今回は、7月15~20日の日本上映開始作を中心に、10作品を扱います。(含TV番組2編)
タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート
[https://twitter.com/pherim]まとめの第231弾です。
強烈オススメは緑、
超絶オススメは青で太字強調しています。
(2020年春よりドラマ含むネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしばタイトル黒太字表記です。)
■7月15日公開作
『戦争と女の顔』
看護師イーヤは、戦争のPTSD発作で日常的に突如硬直する。史上最悪の包囲戦を、共に戦ったマーシャは乱舞する。
鮮烈な緑と、のっぺりした赤の対照鋭い映像が、死の気配溢れる1945年のレニングラードで新たな命を渇望する女の輪郭を際立たせる。燻る双眸が、残酷なまでに美しい。
"Дылда" "Dylda" "Beanpole" https://twitter.com/pherim/status/1547563782066487296
拙稿「ルーシの呼び声〈4〉」 URL後日追記
『キャメラを止めるな!』
適当リメイクかと観始めたら、仏独立系映画の女神ベレニス・ベジョ準主演で、襟を正す心地。
基本構造同じながら執拗な資本主義dis等きちんとフレンチコメディに。『カメラを止めるな!』から竹原芳子珍入の疑似マルチバース展開笑う。“エンドロール後”ありますよ。
"Coupez !" https://twitter.com/pherim/status/1546333521153003520
『カメラを止めるな!』https://twitter.com/pherim/status/1029281534027608064
ベレニス・ベジョ『ある過去の行方』https://twitter.com/pherim/status/1236906451559272448
ベレニス・ベジョ『甘き人生』https://twitter.com/pherim/status/884021926313607168
拙稿『甘き人生』http://www.kirishin.com/2017/07/19/7678/
『魂のまなざし』“Helene”
50代で脚光を浴びた画家ヘレン・シャルフベック。
フィンランド片田舎で挑まれる女の自立へ向けた格闘に、遠く白軍赤軍の衝突する1918年内戦の木霊が重なる。
世間の価値観にまみれる家族やツレナイ想い人との軋轢が、唯一無二の筆致へと昇華しゆく描写の確度に見入る。
"Helene" https://twitter.com/pherim/status/1547058152100601857
『燃ゆる女の肖像』 https://twitter.com/pherim/status/1332916626879094784
『ボイリング・ポイント/沸騰』
X'mas前のロンドン、人気料理店の厨房でトラブルの連続に忙殺されるスタッフたち。
90分ワンショットの緊迫感最高。公私に絶不調なシェフの奮闘、爆発寸前の副料理長、2世の屈託抱えるマネージャー、邪な思惑孕む評論家等々。傑作レストラン映画の系譜を堂々更新。
"Boiling Point" https://twitter.com/pherim/status/1547191489905577984
『二ツ星の料理人』https://twitter.com/pherim/status/741221439601139712
『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』https://twitter.com/pherim/status/586142511267061761
『ノッティングヒルの洋菓子店』https://twitter.com/pherim/status/1332326494643785732
『バッドマン 史上最低のスーパーヒーロー』
キャップや女版ハルクと共闘してくれちゃう、
フランス版バッドマン(だと思い込んだ男の)英雄譚。
くだらなさも超絶畳みかけると飽和を超えランナーズハイになる、仏版シティハンター他のフィリップ・ラショー監脚主演作。
終盤もう笑い死にかける。
"Super-héros malgré lui" "Superwho?" https://twitter.com/pherim/status/1546033433797083136
『世界の果てまでヒャッハー!』https://twitter.com/pherim/status/798328054321815552
■7月16日公開作
『Blue Island 憂鬱之島』
150年の香港史を鏡像として、2019年の騒擾を逆照射する会心作。
かつて英国植民地政策に抗ったガチの親中老人らが、素の姿で現代香港を眼差し歩む。
『乱世備忘』で2014雨傘運動をこのうえなく軽快に活写したチャン・ジーウン放つ“憂鬱”の超重力。
"憂鬱之島" "Blue Island" https://twitter.com/pherim/status/1535481191482085376
