pherim㌠

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pherim㌠さんの日記

(Web全体に公開)

2022年
07月01日
23:59

ふぃるめも229 気まぐれなわたしのマルケータ

 
 

 今回は、6月25日~7月2日の日本上映開始作から10作品を扱います。

 タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート[https://twitter.com/pherim]まとめの第229弾です。強烈オススメは緑超絶オススメは青で太字強調しています。(2020年春よりドラマ含むネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしばタイトル黒太字表記です。)


 
■6月25日公開作

『ヘイ!ティーチャーズ!』

モスクワから地方の学校へ赴任した若者二人を追うドキュメンタリー。
パンクな髪をグレイに染め直すエカテリーナと、自主性を重んじるワシリイの、ともに学校側の旧弊と生徒の無反応との狭間で苦しむ姿が、現代ロシアの世代格差と地方格差とを如実に象徴する構成の妙。

"Катя и Вася идут в школу" "Hey! Teachers!" https://twitter.com/pherim/status/1512416759080316928

  拙稿「ルーシの呼び声 (2)」 http://www.kirishin.com/2022/05/20/54383/




『アトランティス』2019
マリウポリの製鉄所に映しだされる、
ジガ・ヴェルトフ『ドンバス交響曲』(1930)。
希望の象徴であった大工場と、親友が溶鉱炉へ身を投じた終戦後2025年の老朽化したそれとの鋭き対照。
深く傷負う元兵士と、遺体回収を続ける女性とを包み込む雨の冷たさが心に沁み入る。

"Атлантида" "Atlantis" https://twitter.com/pherim/status/1539440639892664321

  拙稿「ルーシの呼び声 (3)」 http://www.kirishin.com/2022/07/06/55065/




『リフレクション』2021
日常と戦場が隣り合うドンバスで、外科医の男がロシア陣営に囚われる。
捕虜の拷問死を看取らされる地獄の底で、元妻再婚相手を殺める手つきが、古レコードを扱う日常のそれに重なる。娘の放つカラフルな銃痕と、鳩が残す天使の聖痕。
reflection=鏡像映す世界のリアル。

"Відблиск" "Reflection" https://twitter.com/pherim/status/1537439834679427073

  拙稿「ルーシの呼び声 (3)」 http://www.kirishin.com/2022/07/06/55065/




■7月1日公開作

『モガディシュ 脱出までの14日間』
敵対する韓国と北朝鮮の大使館職員&家族が、
反乱下のソマリア首都から協力し脱出図る。
ブラックホークダウンやホテルルワンダ級の混沌描写で、孤立下の緊迫再現はアルゴ超え。
キム・ユンソク&チョ・インソン の熱演も加わり、韓国現代史物の傑作系譜を堂々更新。

"모가디슈" "Escape from Mogadishu" https://twitter.com/pherim/status/1541029970817888256

  『1987、ある闘いの真実』キム・ユンソク主演韓国現代史物傑作
  https://twitter.com/pherim/status/1037866854830620672
  『モーリタニアン 黒塗りの記録』拙稿ブラックホーク・ダウンとの対照など。
  https://twitter.com/pherim/status/1454606512576352259





『マーベラス』“The Protégé”
暗殺者の女が、仇敵の雇った超級護衛と敵対しつつ惹かれ合う。
サミュエル.L.ジャクソンの銃口突きつけるパルプ・フィクション語り安定、マイケル・キートンがマギー.Qといつになく体を張った格闘で魅せる。
旧チャウシェスク邸など、東欧圏での撮影も見どころ。

"The Protégé" https://twitter.com/pherim/status/1537989361664688130

『マーベラス』、コロナ禍突入後の撮影場所はブルガリアやルーマニアで、夜の街など古い社会主義建築をインドシナのコロニアル様式風に魅せる舞台美術がそこそこ楽しい。
中盤の舞台はベトナムのダナン。森の尼僧院など明るい地獄の黙示録イメージや、ダナンには絶対ない建物の映り込みが微笑ましゆ。

あと『マーベラス』“The Protégé”では、ヨハン・ヨハンソンとハンス・ジマーの間をゆくような音楽がかなり良い。
Netflixの終末SFドラマ『イントゥ・ザ・ナイト』サントラ等も手がけるphotekによる劇伴。リーアム・ニーソン主演新作“Memory”など今後も待機作がつづく様子で要注目。




『リコリス・ピザ』
みなぎる高校生♂と若手教師♀の笑えてせつなき恋の路。
ポール・トーマス・アンダーソン充実のお洒落スクリューボールコメディ新作。LAハリウッドを身近に生きる十代でも“シルバーレイク”とは逆に、恋愛に起業にひた走る少年(クーパー・ホフマン/シーモア息子!)の活力まぶしい。

