pherim㌠

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pherim㌠さんの日記

(Web全体に公開)

2022年
06月09日
23:56

ふぃるめも225 さよならブルース・マウンテン

 
 

 今回は、6月4日~10日の日本上映開始作から11作品を扱います。(含再掲1作)

 タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート[https://twitter.com/pherim]まとめの第225弾です。強烈オススメは緑超絶オススメは青で太字強調しています。(2020年春よりドラマ含むネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしばタイトル黒太字表記です。)


 
■6月4日公開作

『ニューオーダー』

高級住宅街での結婚式当日、貧民区の暴動が軍出動を呼び“世界”の全てを呑みこむディストピア・スリラー。
汚職誘拐虐殺etc.『或る終焉』他の重厚心理描写が圧巻だったミシェル・フランコ新作の、ショック演出への舵切り自体がはらむ今日性。もう対岸の火事ではないこのリアル。

"Nuevo Orden" "New Order" https://twitter.com/pherim/status/1531841606948913152

  『或る終焉』 https://twitter.com/pherim/status/734869221834772480
  『母という名の女』 https://twitter.com/pherim/status/1006164133216043008





『歩いて見た世界 ブルース・チャトウィンの足跡』
凄絶孤高のヴェルナー・ヘルツォーク監督作。
あの天才夭折作家の最期へ寄り添う盟友だったこの巨匠が掘り下げる、主著パタゴニア&ソングラインへの澄み切った読みの深度に励まされる。
人生の確度は自力で決める。
岩波ホール最終上映作、震撼。

"Nomad: In The Footsteps Of Bruce Chatwin" https://twitter.com/pherim/status/1532708051895349248

  チャトウィン『ソングライン』ほかめぐる拙note: https://note.com/pherim/n/nad1d4a86d07d
  ソングライン,ドリーミング連ツイ: https://twitter.com/pherim/status/699748709391736832




■6月10日公開作

『わたし達はおとな』

20代半ばへ向かう男女の機微。
妊娠を軸に描かれる、未来への期待と不安入り混じり揺れる心のリアル。登場する男女みな表裏ありすぎて、戯曲発の加藤拓也監督は20代だし、もしこれがスマホSNS社会ゆえの傾向なら地獄だなとか。
藤原季節&森田想ら安定、木竜麻生めっぽう良い。

"" https://twitter.com/pherim/status/1534869984719302656




『ストーリー・オブ・フィルム 111の映画旅行』
大量の映画を素材に独自の語りを編み上げるゴダール他の試みを、堂々更新する意欲作。
例えば序盤のアーミル・カーンからブックスマート、デッドプール、ウガンダコメディ、デュモン、アピチャッポンという連なり。この独創的連繋の目離し難き中毒性。

"The Story of Film: A New Generation" https://twitter.com/pherim/status/1534155813912453120

  『ファイナル・カット』 https://twitter.com/pherim/status/1275014930618445824
  ゴダール『イメージの本』『映画史』 https://twitter.com/pherim/status/1121260363889037312





『ウェイ・ダウン』
W杯決勝に沸くマドリッド地下で、難攻不落の金庫へ挑む男達。
現代の巧緻を阻む19世紀の“工学の奇跡”へギーク青年(Freddie Highmore)が挑み、ElizabethⅠ世と繋がる私掠海賊ドレークの財宝狙う盗賊親分がElizabethⅡ世と繋がる構図、スペイン代表2022W杯決勝進出など見どころが逐一ツボる。

"Way Down" "The Vault" https://twitter.com/pherim/status/1534005854575689728




『さよなら、ベルリン またはファビアンの選択について』
ナチ台頭も目覚ましく混沌と狂躁に充ちた1931年ベルリンを、作家志望の青年が駆け抜ける。
主演トム・シリングの慄える瞳よき。醸される頽廃ムードと破滅への予感が、『インフル病みのペトロフ家』の現代ロシアを強烈に想起させる今日性。

"Fabian oder Der Gang vor die Hunde" "Fabian - Going to the Dogs" https://twitter.com/pherim/status/1533617876225372160

  『インフル病みのペトロフ家』 https://twitter.com/pherim/status/1511907278848364545
  拙稿「ルーシの呼び声 (2)」 http://www.kirishin.com/2022/05/20/54383/


