pherim㌠

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pherim㌠さんの日記

(Web全体に公開)

2022年
04月26日
23:22

ふぃるめも219 ツユクサ線路シアターコモンズ

 
 

 今回は、4月29日日本上映開始作と、シアターコモンズ'21出展作から10作品を扱います。

 タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート[https://twitter.com/pherim]まとめの第219弾です。強烈オススメは緑超絶オススメは青で太字強調しています。(2020年春よりドラマ含むネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしばタイトル黒太字表記です。)


 
■4月29日公開作

『ツユクサ』

痛みだけとって下さい。
痛みがとれたら、また頑張れるので。
小林聡美x松重豊、傷ついた中年同士の恋物語。
かもめ食堂やめがねの湿度マシマシな趣きで、渋川清彦や泉谷しげる、平岩紙や江口のりこ、ベンガルら燻し銀の脇役陣も好塩梅。西伊豆を舞台にしっとり深まる恋模様が麗しい。

"" https://twitter.com/pherim/status/1518199390799761408




『フェルナンド・ボテロ 豊満な人生』
コロンビア出身の巨匠画伯ドキュメンタリー。
ぽっちゃり画業を世界に認めさせる過程描写が面白い。若い頃の苦労話や成人した子供らの回想はよくある成功譚スタイルながら、故郷メデジンのマフィア巣窟環境とその温和な画風&人柄との対峙模様が鮮明にして劇的。

"Botero" https://twitter.com/pherim/status/1517834686642360321

『フェルナンド・ボテロ 豊満な人生』には1人だけボテロ否定派の人物が登場する。
“陳腐さの怪物にNYが侵された”と語る彼女、完全なヒール役なのに論理明晰かつ説得的で感心すると、ロザリンド・クラウスと名が出て驚く。昔の写真↙しか知らず。御歳80代、鋭さ健在なのねと。(画: https://twitter.com/pherim/status/1523258506295783424/pho... )




『N号棟』
廃団地ホラー。廃墟なのにカルト化した住人達がいて、怪異現象のデパート状態てんやわんや。
萩原みのりパツンパツンの破裂寸前演技良い。深田晃司映画で極点抜けたラスボス筒井真理子の怪演は、もはや自己模倣の域へ堕してるのがジャンル映画にはむしろ効く。諏訪太朗の管理人役超好き。

"" https://twitter.com/pherim/status/1517737261764202496

かえす返すも筒井真理子なのだけど、萩原みのりと○し合う場面でみせる表情など、恍惚恐怖陶酔悦楽すべてが突き抜けかつ共存しもうヤバさがヤバすぎて凄い。語彙崩壊。

 筒井真理子出演深田晃司監督作&公開中止作
  『淵に立つ』https://twitter.com/pherim/status/781071911669215232
  『よこがお』https://twitter.com/pherim/status/1154351634492747781
  『蜜月』https://tokinoma.pne.jp/diary/4527

 萩原みのり出色主演/出演作
  『お嬢ちゃん』https://twitter.com/pherim/status/1185512403141709824
  『街の上で』https://twitter.com/pherim/status/1378335473408466948





『手紙と線路と小さな奇跡』
道もない山峡の村の天才青年と、機関士の父と訳あり姉。
村には線路が通るが駅はない。村人は線路の鉄橋を歩かねばならず、橋の上で列車と鉢合わせ死人が出たりする。
ヒロイン役を少女時代のイムユナ好演。実在の簡易駅を巡る奇想天外かつ絶妙な語り口に惹き込まれる。

"기적" "Miracle: Letters to the President" https://twitter.com/pherim/status/1518452500025643008




『人生ドライブ』
10人の子どもを育てる岸さん夫妻の家へ、
21年かけ取材した熊本県民テレビの渾身ドキュメンタリー。
生活は苦しいけれどほのぼの家族、を想像したら家屋全焼、母脳梗塞、アフロ次男と父無言の対峙などめくるめく七転八倒の日々。
子らが続々巣立ちゆく終盤へ怒涛の展開待ったなし。

"" https://twitter.com/pherim/status/1518784509218500608




■シアターコモンズ2021
 https://theatercommons.tokyo/2021/

『蘭若寺の住人』
蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)によるVR新作、堪能。
廃墟の静謐、体に変調をきたした男と佇む女、風雨のなかの異種交感。
『郊遊』の異空間へ全身投入されるようなこの経験は、驚異の体験になる予感を大幅に超え50分が一瞬で終わる。幽霊化した己が見つめる、閉鎖時空を浮遊する生。

