pherim㌠

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pherim㌠さんの日記

(Web全体に公開)

2023年
03月29日
23:51

ふぃるめも260 イスラーム映画祭8上映全作

 
 

 今回は、東京/名古屋/神戸で2月18日~5月5日順次開催の《イスラーム映画祭8》上映全14作品を扱います。(含再掲3作)

  《イスラーム映画祭8》主宰者インタビュー by pherim
  http://www.kirishin.com/2023/02/13/58734/

 タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート[https://twitter.com/pherim]まとめの第260弾です。強烈オススメは緑超絶オススメは青で太字強調しています。(2020年春よりドラマ含むネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしばタイトル黒太字表記です。)


 
■イスラーム映画祭8
 http://islamicff.com/

『マリアムと犬ども』
チュニジアで起きた警官による強姦と、続々襲う二次加害の地獄夜。
自由を謳歌する主人公こそが保守性を見せ、左翼恋人が卑しさを露呈、警官同士が対立するなど展開の意外性と1カットx9章の構成とが緊迫感を途切らせず期待値越え。『皮膚を売った男』監督作。

"Aala Kaf Ifrit/Beauty and the Dogs" https://twitter.com/pherim/status/1627109755339808768

  『皮膚を売った男』https://twitter.com/pherim/status/1459369705655848962




『陽の届かない場所で』“Upon the Shadow”
家族や地域から迫害されたゲイやトランスヴェスタイトの面々と暮らす、上半身裸のFB投稿で物議を醸したアミーナ・サブウィ/Amina Tyler。
イスラーム圏におけるLGBTQの若者らのシェア生活、その脆い均衡の上に成り立つ日常描写が新鮮ながらもやるせない。

"Upon the Shadow" https://twitter.com/pherim/status/1628589107046907904 

 


『太陽の男たち』1972
砂漠へ降り注ぐ熱射と爆走するトラックのあげる砂塵、肌を灼く鉄タンクの猛熱と、襲い来る惨劇のトラウマ。
難民男3人の過酷旅描くカナファーニー傑作文学をシリア資本+エジプト人監督で映画化。このパレスチナ版『恐怖の報酬』結末の、救いの無さに言葉失う。
[動画見当たらず]
"" https://twitter.com/pherim/status/1629367018137976832

  『恐怖の報酬』https://twitter.com/pherim/status/1065081326879961088

『太陽の男たち』は、原作よりもスペクタクル重視の演出で惹きつける一方、終盤の決定的な場面で安易な改変を加えたものだとやや残念に感じた。
ところが岡真理さんの上映後レクで、原作執筆と映画撮影を隔てる十年間のパレスチナ巡る情勢変化が含意されたと伺い目から鱗。

  ガッサーン・カナファーニー連ツイ: https://twitter.com/pherim/status/1240384151208906752




『ファーティマの詩(うた)』“Fatima”2015
ふたりの娘を育てるアルジェリア移民の母が、眠るまえ日記のようにアラビア語で書きつける詩の穏やかさ。
清掃婦や家政婦として働く仕事場では、無自覚の差別に晒される。フランス語が話せず娘たちとさえ溝が生まれる。それでもしなやかに強く在る母の姿影。

"Fatima" https://twitter.com/pherim/status/1633672516547022850

淡々と家事をこなしゆく描写と子への眼差しに『ジャンヌ・ディエルマン』、移民体験としてのフランス格差描写に“Mon amie Victoria”を想起。

 “Jeanne Dielman, 23 quai du Commerce, 1080 Bruxelles” 1975
  https://twitter.com/pherim/status/1524952360308588568
 “Mon amie Victoria”(My Friend Victoria) https://twitter.com/pherim/status/1316941382389551111


『ファーティマの詩』は、フランス都市郊外に暮らす移民を撮る映画ジャンル“Le cinéma de banlieue”からのイスラーム映画祭初上映作。
森千香子さんのバンリュー映画トーク、レ・ミゼラブル団地ありケシシュ(↓引用RT先で特集スレ)あり、未見作も多く紹介され興味深く拝聴。

 『身をかわして』“L'Esquive” &パリ郊外映画スレッド https://twitter.com/pherim/status/1234292194816606208
 
