今回は、8月5日~6日の日本上映開始作と、Netflix発表作から10作品を扱います。
タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート
[https://twitter.com/pherim]まとめの第234弾です。
強烈オススメは緑、
超絶オススメは青で太字強調しています。
(2020年春よりドラマ含むネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしばタイトル黒太字表記です。)
■8月5日公開作
『L.A.コールドケース』“City of Lies”
2人の大物ラッパー射殺事件を皮切りに、想像を超え根深い警察汚職へ迫る反骨の刑事と気骨の記者。
ジョニー・デップ&フォレスト・ウィテカーが迷宮化しゆく真実を追う、実話ベースのシリアス共演に痺れ通し。夜の雫がしたたり落ちゆくクライムノワール秀作。
"City of Lies" https://twitter.com/pherim/status/1552985657932652544
ジョニー・デップ、この役選びの動機には昨今の自身を襲った諸々の影響を聴き取らざるをえず。米国公開が一旦中止された『MINAMATA―ミナマタ―』に関する拙記事では、この一連の騒動にも少し触れました。↓
拙記事「水俣に命ながれる 『MINAMATA―ミナマタ―』」http://www.kirishin.com/2021/09/23/50829/
名誉毀損裁判連ツイ:https://twitter.com/pherim/status/1516566761633894404
『コンビニエンス・ストーリー』
書きあぐねる脚本家が、迷い込んだ荒野のコンビニで蟻地獄のごとき魔性の女に魅入られて。
成田凌x前田敦子演じる関係性は“砂の女”そのもので、コブ付き六角精児含めた三角関係の読めなさと、キッチュ志向か単に雑かも不明瞭なとっちらかり演出が妙にあとを引く。
"" https://twitter.com/pherim/status/1553234652902850560
成田凌x前田敦子『くれなずめ』
https://twitter.com/pherim/status/1385789406183759873
前田敦子『旅のおわり世界のはじまり』考察連ツイ
https://twitter.com/pherim/status/1149692641694457857
『プアン/友だちと呼ばせて』
余命僅かな青年が、親友の助けを借りて元恋人達とのモヤモヤ解消の旅へ出る。
いかにもウォン・カーウァイ製作のおしゃれロードムービー感&人生黄金期の回想がNY舞台となるバブリー感。
プーンピリヤ監督前作“Bad Genius”主演のチュティモンも準メイン登板するよ!
"วันสุดท้าย..ก่อนบายเธอ" "One For The Road" https://twitter.com/pherim/status/1553354651734806529
『バッド・ジーニアス』https://twitter.com/pherim/status/1044201278140633089
チュティモン出演作
『ハッピー・オールド・イヤー』https://twitter.com/pherim/status/1333600363119722499
『ダイ・トゥモロー』https://twitter.com/pherim/status/1145897333097291776
ちな『プアン/友だちと呼ばせて』の“プアン”はタイ語で友達の意味だけど、原題“วันสุดท้าย..ก่อนบายเธอ”は「さよならの前に」(意訳)。
装いはファッショナブルでも芯に実ある死生観を置くあたり、『ダイ・トゥモロー』にも近しくタイ・エンタメの新機軸になったらいいな。なって。
『劇場版 ねこ物件』
ねこがいるシェアハウスの管理人と住人たち。
長井短の存在感。ねむたげな眼でひたすら異彩を放つ佇まいが良い。
ドラマ→映画の展開や綾部真弥&田口桂の監督構成が『劇場版 おいしい給食』シリーズと同じながら、なぜかテンポが悪くなっているのは残念。
"" https://twitter.com/pherim/status/1557209955828396038
『劇場版 おいしい給食 卒業』https://twitter.com/pherim/status/1524219497724678144
長井短だよ長井短。モデル等すでに一部界隈でカリスマ化している彼女だけど、映画俳優としての本格ブレイクも近い予感。てかふつうに考えて大物監督のオファーもう引きも切らない状態なのは想像に難くないなり。長いのか短いのか。
長井短『生きててよかった』https://twitter.com/pherim/status/1523134981224407041
『ファイナル アカウント 第三帝国最後の証言』
ホロコーストの加害者側へ特化する意欲作。
エリート集団だったナチス親衛隊在籍歴を、
晩年迎えた男達がなお誇りそして悔やむ。
