今回は、5月20日~21日の日本上映開始作を中心に、8作品を扱います。(含短篇1作, ドラマ1シーズン)
タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート
[https://twitter.com/pherim]まとめの第222弾です。
強烈オススメは緑、
超絶オススメは青で太字強調しています。
(2020年春よりドラマ含むネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしばタイトル黒太字表記です。)
■5月20日公開作
『a-ha THE MOVIE』
ノルウェー出身トリオが世を駆ける。
1100万枚を売った“Take On Me”の、名曲へと磨かれゆくアレンジ過程はまさに真正a-ha体験、だけど映画はまだ前半。
ビートルズに憧れ、クイーンに嫉妬し、U2を真似て失敗、米国から失楽帰郷のち再起経てなお現役って物語的にも楽しい快作。
"a-ha: THE MOVIE" https://twitter.com/pherim/status/1526554923214700553
“Take On Me”PVめぐり追記予定。
『ワン・セカンド 永遠の24フレーム』
文革期の映画愛描くチャン・イーモウ/張芸謀新作。
ニューシネマパラダイスな感動物語の内で乱反射する、
検閲との緊張孕んだ現代風刺の慧き懐深さ。
風に曝され砂にまみれたフィルム観たさのあまり、
辺境村の皆で洗いだす受容&漸進テーマの熱さに眩暈する。
"一秒鐘" "One Second" https://twitter.com/pherim/status/1525790703917604865
東洋圏への造詣深き年輩の知人から、文革時の人間描写が昔より難しくなったのかという"一秒鐘"巡るご意見頂戴。
1.率直な文革描写を通じた現体制への暗喩的批判、へ当局が敏感になったということはありそう
2.張芸謀や陳凱歌は、元来世代的にも迎合志向
と回答。文革批判はなお無問題という軸にて。
『シング・ア・ソング!~笑顔を咲かす歌声~』
英国軍人の妻たちによる合唱団をめぐる実話由来作。
夫の状況がしばしば不明となるアフガン派兵を制御不能の不安源とする描写に、原題“Military Wives”の即物性が映える。
聖歌は野暮、ロックは野生すぎるのでポップスに落ち着くという軍妻感把握。
"Military Wives" https://twitter.com/pherim/status/1526041428799143937
■5月21日公開作
『私のはなし 部落のはなし』
当事者の記憶や感情の襞へ分け入る手つきの繊細さ、
画作りに偏見が加わるリスクへの慎重さ。
極めて出色のドキュメンタリー。よくぞここまで切り詰めたと感心しきりの205分で、“部落”を巡る諸相への見晴らしが一変する体験だった。京都 崇仁地区の掘り下げは殊に秀逸。
"" https://twitter.com/pherim/status/1527136579806187521
『人生ドライブ』
10人の子どもを育てる岸さん夫妻の家へ、
21年かけ取材した熊本県民テレビの渾身ドキュメンタリー。
生活は苦しいけれどほのぼの家族、を想像したら家屋全焼、母脳梗塞、アフロ次男と父無言の対峙などめくるめく七転八倒の日々。
子らが続々巣立ちゆく終盤へ怒涛の展開待ったなし。
"" https://twitter.com/pherim/status/1518784509218500608
『ドンバス』“Донба́с”
ロシア側フェイクニュース撮影現場に始まる本作の、
紛争下ウクライナで製作された圧倒的解像度。
捕虜への市民の私刑、地下シェルターの怨嗟、政治家と宗教団体の賄賂授受etc.
ハイブリッド戦争の諸相をクリミア以降の日常景として活写する、ロズニツァの胆力に震撼する。
“Донба́с” "Donbas" "Donbass" https://twitter.com/pherim/status/1525445955570388992
拙稿「【映画評】ルーシの呼び声〈2〉」 近日URL追記
■イスラエルが贈る「東北イニシアティブ」短編映画プロジェクト
https://www.nowheretogobuteverywhere.com
『行き止まりのむこう側』“nowhere to go but everywhere”
東日本震災の津波で行方不明になった妻を探し続ける男性を軸とする短篇。
外国向けに外国人が撮った感が強く、監督以下日本人名が並ぶ不思議。記号的に挿入される鹿子踊ほか審美性頼りの神秘恃みで、既にある震災関連作群から遅れすぎ。
"nowhere to go but everywhere" https://twitter.com/pherim/status/1517513425600925698
企画の意図はわかるし、主人公男性が背負うものの深さは印象的だけど。東日本震災の関連映像作はこの11年多く観てきたけれど、巧みな作り手による「依頼されて撮りました感」がこれほど丸出しな作品も稀で、映像美が据わりの悪さへ直結してる。
本作感想で散見される違和感表明の根も大抵そこかなと。
■VOD配信/TV放映作
『彼女のかけら』“Pieces of Her”
ジョージア州の田舎町で銃乱射事件が発生、娘をかばう母が咄嗟の機転で犯人を殺し、世間の注目を集めることから始まるNetflixドラマ。
純正ノワール。夜の闇成分が濾し採られ一滴一滴したたり落ちゆくような。夜中観るにはこういうのがいいんだよ感満載の質実作。
"Pieces of Her" https://twitter.com/pherim/status/1527285646326636544
主演トニ・コレット&若い時の主人公演じるジェシカ・バーデンめぐり追記するかもー。
余談。
これまでドラマは1シーズンを映画1作と等しくカウントしてきたけれど、かかる時間数が異なりすぎるので以後おおよそ120~150分還元で数作分を充てることにします。これに合わせ、いわゆる長尺映画やスローシネマといわれるものも、4時間を超えるものについては2作分~へ換算。短篇についても見直しますが、120分換算とかでなく適宜考えます。個別ツイートにかかる労力は別口となるためです。
TLなどでは「映画とドラマの違い」を強調するひとを時折見かけるけれど、現状はその区分が顕著に融解する過程にあるためそうした言明自体に説得力を覚えることは稀ですね。だいたい2時間だった商業的制約から「映画」が解放されつつあるのと、数十分を1話とする「ドラマ」のTV放送的制約が無意味化しつつあるのは同じVOD興隆時代の両側面なので、おそらくは殊更に言分けする身振りそのものが鈍いものに思えてしまう、ということなのでしょう。
とすれば現行ジャンルではなく時間で区切る、が合理解の極北となりそうな気はします。(そのトータルでただようどうでもいい感)
おしまい。
#ふぃるめも記事一覧: https://goo.gl/NXz9zh