“ファーティマの詩”で、医学部の昇級試験に苦しむ娘は一方、通学中に男と出逢い恋に堕ちる。①↙母が経験し得ない、洗練された時間がそこに流れる。
試験発表の掲示を待つ娘④↘の背を見守る母。後日誰もいない掲示板の前で、母は静かに喜びを噛みしめる。最高の一場面。

 ↑ツイ画像: https://twitter.com/pherim/status/1640156493264871424




『エグザイル 愛より強い旅』
仏人植民者の孫ザノと、アルジェリアにルーツもつ恋人ナイーマのイベリア経由アフリカ北岸流浪旅。
農園バイトやロマ村フラメンコ熱狂からスーフィー陶酔まで。ロマン・デュリスとルブナ・アザバルの躍動まぶしき音楽&ダンス映画秀作。

"EXILS" https://twitter.com/pherim/status/1640828119186821120

 『ガッジョ・ディーロ』トニー・ガトリフ1997年作 https://twitter.com/pherim/status/1624321187307491328
 『サクロモンテの丘 ロマの洞窟フラメンコ』https://twitter.com/pherim/status/832193511852085249


『エグザイル 愛より強い旅』は2004年作、邦題『愛より強い旅』にて翌年日本公開。
トニー・ガトリフ監督が主人公らに託した複雑な背景、トルコ系ドイツ人名匠ファティ・アキンの同年作『愛より強く』との影響関係など渋谷哲也Talkにて。ちな冒頭BGM歌手はRona Hartner(↑)と冊子にて。

  ファティ・アキン『消えた声が、その名を呼ぶ』めぐる拙稿「あるアルメニア人の旅」
  https://note.com/pherim/n/n2871bb175b07





『長い旅』
息子よ、世界の本質を知れ。南仏からメッカへ、モロッコ系移民で敬虔なムスリムの父と、信仰なき息子の衝突と宥和の旅路。
シリアス&コミカルな父子ドラマ良し、欧州発アラビア半島行きロードムービー眼福、カーバ神殿へ至る終盤圧巻。

"Le Grand Voyage" https://twitter.com/pherim/status/1644176497874472962

息子「なぜ飛行機では駄目なんだ」
父「海の水は天に昇るまでゆっくりと清められる。巡礼も同じだ。飛行機よりも列車が、列車よりも車がいい。お前の祖父は徒歩で旅立った。俺は毎日丘に登って父の帰りを待った。巡礼から戻る父の姿を最初に見たかったからだ」

 『バーバ・アジーズ』https://twitter.com/pherim/status/820453194505404416




『そこにとどまる人々』“ميّل يا غزيّل”
良き隣人同士であったムスリムとキリスト教徒の分断進むレバノンの村で、淡々と石を積みあげる男の横顔。
騒擾とも宗派対立とも無縁に石や土に触れ、土地と語らう男の背に、遠く内戦の木霊が響く。ジョスリーン・サアブ弟子筋監督の気骨充溢。

"ميّل يا غزيّل" "Those Who Remain" https://twitter.com/pherim/status/1645041666523541507




『キャラメル』“سكر بنات”
ヘアサロンに集う女たち各々の、
叶わぬ切なき想いの行方と思いやりの優しき温度。
宗教規範の抑圧が強いほどに高まる美しさへの情熱を、物語へと見事に昇華する腕前に全面降伏するしかないナディーン・ラバキー33歳時初長編(2007)。本物感が凄い。

"سكر بنات" "SUKKAR BANAT" "Caramel" https://twitter.com/pherim/status/1646323269866508288 

 


『私たちはどこに行くの?』
レバノン、砂漠の小村でムスリムとクリスチャンの男達が諍い合う。女達は対立の兆しを村から遠ざけようとする。だが燻る火種は容易く発火する。女達の下した笑撃的慈愛の決断。黒海対岸から舞い降りた白人美女集団が加わり、村は絢爛の一夜へ突入する。剣に滅ぶな男ども。

"Et maintenant on va où?" "Where do we go now?" https://twitter.com/pherim/status/821916781900009473

互いの殺戮に至る宗教対立というシリアスなテーマを、レバノンの重層的な歴史文脈をも取りこぼすことなくユーモラスに描き切る『私たちはどこに行くの?』。男は皆争い女は皆宥和を望む戯画的な構図が、開幕数分の群舞を最終的に昇華させる構成の絶妙。