収容所が周辺へ雇用を生んだ事情を語る翁や、虐殺を知りながら否定してきた心理障壁が崩れ去る老婆の表情に震撼する。
"Final Account" https://twitter.com/pherim/status/1551904889030135808
拙稿「カルト、表象、不可能性。」(仮題) 近日URL追記
■8月6日公開作
『掘る女 縄文人の落とし物』
遺跡発掘に魅入られた女たち。引退間近のベテランから、就活学生まで。
掘りだした土偶への愛着も露わなお婆ちゃん作業員達かわゆす。土木開発需要とせめぎ合う日本の“考古学行政”模様を描く点は新鮮。
ナレが銀河鉄道999メーテルの池田昌子な時空旅行感も素敵。
"" https://twitter.com/pherim/status/1555750023601991680
『裸足で鳴らしてみせろ』
諏訪珠理の佇まいには、俳優として今後の活躍を期待せざるをえない煌めきがあるし、佐々木詩音の演技も楽しめた。
が、トータルではまったく受けつけず。シーズンドラマ総集編のようなブツ切り編集は白けるし、思い入れ過剰の演出力不足が目立ちすぎてつらい。(邦画では不思議と年に一、二度必ず出逢うやつ)
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■Netflix発表作
『グレイマン』
ライアン・ゴズリング、存在が飛び切りすぎて孤独をかこつ役をさせたら唯一無二。SWATがMAX警戒する飛行場にトゥクトゥクで乗りつけ澄まし顔とかもう最高。
レフン“ドライヴ”&チャゼル“ファースト・マン”の系譜をルッソ兄弟で更新してくるこの流れ、次誰が挑むのかも楽しみ楽しみ。
"The Gray Man" https://twitter.com/pherim/status/1554447844031238144
『ファースト・マン』https://twitter.com/pherim/status/1098055208276393984
『グレイマン』冒頭バンコクでの、天井2枚ブチ抜きアサルト場面。
ライアン・ゴズリング演じるエージェントが、ピンクの拳銃型水鉄砲を渡され飄々と現場へ向かうの、あれソンクラン=タイ正月のもじりでルッソ兄弟絶対バンコクで遊んだことあるなっていう。(続
リアル水鉄砲ギャングおやじhttps://twitter.com/pherim/status/456361372742217728
追記予定メモ:
・城壁跡トラム工房。敵ボス=クリエヴァ=キャプテンアメリカな点も誰から何を守ってるのか趣深い。
・監&主演に加え脚本Markus McFeelyもWinter Soldier&Endgameと同じで、こう続くのかと驚く。
『カールと共に』“Je Suis Karl”
爆破テロで家族を失った主人公が、メディアからの退避を助けてくれた男に導かれ、ある若者集団へ居場所を見出す。
テロ組織の正体を隠したままカリスマで孤独な心を魅了する手口はカルトそのもの。移民排斥を叫ぶ一体感こそ傷癒やす構図の救いの無さに戦慄する。
"Je Suis Karl" https://twitter.com/pherim/status/1555040523597258752
https://www.netflix.com/title/81441697
修道院を逐われ凶行へ至るデュモン“Hadewijch”にも重なる軌跡。
ブルーノ・デュモン『ハデウェイヒ』https://twitter.com/pherim/status/761714789626224640
(終盤、“Je Suis Karl”の掛け声は際限なくくり返されるが、「カールと共に」の語は一度しか登場しない。にも関わらず邦題が「わたしはカール」とならなかったのはもしかして、メインテーマがカルトだったからなのか。カールトともに。茶々でした。[白目])
『ミュンヘン:戦火燃ゆる前に』
ヒトラーとチェンバレン首相の秘書官になった親友同士が、ミュンヘン会談下に再会し各々第二次大戦の勃発回避へ挑む。
“俺たちは生きる時代を選べないが、どう生きるかは選べる”
ジョージ・マッケイ他、とりわけナチス側演じるドイツ名優陣の魂籠る競演に痺れ通し。
"Munich: The Edge of War" https://twitter.com/pherim/status/1554802372236681218
https://www.netflix.com/title/81144852
Jannis Niewöhner, Sandra Hüller, August Diehlの3者めぐり追記予定。
(マッケイ&ジェレミー・アイアンズはたぶん省略)
余談。『カールと共に』と『ミュンヘン:戦火燃ゆる前に』は、同じクリスティアン・シュヴォホー監督作にして同じ2021年公開(Netflix配信、ミュンヘン~世界配信は2022年1月)だけれど、製作/構成が対照的。
というあたり含め、『ファイナル アカウント 第三帝国最後の証言』とも併せ長文記事執筆中、近日掲載予定です。
おしまい。
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