『乱世備忘 僕らの雨傘運動』 https://twitter.com/pherim/status/1015158317386063872
『乱世備忘』スレッド↑では黄之鋒や周庭の東大講演レポも行っているけれど、『Blue Island 憂鬱之島』にはご両人登場、とくに黄之鋒はエンドロール前のとても印象的なシークエンスにも無名で登場しています。東大ではほんのひとこと直に言葉のやり取りもあったけれど、いま思えば最大限に励ましの言葉をかけるべきだったなとも。(香港国家安全維持法の「国家政権転覆罪」容疑で逮捕、無許可集会参加罪他の有罪判決により収監中)
拙稿「決断する若者たち 『Blue Island 憂鬱之島』チャン・ジーウン監督インタビュー」
http://www.kirishin.com/2022/07/14/55198/
■7月20日公開作
『あなたと過ごした日に』
凶弾に倒れた疫学者の父描くコロンビアのトップセラー自伝小説を、トルエバ兄弟が映画化。
1970年代メデジンを温かく見つめる映像に『ROMA/ローマ』の瑞々しさも想起され、麻薬カルテル台頭前夜の輝ける子供時代へ込められた郷愁濃度が半端ない。
"El olvido que seremos" "Forgotten We'll Be" https://twitter.com/pherim/status/1548996417410445312
『ROMA/ローマ』https://twitter.com/pherim/status/1079685378871717890
ちな息子の青年期演じるJuan Pablo Urregoは、同じコロンビア舞台のアピチャッポン『MEMORIA メモリア』でティルダ・スウィントンと共演。
『MEMORIA メモリア』https://twitter.com/pherim/status/1491968334459404289
『MEMORIA メモリア』後半の舞台となる村ピハオは、メデジンと同じく北アンデス山脈中のメデジンより南方にあり、この春に邦訳が出た『雌犬』の著者ピラール・キンタナ出身の町カリがさらに南にある。
ピラール・キンタナ『雌犬』https://twitter.com/pherim/status/1547137811111100416
『MONOS 猿と呼ばれし者たち』の山はアンデス山脈でなくコロンビア東方だった気がするけどうろ覚え要確認。
『MONOS 猿と呼ばれし者たち』https://twitter.com/pherim/status/1468131612445790212
■VOD配信/TV放映作(非劇場公開作)
『呪詛』“咒”
台湾民間信仰+チベット密教ギミックを、リングの呪い+ブレアウィッチPOVで撮るNetflixホラー意欲作。
台湾スプラッターの極北ゆく『哭悲』とは対極の、手撮り質感へのこだわりが諸々楽しい。後半の『地下に潜む怪人』ばり地底展開は意外性あり見応え十二分。
"咒" "Incantation"
『哭悲/THE SADNESS』https://twitter.com/pherim/status/1540666448820830209
“As Above, So Below”『地下に潜む怪人』https://twitter.com/pherim/status/1520542072419545088
『水曜どうでしょう サイコロ1』1996
大泉洋がまだ現役大学生っていう初々しさが楽しいサイコロ旅開幕回。これが長寿番組化するなんて誰も思ってない、でも力の抜けかたがもう100%水曜どうでしょうな。深夜バスで着いたら次の深夜バスに乗るというバカさと若さだけを推進力とする点、後続作にくらべミニマルな素朴さも楽しい。
"" https://twitter.com/pherim/status/1746730422430756908
『水曜どうでしょう サイコロ2』1997
鈴井貴之のキャラがまだクールな青年2枚目で、大泉洋との関係性も初々しい第2シーズン。ポリコレ炎上を誰も彼もが恐れる今日ではあり得ない、まだ全国区になるとは思ってもいない当人たちの素直な地方disの数々が生々しくかつとっても笑える。
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余談。『水曜どうでしょう』、特定のシーズンを初めて通して観たのは実をいうとバンコクに住んでからで、深夜を遊び通したあとの翌昼、友人宅でダルげに幾シーズンか観た。最初はベトナム縦断編だったはず。バンコク都心の友人宅コンドに間延びして響く、「びぇ~となぁむ ほ~ち~みぃん♪ びぇ~となぁむ ほ~ち~みぃん♫」って番組内でくり返されるベトナム人ガイドの歌が耳にこびりついている。
ネットで知り合った友人宅で、二日酔いの頭でぼうっとDVDを入れ替えながら、旧型エアコンのものすごい作動音を脇に何時間も寝転んでTVモニターを眺めていたあの無為な感じも、いま振り返ると夢幻のようである。まぁなんか、多方面に無闇な時代。
おしまい。
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