"The Deserted: VR" https://twitter.com/pherim/status/1360205279900569603

『蘭若寺の住人』、李康生と一緒に入浴する視点の艶めかしさ、風や豪雨に曝される全方位聴覚体感の鮮やかさ。
カットが齎す驚異的な世界転回。馴致された映画文法の厚みに初めて気づく。面白い。これで’17年作。自身十数度目のVR体験にしてこの鮮烈、未知の沃野は極大だなと。

蔡明亮によれば、映画と比べVR製作で一番の不満は、クローズアップができないこと。ゆえ『蘭若寺の住人』の翌年『あなたの顔』"你的臉"を撮ったと。納得!
蔡のマレーシア→台湾移住話や引退撤回話など、中村佑子さんの秀逸誘導トーク3/11迄試聴可https://theatercommons.tokyo/program/commons_talk_1/

クローズアップの不可能性一般ではなく「(常連俳優)李康生のクローズアップができない」、ここが『あなたの顔』を考える際にはたぶん重要。
また蔡明亮がマレーシア華僑出自である影響は、『日子』の寄る辺なさや『蘭若寺の住人』の浮遊感など通奏底音のようにも感じられる。

  『日子』 https://twitter.com/pherim/status/1350040145676836869




佐藤朋子《オバケ東京のためのインデックス 序章》 
東京地図パズル上にゴジラを歩かせ、進路に併せパズル破壊するなど。
デフォルメされた公式地図の案内に従ったら隣の敷地に入ってしまい、遠回りのすえ数分遅れたら会場へすぐには入れてもらえず思い出深くゴジラの彷徨も意味深い芝浦会場。
(動画見当たらず)
"" https://twitter.com/pherim/status/1523631576311296000

  恵比寿映像祭2022同題出展作 後日URL追記




中村佑子《サスペンデッド》
精神的な病を抱える母とその娘が生きた日常空間へ、ARヘッドセットを介し入り込む。
住居空間の場がもつ時の積層と、淡い白光を基調とするAR視聴覚の作り込みが、極めて情緒的な移入と感動を誘う。ただ各所に長方形ディスプレイが浮く構成はややぎこちなく発展途上の感。
(動画見当たらず)
"" https://twitter.com/pherim/status/1521330359526658048

  猪股剛評「『サスペンデッド』に射し込む光」
  https://note.com/tct20_archives/n/n60277eda7973
  サエボーグ評「病とケアと生をめぐる複数の現実。」
  https://bijutsutecho.com/magazine/review/24324





《I AM (VR)》 Susanne Kennedy & Markus Selg with Rodrik Biersteker
ある地下施設で、神託を授かるため預言者に呼ばれるのを待つ“私”へ、HMDで貫入する。
瞑想や坐禅をめぐる西洋人の妄想つめ合わせな仮想空間+リアル会場スピ演出。千倍巧く視覚化するVRゲーム群に対し、何ら差異化できてない感。
https://vimeo.com/527654438
"I AM (VR)"



 
高山明/Port B《光のない。―エピローグ?》
狭域限定のラジオ放送に周波数を合わせながら、新橋~内幸町(東京電力本社がある)を歩く試み。
電波にのり耳へと流れ込む、不思議な距離感から訥々と東日本震災を描く墺人劇作家の文章が、ビル群や呑み屋街の雑踏を見事に異化する。
(動画見当たらず)
""

  《TOKYO 2021》美術展 高山明出展作:https://twitter.com/pherim/status/1185690292743102464



 

 余談。シアターコモンズはすでに2022が開催済み。5000円だか7000円だかで通し券を買ったが、最も興味のある百瀬文の鍼治療作品は早々に埋まり、中東アラブから東京をみるという極私的関心からは外せないバディ・ダルルのワークショップも「抽選」に外れ、なんだかなというイベントだった。
 
 2022へ行く気にならなかったのも、『蘭若寺の住人』以外ほぼ未ツイートのまま1年たってしまったのも結局この嫌な印象のせいなのかもと、いまになって初めて気づく。主観的には他で忙しかったとか、映画ツイートを優先するうち失念した、とかだったのだけど。
 
 恵比寿映像祭もそうだけど、正味の「映画」からズレる隣接領域の表現は映画ツイートの対象に含むと考える。そうでないと「映画」が固定概念化してしまうので。それを言ったらスコセッシではないけれど、ネトフリやアマプラでみるそれは「映画」なのか、とも言えますし。
 
 とくに高山明/Port B《光のない。―エピローグ?》については色々考え写真もたくさん撮っていたので、写真ツイートだけでもそのうちスレッド化しておこうかと。





おしまい。
#ふぃるめも記事一覧: https://goo.gl/NXz9zh
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