『さよなら、ベルリン またはファビアンの選択について』は、ナチ騒擾下の芸術家志望青年をトム・シリングが熱く演じる点でリヒター描く『ある画家の数奇な運命』にも通底する。
ファビアンの恋人に扮するサスキア・ローゼンダールは、後者でもリヒター母役で共演、麗しゆ。

  『ある画家の数奇な運命』 https://twitter.com/pherim/status/1311497317195759616




『クラウディ・マウンテン』“峰爆”
山岳アクションin中国西南部。
ボルケーノ物に四川大地震を想起させる災害パニック加味、トンネル崩落、洞窟探検、科学特捜SF、フリークライミングをかけ合わせ、マネーパワーで押し切る現代中国的豪快さに笑う。
父子の継承テーマで共産党への目配りも忘れない。

"峰爆" "Cloudy Mountain" https://twitter.com/pherim/status/1534538126034862080

『クラウディ・マウンテン』、カーアクションと恋愛と地底探検の同時並行くらい朝飯前なてんこ盛りの見どころが。
ここみて! 次はそこ! そしてこっち!
ってめくるめくわんこそば状態で続き、簡潔な要素まとめを試みたポスターが↙になるのもやむなし感。簡潔とは。
原題“峰爆”も簡潔。みねばく!




『FLEE フリー』
アフガン難民のゲイ少年が闇の旅路へ光を求める。
希望を続々失い影深まる少年の背にAce of BaseやDaft Punkが重なる乖離感覚。
監督は祖先がポグロムを逃れた露系ユダヤ移民で、少年時に出会った主人公一家が長く苦しんだのもロシアという、多重的に今日性+表現性極まる秀作。

"Flugt" "FLEE" https://twitter.com/pherim/status/1532922321136394242

  『ミッドナイト・トラベラー』連ツイ https://twitter.com/pherim/status/1429633508310274048
  『戦場でワルツを』『ザ・タワー』 https://twitter.com/pherim/status/1365219524161675266





『ALIVEHOON アライブフーン』
完全にカーレースファンのための作品。
実車のサーキット上でのせめぎ合いで魅せる。
ただ絞りすぎた狙いが突如ヲタク心情を打ち明ける主人公の説明台詞、有名らしい実物レーサー&解説者らの大根芝居、ステロタイプのヒロインなどに結晶され、乗り切れなさが加速する。

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『ぼくの歌が聴こえたら』
人前で歌えない天才青年(EXOチャンヨル)と、
運のない敏腕プロデューサーの韓国珍道中。
ステージでは箱に入って歌う姿の醸す寓話性と、ロードムービー展開の清々しさとの対照際立つ。
麗水のジャズクラブでの盲目歌手とのデュオと、釜山郊外のロマ音楽祭での熱唱が白眉。

"더 박스" "The Box" https://twitter.com/pherim/status/1534744218241220608




『義足のボクサー GENSAN PUNCH』 (5/27沖縄先行公開、6/3東京、6/10~全国)
義足ゆえ日本ではプロ免許を望めない沖縄のボクサーが、フィリピンでプロを志す日々描く、汗と熱気みなぎる男の裸を撮ったら世界一のブリランテ・メンドーサ監督作。
主演尚玄、自ら起案し監督を説得した気骨宿す背中で魅せる、軽快フットワークは汎アジア的。

"Gensan Punch" https://twitter.com/pherim/status/1528592209338986496

  拙稿「ジェンサンの風 『義足のボクサー GENSAN PUNCH主演・尚玄インタビュー
  http://www.kirishin.com/2022/05/26/54440/



 

 余談。きのうあるインタビュー仕事を終えたのだけど、取材仕事的にはよく考えると、今年前期の山場だったかもしれない。書くのはこれからなんですけど。

 日本人なら誰でも知ってるクラスの日本人俳優へのインタビューは初めてで、それなりに緊張して臨んだけどすぐに打ち解けたあたり、お相手の器量がさすがだなと。今後はもう少し自己規制を緩めて当たってもよいかなとも。これまでストイックに攻めすぎ感は、たしかにあったので。





おしまい。
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