今回は、国立映画アーカイブ特集企画《アカデミー・フィルム・アーカイブ 映画コレクション》上映作から14作品を扱います。(含短編8作)
タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート
[https://twitter.com/pherim]まとめの第256弾です。
強烈オススメは緑、
超絶オススメは青で太字強調しています。
(2020年春よりドラマ含むネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしばタイトル黒太字表記です。)
■アカデミー・フィルム・アーカイブ 映画コレクション
https://www.nfaj.go.jp/exhibition/academy202212/#section1...
『クイーン・オブ・ダイヤモンド』1991
ラスベガスのカジノでディーラーをして暮らす女の、永遠に反復される日々。
反復が強力すぎて、研ぎ澄まされたカードさばきもふと客へ振る舞う笑みも人形のように映り、過ぎ去る男たちは風景と化し砂漠的な孤独を想わせる。
ニナ・メンケス、不朽の一作。
"Queen of Diamonds" https://twitter.com/pherim/status/1615707143965118464
『青空恋をのせて』“Cock of the Air”1932
第一次大戦下、軍人達を惑わすフランス女優とヤンキー空軍中尉とのラブコメ飛行。
業界自主検閲での削除箇所発掘→米Academy Film Archiveが新たに音付けで奥行き増した感。大富豪にして航空王ハワード・ヒューズ製作だけに複葉機チェイス場面も面白く、最強執事が良スパイス。
"Cock of the Air" https://twitter.com/pherim/status/1610607271008145408
『孔雀夫人』“Dodsworth”1936
自動車会社を引退した実業家と、重役夫人暮らしの鬱屈を晴らしたい妻が欧州回遊の旅へ出る。
奔放に不倫を重ねるごと新たな顔を覗かせゆく女と、社会性の鱗が剥がれ落ちるにつれ躍動しだす男の対比が刺さるウィリアム・ワイラー中期快作。客船の使い方が異様に巧い。
"Dodsworth" https://twitter.com/pherim/status/1616267758832062465
『悪魔と戦うキューバ人』1971
不意に出逢った鬼怪作。
植民地下の村で、神の国を劇しく求める神父と、異教徒との密貿易に励む地主らの対立が先鋭化。狂乱の祝祭、悪魔憑き、暴動、悦楽の園。
“苺とチョコレート”の監督作、何かあると期待したけど大傑作。“彷徨える河”想わせる超越表現さえ。(続
"Una pelea cubana contra los demonios" https://twitter.com/pherim/status/1619921008865206272
『彷徨える河』スレッド https://twitter.com/pherim/status/791973496876249088
追記するかもー
『きゅうり畑のかかし』“Scarecrow in a Garden of Cucumbers”1972
女優を夢みてNYへ出たおヒゲ濃ゆめな女の子の、家探しに始まるめくるめくアングラ桃源郷探検。
クィア映画みたいな括りを遥かに突き抜けカルトで陽気な賑わいがずっと楽しく、こんなのが知られず眠ってたこの世界まだまだアツい。
[動画見当たらず]
"Scarecrow in a Garden of Cucumbers"
『ノーマ・レイ』“Norma Rae”1979
田舎の紡績工場に組合が作られる。
いい映画すぎてびっくりした。
工場の機械音、ぼろモーテル、板張り教会。イイ!
ロマンスの芽を端からつぶすユダヤ男の潔癖さすらエンタメになる時代感。癖強き脇役として今も健在なSally Fieldの強烈ヒロイン、眩しかった。
"Norma Rae" https://twitter.com/pherim/status/1613743745773752324
『日本の映画作り』は1935年、AFAの要請で製作された日本のスタジオ各社を紹介するトーキー映画抜粋集。
殺陣で魅せる池田富保/剣雲薩摩歌や帝国海軍舞台の阿部豊/海國大日本、永富映次郎/なみだの母など貴重な発掘→レストア化事例。
市川崑作画参加の『弱虫珍選組』は特に鮮烈。しっかり面白い。
[動画見当たらず]
"Movie Making in Japan: A Screen Snap-shot" https://twitter.com/pherim/status/1625071814513942531
2023年最初の月は、月別映画ベスト10で初めてアメリカ作品が半数を占める結果に。
これは一重に、国立映画アーカイブ特集上映↓の賜物。
https://nfaj.go.jp/exhibition/academy202212/#section1-1
溝口健二が西南戦争を描く
『マリヤのお雪』1935の一幕とか、案内にも記載なく驚いて見入った。今年の抱負は“フットワーク復活”ですの。
"Oyuki the Virgin" https://twitter.com/pherim/status/1620976406070198273
『日本の映画作り』上映回は、
『Academy Film Archive所蔵ホームムービー集』併映とJosef Lindner/AFA講演付き。
戦前に遡る日米の映画舞台裏を浴びるように観たあと語られる保存修復の努力&意義は説得力抜群。リールを切り換える3連式の22mm filmとか、存在さえ知らずてかノーランの比でない難物では。
"Home Movies Treasures from The Academy Film Archive"
■バーバラ・ハマー初期作品集 菅野優香解説
https://www.nfaj.go.jp/exhibition/academy202212/#ex-67717
バーバラ・ハマー/Barbara Hammer
『ダブル・ストレングス』“Double Strength” 1978
全裸のダンサーが、空中ブランコ上で一定のリズムの内に全身を躍動させる。樹上の枝を渡り歩く彼女の映像が挟まり、やがて色彩とモノクロの体が互いを鏡像とする。
Feminist/Lesbianの文脈を超え、ダブルの含意が直截に昇華された珠玉短篇。
全編あり→https://www.jsc.art/videos/barbara-hammer-double-strength...
"Double Strength" https://twitter.com/pherim/status/1611702403501522946
“Mense/月経”1974
“Sisters!”1973
裸や性器を見せつける70sから、形式へ関心が移る80sへ。という一般見解に抗う、初期作にも観られる面白画角②。ピル錠剤を聖餅に、経血をワイン
に見立てる聖餐式、全裸女性の股間にゆで卵など“Mense”鮮烈。
"Sisters!" "Mense" https://twitter.com/pherim/status/1613008386945323008
“Jane Brakhage” 1974
実験映画旗手スタン・ブラッケージの妻ジェーンへ焦点化した短編。ヴェンダースっぽいロード感覚。
バーバラ・ハマーが結婚生活を離れSF州立大学に学んだ頃の初期作で、本作が(恐らく主題設定にケチがついて)修了制作として認められなかった逸話自体が今やハマー伝説序章。
[動画見当たらず]
"Jane Brakhage" https://twitter.com/pherim/status/1625691002370682880
“Superdyke”1975
レズビアンの俗称"dyke"とスーパーマンとを文字ったタイトル&コスチューム、笑いながら街を闊歩する女たち。
フィルムの枯色が生む暖系オーラと突き抜けた高揚感が心愉しいバーバラ・ハマー短編代表作。
あっけらかんと言分け仕草を内から破るエネルギーが横溢し、伝播する。
"Superdyke" https://twitter.com/pherim/status/1627839096243748864
“Audience”1982
自作の上映回前後の観客に、バーバラ・ハマー本人が取材する。
女性器の映り込みを嫌悪する人、に異議を唱える人。周囲の客も巻き込む議論へ広げ、皆を受け身の姿勢から引き剥がす。
別の街に暮らす娘が本作に映ってたと語る母親の登場など、過程自体が作品化する仕掛けも面白い。
"Audience"
余談。時間管理の稚拙さゆえ、観たくてチケットも買っておいた本企画中2作品に行けず。むーん。
おしまい。
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