今回は、5月28日~6月3日の日本上映開始作と、《アテネ・フランセシネマテーク 映画の授業》、《新文芸坐シネマテークVol.36クロード・シャブロル特集》上映作から10作品を扱います。
タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート
[https://twitter.com/pherim]まとめの第224弾です。
強烈オススメは緑、
超絶オススメは青で太字強調しています。
(2020年春よりドラマ含むネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしばタイトル黒太字表記です。)
■5月28日公開作
『犬王』
松本大洋のキャラを大友良英の音で動かす、
古川日出男原作の平家物語外伝。
猿楽オペラの律動にうねる描線のキレは享楽そのもの。
森山未來&アヴちゃん(女王蜂)という怪異バディの鮮烈配役。加えて実父=松重豊、足利義満=柄本佑ってもう笑うしか。至極の湯浅政明新作。
"INU-OH" https://twitter.com/pherim/status/1528005262891552769
『私だけ聴こえる』
ろうの親から生まれた聴者の子、コーダたち。
その孤立心情と、『コーダ あいのうた』では描かれないコーダ同士のコミュニティへ充ちる解放感。
15歳で聴覚異変が生じ戸惑う少女、東日本大震災で被災したろう者へ取材する女性。彼らの心の襞を映しだす繊細な手つきが胸を打つ。
"Only I Can Hear" https://twitter.com/pherim/status/1528346996032999424
『コーダ あいのうた』https://twitter.com/pherim/status/1483998314593144834
『きこえなかったあの日』 https://twitter.com/pherim/status/1364942207375958024
『友達やめた。』 https://twitter.com/pherim/status/1305698392157290497
『MADE IN YAMATO』
大和市を舞台とする5話構成。
町おこし絡みの短篇集って玉石混淆&統一性不在に陥りがちだけど、これは実力派揃いのガチンコ自体が面白い。
中でも清原惟作品の、人物がはけてからのラスト2分にもってかれる。人でなく、ありふれた郊外を生きる滋味そのものを主役とするような。
"" https://twitter.com/pherim/status/1530116275120521218
『ゴースト・フリート 知られざるシーフード産業の闇』
凄まじきリアルの臨界。
男達を誘拐し洋上へ幽閉する奴隷漁業を追う、ノーベル平和賞ノミネートながら日本では無名のPatima Tungpuchayakul密着ドキュメンタリー。
孤絶した離島の僻村で家族まで持たされる、
狂世界の極みにガチ戦慄。
"Ghost Fleet" https://twitter.com/pherim/status/1530080708332781568
■6月3日公開作
『鋼音色の空の彼方へ』
名古屋大須発ヘヴィメタルバンド“OUTRAGE”結成35年、の記念ドラマ企画で主演抜擢された若者4人の物語。
YouTuberや駆けだし芸人ら構成の凸凹ぶり、青春バンド物のタルさ泥臭さ、助力者離脱や波乱炎上などお約束てんこ盛りの昭和レトロな装いに各所でくすぐり笑いを誘われる。
"" https://twitter.com/pherim/status/1532191791700938752
『オフィサー・アンド・スパイ』
ユダヤ差別のスパイ冤罪として名高いドレフュス事件を再現した画作りの精度に見入る。
パピヨン舞台=仏領ギアナ悪魔島の克明描写も見処。この監督が今この選択という身振りの醸す疑問を含め、カタルシスとは無縁の殺伐余韻はいかにもポランスキー。(続
"J'accuse" "An Officer and a Spy" https://twitter.com/pherim/status/1532334372694949888
『パピヨン』 https://twitter.com/pherim/status/1140100005224574976
《ポランスキー短編集》 https://twitter.com/pherim/status/1204033044920713216
『シェイン 世界が愛する厄介者のうた』
アイリッシュパンクを築き上げた、
ザ・ポーグズのシェイン・マガウアン一代記。
悪態つき韜晦しつつも祖国愛深きアル中天才詩人、
そのブレなき反骨魂熱い。
ジョニー・デップ製作&聴き手で、己の海賊主演映画を腐され笑って頷く篤き友情も見応え大。
"Crock of Gold: A Few Rounds with Shane MacGowan" https://twitter.com/pherim/status/1531969842076852224
アイルランド独立運動&アイルランド文学の関わりで追記するかも~
■《アテネ・フランセシネマテーク 映画の授業》
http://www.athenee.net/culturalcenter/program/lc/lc2022s....