『存在のない子供たち』のナディーン・ラバキー監督。2011年の第2作『私たちはどこに行くの?』ではご自身の出演を知らずに観て、群舞中央で異様な存在感放つこの姐御何者!?って目が喰いつきっぱなしでした。『存在のない子供たち』でも少年を守る女性弁護士を好演、ガチ綺麗。
https://twitter.com/pherim/status/1154155392953249792

 『存在のない子供たち』https://twitter.com/pherim/status/1150969625154244608
 拙稿 映画評『存在のない子供たち』http://www.kirishin.com/2019/07/17/26949/


『存在のない子供たち』が日本でも去年注目され、カンヌ式典でムスリマ(イスラーム女性)の矜持を示したナディーン・ラバキー過去作『私たちはどこに行くの?』(RT↓先ツリー言及)がイスラーム映画祭5で15日上映予定。ムスリムとクリスチャンが半数ずつ暮らす村舞台の秀作です。
https://twitter.com/pherim/status/1238443854837067776




『キャプテン・アブ・ラエド』
ゴミ箱で拾った機長の帽子を被り帰宅、近所の子供達からパイロットだと誤認された空港清掃員翁。
本で得た世界旅行の話で子らの夢膨らませる光景が楽しい。
DVに苦しむ子が翁の正体を疑いだす後半の寛容テーマが国の歴史へ結びつく、50年ぶりにヨルダンで撮影されたヨルダン映画。

"Captain Abu Raed" https://twitter.com/pherim/status/1648577006165200896 

 


『ガザを飛ぶブタ』2010
パレスチナ人漁師が豚を釣って始まる占領地コメディ。
金網越しに露系ユダヤ人居住区へ豚精液を密売、見張用に屋上が接収された家庭でパレスチナ人主婦とイスラエル兵士が南米ドラマを共に観るなど、奇抜な諷刺の数々が楽しい。
豚どうしようマンの雄叫びを聞け。

"Le Cochon de Gaza" "When Pigs Have Wings" https://twitter.com/pherim/status/1649636343277035520

 


『ソフィアの願い』モロッコ2018
主人公ソフィアが予期せず破水、
病院へ駆け込むが婚外子出産は収監対象。
そこで繰り出す彼女の狡知が凄まじく、
二転三転する真相に家族親族続々卒倒。
カサブランカの格差/下町描写も興味深く、
各々の立場で機転利かせる女達の逞しさ、
演じる役者の巧さに惚れ惚れする。

"Sofia" https://twitter.com/pherim/status/1501794736423665664

『ソフィアの願い』に出ずっぱりのふたり。
親世代を演じる役者は他の中東映画や仏西映画で見る顔が揃うことから気になり調べると、不敵さ漂わせる面構えが印象深い主演Maha Alemi↙の他出演作見当たらず。いとこ役@SarahPerles↘は、“Homeland”始め長大な履歴があり今後も度々見かけそうな方でした。
(画像ツイ:https://twitter.com/pherim/status/1503281201599049730 )




『午後の五時』
父に内緒で通学し、夢は大統領と語るアフガニスタンの女生徒が今日を生きる。
青傘映える構図のサミラ・マフマルバフ風味が妹ハナとは対照的。主演女性は監督と同じ22歳で子が3人、劇中の義姉同様に夫が行方不明。死を待つロルカ詩由来の題は象徴的。

"À cinq heures de l'après-midi"  

  ハナ・マフマルバフ『子供の情景』https://twitter.com/pherim/status/1520013830117502976
  サミラ・マフマルバフ言及ツイ https://twitter.com/pherim/status/1236832342561312769




『わたしはバンドゥビ』2009
退屈少女が、バングラデシュ移民青年の財布をガメたことから始まる甘くも苦い青春傑作。
日本の技能実習制度に通じる社会派要素をもちながら、語り口の巧さはさすが韓流、終幕のベンガル料理店場面とか泣くし滅茶旨そうだし。愛おしすぎてイスラーム映画祭万歳ヽ(`▽´)/

"반두비" "BANDHOBI" "僕たちはバンドゥビ"





 イスラーム映画祭万歳!ヽ(`▽´)/





おしまい。
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