が延々つづき、いかにも天才の初発っぽくて好き。

『乞食』 "Accatone" https://twitter.com/pherim/status/1516764314958319621



 

 余談。きょう4/21は、コロナ・オンライン化でめっきり減ったリアル対面インタビュー仕事の、今年2回目と3回目が同じ日にかぶるというなかなかのレア日でした。リアルの緊張とか興奮は、やはりZoomなどより全然尾を引きますね。

 楽しかったけど、それに比べた原稿書く作業の黙々度といったら。いや踊りながら書いてはいけないわけではないけど。ねぇ。





おしまい。
#ふぃるめも記事一覧: https://goo.gl/NXz9zh
: