pherim㌠

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pherim㌠さんの日記

(Web全体に公開)

2023年
02月07日
03:20

ふぃるめも254 バイオレント・ピンク・フォール

 
 

 今回は、1月27日~2月3日の日本上映開始作を中心に、10作品を扱います。

 タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート[https://twitter.com/pherim]まとめの第254弾です。強烈オススメは緑超絶オススメは青で太字強調しています。(2020年春よりドラマ含むネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしばタイトル黒太字表記です。)


 
■1月27日公開作

『ピンク・クラウド』

謎のピンク雲が現れ、社会は引篭り時代へ突入する。
適応する子と壊れゆく母。2019年撮影の事実こそ信じ難く予言的で、ロックダウンが恒常化する光景をミニマルに薄薔薇色へ染めあげる。
新人監督Iuli Gerbaseの醸す冷たい孤独は“Starfish”も想起させ大好物。

"A Nuvem Rosa" https://twitter.com/pherim/status/1617134545295511554

 『スターフィッシュ』“Starfish”https://twitter.com/pherim/status/1489219678991884295


 

■2月3日公開作

『すべてうまくいきますように』

安楽死を望む父の頑固さと、残される家族の逡巡。
変貌の毎度激しいフランソワ・オゾン、新作では『グレース・オブ・ゴッド』のように直近の社会的テーマを質実に撮る。変容する死の受容。
ソフィー・マルソーの、個性的な面々の結節点となる次女役は見応え充分。

"Tout s'est bien passé" "Everything Went Fine" https://twitter.com/pherim/status/1621735620602384384

 『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』https://twitter.com/pherim/status/1283016948138164225
  拙稿「沈黙を破ること、その代償と得がたき果実」http://www.kirishin.com/2020/07/15/44134/


名匠フランソワ・オゾン、安楽死という重く湿りがちなテーマを淀みなく語り通す巧さはさすが。
安楽死を巡る法整備が進んだ社会で、次に課題となる心的な受容過程の一端たりうる映画という媒体。その強さを自覚のうえ矛先を選びとる仕草にも衰えない地力が感覚され。

  “Summer of 85” https://twitter.com/pherim/status/1424930106271690755
 『2重螺旋の恋人』https://twitter.com/pherim/status/1023395969147133952
 『婚約者の友人』https://twitter.com/pherim/status/921211563066908672





『FALL/フォール』
鉄塔頂点625mでの孤立。
錆びた梯子は落ち、砂漠の中空で携帯電波は届かない。
ドチャクソ面白い上、最大級のトラウマ体験。他のどんな高所/グロ恐怖表現でも起きたことのない、掌や足裏に嫌な汗が吹きだし続ける生理反応の凄絶。
“Starfish”のVirginia Gardner快演も嬉しい。

"Fall" https://twitter.com/pherim/status/1619534037282086912 

 『スターフィッシュ』“Starfish”https://twitter.com/pherim/status/1489219678991884295
 
“こんな細い625mタワーあり得る?”

あるのです。
Sacramento Joint Venture Tower↙(1985/624.5m)。

ちな1965年造の609m塔は、2008年倒壊済み。
つまり近々もっと凄い大惨事の可能性も、とか。
比較図↘含め出典: https://twitter.com/pherim/status/1620646311535206401




『スクロール』
影の薄い友人の自殺を軸に旋回する4人の物語。
松岡茉優と古川琴音がひたすら良い。対して北村匠海と中川大志は、戯画的すぎる陰キャ男 チャラ男の人物造形を持ち前の演技力で着地させた感。
説明過剰&冗長なエモ表現で前半もっさり、からの不思議に研ぎ澄まされゆく流れは新鮮。

"" https://twitter.com/pherim/status/1620034731550322689 


 
 
『バイオレント・ナイト』
サンタクロース翁、煙突から入った豪邸で武装集団と鉢合わせ、怒りの聖夜大活劇へ。
非戦闘型の特殊能力を活かす工夫が笑える。 Stranger Thingsのパパ役デヴィッド・ハーバーがサンタを好演、大好きなラテン系俳優ジョン・レグイザモ扮する敵ボスとの掛け合いも楽しい。

