今回は、6月24日の日本上映開始作と《生誕90周年上映 フランソワ・トリュフォーの冒険》上映作から10作品を扱います。(含短編1作)
※6月24日公開作のうち、
『ベイビー・ブローカー』『ザ・ロストシティ』『ルッツ』については前回扱いました。↓
「ふぃるめも226 炎の気まぐれ」https://tokinoma.pne.jp/diary/4596
タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート
[https://twitter.com/pherim]まとめの第227弾です。
強烈オススメは緑、
超絶オススメは青で太字強調しています。
(2020年春よりドラマ含むネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしばタイトル黒太字表記です。)
■6月24日公開作
『愛に奉仕せよ』
国父への忠誠心あふれる生真面目な炊事兵が、師団長の美しい妻からの求めを拒めず、禁断の肉欲地獄(天国)へいざ突入。
閻連科の中国発禁小説を北の国へ翻案、政治諷刺/お色気/人間ドラマと全方位的に水準高く、韓国映画の製作力に眩暈する。主演 #ヨン・ウジン& #ジアン 超絶良い。
"인민을 위해 복무하라" "SERVE THE PEOPLE" https://twitter.com/pherim/status/1539222071498407936
閻連科連ツイ https://twitter.com/pherim/status/1190834072962027520
閻連科 『帰れない二人』『象は静かに座っている』『三体』他(拙稿「中国、その想像力の行方と現代」)
https://twitter.com/pherim/status/1200624996613181440
『母へ捧げる僕たちのアリア』
南仏の移民団地で重篤の母を見守る4兄弟の物語。
末っ子ヌールが歌に目覚める過程を軸とする、貧困状況に置かれた兄弟個々の報われない苦渋の連続が、せつなくも魅せる。
度々かかるオペラ名曲群に加え、街描写に馴染むインドポップスやアラビックテクノが魅力的。
"Mes frères et moi" "My Brothers and I" https://twitter.com/pherim/status/1538869397598928897
『あなたの顔の前に』
不意に帰国した女性を描くホン・サンス新作の、
極度に研ぎ澄まされた構成に魂消る(文字通りたまげる)。
韓流映画に頻出する“強く祈る”女性が呟く信仰の言葉から、天国は顔の前にあるという信念がむくりと姿を現す。これを新人の自主映画級に少ない要素から編みあげる。圧巻。
"당신얼굴 앞에서" "In Front of Your Face" https://twitter.com/pherim/status/1538494657260564481
『イントロダクション』2020
青年ヨンホの焦りと戸惑い描く、
名匠ホン・サンスのモノクローム短篇集。
ベルリンへ旅立った恋人と、故郷にでんと構える勝ち気な母を両軸とする人物模様で魅せる。
ほぼ室内空間と近接映像だけで構成されたコロナ対応作とも言える、いつも以上にコンパクトな66分。
"인트로덕션" "Introduction" https://twitter.com/pherim/status/1539579998847533057
■特集上映《生誕90周年上映 フランソワ・トリュフォーの冒険》 2022/6/24-
https://movies.kadokawa.co.jp/truffaut90/
『大人は判ってくれない』1959
盗みを働き感化院へ送られる車の鉄格子越しに、両親との思い出の映画館を見送る少年の虚ろな瞳。
場面場面で少年が抱くだろう以上の感情を、かつて子供であった観客に惹き起こさせる演出は圧倒的。これを27歳で撮るフランソワ・トリュフォーの底知れなさが空恐ろしい。
"Les Quatre Cents Coups" https://twitter.com/pherim/status/1538131556216508416
「アントワーヌとコレット」1962
恋に一途な少年の苦渋。『大人は判ってくれない』のアントワーヌ・ドワネルの冒険シリーズ2作目で、ワイダ・石原慎太郎ら参加のオムニバス『二十歳の恋』の1篇。
3つ歳とった主演ジャン=ピエール・レオの成長ぶり麗しゆ。ちな半世紀後は↓。
"Antoine et Colette <L'Amour à vingt ans>" https://twitter.com/pherim/status/1539078598170386432
『ルイ14世の死』 https://twitter.com/pherim/status/1003254845560664064
『ライオンは今夜死ぬ』 https://twitter.com/pherim/status/952435711780651009
『夜霧の恋人たち』1968
軍へ志願するも不適格とされ、
パリへ出戻った少年のドタバタ日乗。
紹介されたホテルの受付も即クビになり、探偵業では調査対象の社長夫人と恋に落ちちゃうケセラセラ人生がカラっと痛快。
アントワーヌの冒険3作目。
相手の薬指へ栓抜きをハメて求婚とか滅茶ときめく。
"Baisers Volés" "Stolen Kisses"
『私のように美しい娘』
生真面目な犯罪学者が、檻の中の女囚に絡め獲られる実話ベースのトリュフォー1972年作。
男を続々手玉にとる魔性の女の半生に、時代に先駆け性差別を織り込む明るい諷刺性。
羊たちの沈黙他のレクター博士は、性と世代を反転させたファムファタル物だったと気づかされる夜。
"Une Belle Fille Comme Moi" https://twitter.com/pherim/status/1539939723728134144
『アデルの恋の物語』1975
片想いの相手を求め国を超える女の歩む、
愛こそ全ての破滅道。
19歳の主演イザベル・アジャーニが美しすぎるため、どんな嘘も厭わないストーカー描写が続くのにグロくならないトリュフォー1975年作。
アデルはかのV.ユゴーの娘で実話ベース。
出身地ガーンジー島ロケも見処。
"L'Histoire d'Adèle H."
『逃げ去る恋』1979
ジャン=ピエール・レオ少年35歳になりにけり。
《アントワーヌ・ドワネルの冒険》完結編。和製TVアニメがやりがちな総集編の回想連打を、よりエレガントにやってのけるトリュフォー魔術。
かつ後半では歴代の恋人が共闘始め、つまりは40年先行するMCU展開。まさにエンドゲーム。
"L'Amour en Fuite"
余談。《生誕90周年上映 フランソワ・トリュフォーの冒険》上映は6/24~巡回。
《アントワーヌ・ドワネルの冒険》第4作『家庭』だけ観れてないの気になるしお寿司。(日本要素あるらし
)
観たらふぃるめも別回と併せこちらへも追記予定。
おしまい。
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