"Licorice Pizza" https://twitter.com/pherim/status/1541251843208015873

『リコリス・ピザ』公式より、ありがたくもツッコミいただき再投稿↑。 映画のようには展開しなかった己の淡い記憶へ重ねて観ていたゆえの誤りかと。(遠い目)
舞台は1970年代のハリウッド近郊。ピンボール台の並ぶ光景かもす良レトロ感覚。せっかくですので以下スレッド化。

『リコリス・ピザ』でひとつ際立つのが脇役陣。
ショーン・ペン&トム・ウェイツの絶妙に辛子の利いた掛け合いも、ブラッドリー・クーパーのダメダメなモテ男っぷりも最高に笑えつつやっぱりカッコいい。
主演アラナ・ハイム&クーパー・ホフマンは初出演てかほぼ俳優初仕事っぽい。なにそのロケットスタート。

少年は子役俳優としても活躍中なのだけど、LAで育ったディカプリオの周辺とか、好況LAで水を得た魚のごとくバイタリティ上限値留めで毎日生きるこのタイプの十代がわらわらいたんだろうなと。

  『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』タランティーノ&ディカプリオ来日会見スレッド↓
  https://twitter.com/pherim/status/1167085889819832320





『哭悲/THE SADNESS』
ゾンビだけど人格残し凶暴化、
私怨燃やしどこまでも追ってくる。
血みどろグロ演出が全編覆うBloody Muddy極北作。
内臓のぬめりで手が滑っていかんいかん。
高水準コロナ抑制を実現した台湾政府も匙なげるウイルス発生という、強力株発生に怯える大衆心理突く2021年作。

"哭悲/The Sadness" https://twitter.com/pherim/status/1540666448820830209
 



『わたしは最悪。』
才色兼備の女ユリヤは、多才さ聡明さに引きずられ次々に関心事を変え、己の道も男も定まらない。
お仕着せのモラルを突き破る感情描写の密度が素晴らしい。妊娠や病気が物語を転がす“あるある感”が活きるのは、その内で初めて自分を生きだす姿が瑞々しくもリアルだからだろう。

"Verdens verste menneske" "The Worst Person in the World" https://twitter.com/pherim/status/1542346409625604097

ヨアキム・トリアー監督過去作↓

  『テルマ』 https://twitter.com/pherim/status/1078391150212313088

『わたしは最悪。』のヨアキム・トリアー監督オスロ3部作すべてに出演するアンデルシュ・ダニエルセン・リー
(『わたしは最悪。』では病患う恋人役)の過去出演作↓

  『サマーフィーリング』 https://twitter.com/pherim/status/1146249717363331072
  『ウトヤ島、7月22日』 https://twitter.com/pherim/status/1101360399956402176

 
 
 
 
■7月2日公開作

『マルケータ・ラザロヴァー』

十字架を掲げる王権と、異教の盗賊騎士一族の対立に巻き込まれ燃えあがる、小領主の娘マルケータの祈りと情愛。
なんだこの神的構図の横溢は。
耳朶えぐる音響と精神貫く言葉の奔流は。
中世ボヘミア描く1967年作。
プラハの春前夜のチェコが生んだ奇跡に眩暈する。

"Marketa Lazarová" https://twitter.com/pherim/status/1541659414037336067




■VOD配信(国内過去公開作)

『気まぐれな唇』2002
ホン・サンス初期作。
唖然とするほど冴えない男が、なぜか俳優としてそれなりに暮らせており、恋人や旦那がいる2人の女と関係する不思議時空の豊かさすでにホン・サンス。
ヒロイン役チュ・サンミへの近作インタビュー準備で観たら不意の即物的SEXシーンで全思考停止に陥る。

"생활의 발견" "TURNING GATE"

  チュ・サンミ初監督作『ポーランドへ行った子どもたち』
  https://twitter.com/pherim/status/1532560873973501952
  拙稿「ある脱北少女と韓流女優の祈り」チュ・サンミ インタビュー
   http://www.kirishin.com/2022/06/13/54644/

  
  
 


 余談。

 #2022年6月にみた映画ベスト10
 https://twitter.com/pherim/status/1542794248084660225

 誓いの休暇
 大人は判ってくれない
 あなたの顔の前に
 マルケータ・ラザロヴァー
 Blue Island 憂鬱之島

 リコリス・ピザ
 猟人日記 “狼”
 モガディシュ 脱出までの14日間
 沖縄の民
 ナワリヌイ Навальный

 番外: ルッツ, 時代革命 (再鑑賞ゆえ)


 7月もよろしくお願いいたします。m(_ _)m





おしまい。
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