『ボリシェヴィキの国におけるウェスト氏の異常な冒険』1924
資産家アメリカ人青年と、カウボーイの用心棒によるソ連珍道中。
モスクワ舞台のカーチェイスは、馬橇込みで砂を雪に変えた西部劇そのものだし、綱渡りあり艶事あり騙し騙されのドタバタ面白い。米パロ&反米のソ連国立映画学校第1期卒制。
"Необычайные приключения мистера Веста в стране большевиков" "The Extraordinary Adventures of Mr. West in the Land of the Bolsheviks" https://twitter.com/pherim/status/1529433480110964736
『幸福』“Счастье”
貧農フムィリの幸福をめぐる冒険。
ロシア民話をコルホーズ(集団農場)舞台に翻案。司祭と農婦が銭を巡り乱闘、兵士がみな福笑い面等々の諷刺に、のちスターリン激怒も納得のメドヴェトキン1934年作。
収穫をかっさらう人々が穀物庫の足と化すバーバヤーガ展開、辛辣すぎて笑う。
"Счастье" https://twitter.com/pherim/status/1531246371113963520
□他同企画上映作過去ツイ
アレクサンドル・ソクーロフ『精神の声』 https://twitter.com/pherim/status/1022671291848040448
F・W・ムルナウ『吸血鬼ノスフェラトゥ』1922 https://twitter.com/pherim/status/1176377586101800962
ロバート・フラハティ『モアナ 南海の歓喜 サウンド版』https://twitter.com/pherim/status/1052353283363205120
ジャン・ヴィゴ『アタラント号』 https://twitter.com/pherim/status/1077178900348719107
アントニオ・レイス マルガリーダ・コルデイロ『トラス・オス・モンテス』 https://twitter.com/pherim/status/763361370855190528
■《新文芸坐シネマテークVol.36クロード・シャブロル特集》
http://indietokyo.com/?page_id=14
『野獣死すべし』 1969
息子を轢き殺した資産家への復讐を胸に、
その義妹と恋仲になり屋敷へ入り浸る男。
クロード・シャブロル1969年作。火サスの澱みがないのは、時間軸一直線で回想とか入れずに凝らす工夫が乙だからかと、上映後大寺眞輔講義を聴き納得の夜。パタンと斃れる演出は稚拙さでなく美学なんだとか。
"Que la bête meure" "The Beast Must Die" https://twitter.com/pherim/status/1530354618404061184
余談。ジョニー・デップ勝訴。元妻に損害賠償計1500万$の支払い命令。
きのうもジョニデ製作出演新作のツイート原因でリムられたけど、ほんとキャンセル潮流に乗り分断深めゆく人々のその場感情至上主義、どうかなと。容疑の報道みただけで叩きだす方が幼稚で野蛮なんですけどね。
あと御茶ノ水アテネフランセにて『精神の声』明日、『トラス・オス・モンテス』今日上映。
渋谷イメフォ&EUROで各々昨年も上映機会あったけど、配給会社やアンフラ伊文ゲーテ台北代表処など各国機関の協力でこの水準が成り立つ都市って世界でも実は稀。あまり注目されませんけど。
いくつか未見の作品のなかでも、カール・テオドア・ドライヤー『吸血鬼』とネルソン・ペレイラ・ドス・サントス『監獄の記憶』はこの機会に観る気満々だったのだけど、体力/時間の問題等で断念。まぁ2作品は観れたのでぎりぎり良しと。
おしまい。
#ふぃるめも記事一覧: https://goo.gl/NXz9zh