"Violent Night" https://twitter.com/pherim/status/1606635938331103241

「お前がサンタなら俺は極悪スクルージってとこだ」

敵ボス役ジョン・レグイザモ、贔屓役者の出突っ張り演技が素朴に嬉しい。
ヒスパニック系名脇役の彼、初めて認識したのは多文化主義傾向が鮮明化した後期ER緊急救命室でした。(続

 ER緊急救命室スレッド:https://twitter.com/pherim/status/1191538609909710848

※レグイザモのヒスパニック性などめぐり追記予定。




■日本公開中作品

『THE FIRST SLAM DUNK』

弩級の衝撃。
アニメ表現にこの可能性がまだあったんだという。
まず音が全編ヤバい。そしてアリウープ、ダブルクラッチ、ノールック。全動作が本物のテンポと視線の流れで襲い来る。
膝悪くしてバスケを続けられずNBA中継にドハマりした中学時代が蘇り、後半はずっと泣いてた。

"THE FIRST SLAM DUNK" https://twitter.com/pherim/status/1616690196485115904

 スラムダンクめぐるトレパク云々めぐる連ツイ: https://twitter.com/pherim/status/1521730357464551424

に絡め、NBAドリームチーム1時代の記憶を軸にキャラ造形など追記するかもー。




『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』
ダイビング眼福映画すぎて、こういう充実作をVR体験できたら至福だな、など想う。
物語はポリコレに配慮した肌の青い白人一家流浪の旅の域を出ず、でも水中で鯨と海竜と巨大飛魚がもつれるこの光景は一日中でも観ていたい。まぁ水族館との相性は悪いよね。

"Avatar2/Avatar: The Way of Water" https://twitter.com/pherim/status/1611329580840931329




■国内過去公開作(VOD配信作/含映画祭上映作)

『オールド』“Old”
2021
南の島で玉手箱ビーチへ誘い込まれ、十年一日の早回し人生を強いられた家族たち。
エイジズムやルッキズムがもつ業の深さを、ツーリズムのグロテスクさで完パケして魅せるM・ナイト・シャマラン流石。Mr. Glassでセルフ中締めした後の心機一転感スゴい。本人出すぎ笑う。

"Old" https://twitter.com/pherim/status/1617514975085604867

 『ミスター・ガラス』https://twitter.com/pherim/status/1088276311829753856
 『スプリット』https://twitter.com/pherim/status/862930331124375553
 『アフターアース』https://twitter.com/pherim/status/368955727433330688





『劇場版 呪術廻戦 0』
呪術高校の面々が過ごす奇怪日乗。
最強教師/五条悟の同窓生が闇落ちラスボス化し、TV版24話とは別軸の物語へ。パンダパイセン好き。
鬼滅興収が騒がれた際、呪術廻戦のが面白いぞと思ってたけど、“無限列車編”の破綻がない分“0”は刺さり具合も弱い感。終盤キメの無音演出イイ。

"" https://twitter.com/pherim/status/1614451311063478272

 “Kandittund! (Seen It!)” https://twitter.com/pherim/status/1480533023292796928




■国内劇場未公開作(含VOD公開/DVDスルー作)

『JUNG_E ジョンイ』
Netflix 2023
サイバーパンク終末SF超絶眼福作。
攻殻の心脳問題圏を、エリジウム的格差社会を背景に、レミニセンスの水没都市を舞台として描くディストピア表現が激秀逸。
“新感染”のヨン・サンホとネトフリ資金力が悪魔合体した世界観の奥行きヤバい。主演カン・スヨン遺作。

"정이" "JUNG_E" https://twitter.com/pherim/status/1617019881828020228

 ヨン・サンホ近作:
 『ソウル・ステーション/パンデミック』https://twitter.com/pherim/status/911961779466510339
 『我は神なり』https://twitter.com/pherim/status/918627287288791040

 世界観想起:
 『レミニセンス』https://twitter.com/pherim/status/1451379247759511556
 『エリジウム』https://twitter.com/pherim/status/381278090179014656

 




 余談。『FALL/フォール』『THE FIRST SLAM DUNK』『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』と体感系良作まとめて観た感。
 
 リョータの出自とか疑似家族云々の物語とか好みの水準から言えばとっても脇道で、脇道ほぼない『FALL/フォール』はこの意味で完成度極高でした。
 

 


おしまい。
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