今回は、3月25日~4月7日の日本上映開始作など10作品を扱います。(含再掲1作)
タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート
[https://twitter.com/pherim]まとめの第261弾です。
強烈オススメは緑、
超絶オススメは青で太字強調しています。
(2020年春よりドラマ含むネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしばタイトル黒太字表記です。)
■3月25日公開作
『トオイと正人』
大戦をラオスで終えた父はメコンを越え、ベトナム人になりすましタイ東北部の町で写真館を開く。
8歳までトオイとして生きた写真家・瀬戸正人。父の帰郷で福島へ移り薄まる少年トオイの影。わからないのに書けるタイ文字。遠い探索の旅路へ寄り添う写真家・小林紀晴初監督作。
"TOOI&MASATO" https://twitter.com/pherim/status/1637649131496939520
※「共産化によるスパイ摘発におびえる父」の描写めぐり追記するかもー
インドシナ残留日本人関連映画:
真田広之&コリン・ファース『レイルウェイ 運命の旅路』https://twitter.com/pherim/status/1317782392363347968
『クワイ河に虹をかけた男』https://twitter.com/pherim/status/768276886459854848
『戦場にかける橋』
タイ東北部“共産化の恐怖”関連映画:
『時の解剖学』(เวลา/Anatomy of Time) https://twitter.com/pherim/status/1459498957151686656
『暗くなるまでには』(ดาวคะนอง) https://twitter.com/pherim/status/1089312170582564864
空族『バンコクナイツ』『バビロン三部作』『チェンライの娘』https://twitter.com/pherim/status/843215220482875392
Pathompon Mont Tesprateep “On-going Part I: Pleng-Krom-Dek (Lullaby)” https://twitter.com/pherim/status/1511537656282304514
『MEMORIA メモリア』https://twitter.com/pherim/status/1491968334459404289
拙稿「明滅するリアル」(『MEMORIA メモリア』をめぐって) http://www.kirishin.com/2022/03/04/53173/
■3月31日公開作
『らくだい魔女 フウカと闇の魔女』
風変わりな鑑賞体験。この春休みにこれを観たことを、ずっと記憶する子はいるよねと思わせる。
たとえば会話が説明ゼリフと感嘆詞だけなのに、嫌な気はしない。むしろ6歳時に観たらきっと、ファンタジーという未知領域の広さを初めて予感するだろうという巧さ。
"" https://twitter.com/pherim/status/1639862757834231811
シェイクスピアもギリシア悲劇も、言葉でぜんぶ説明しちゃう。これは現代に比べ舞台装置が素朴だったからだけど。
ことばを得て育て親との半径2m世界から、学校という永遠にも近い荒野へ突入した勇者達の手元には、まだアニメ文法とか剣や魔法の知識とか揃ってない。だからこれが正解なんだという学び。
『らくだい魔女 フウカと闇の魔女』『ケアを紡いで』をめぐり書きました。
未知への興奮と終末への旅。ギリシア悲劇とアニメ文法、鏡の中の自分とSNS、幼少期の半径2m時空から物語の続きとしての現在へ。
拙稿【映画評】発見と冒険のあいだで 2023年4月1日 キリスト新聞社HP
http://www.kirishin.com/2023/03/31/59765/
■4月1日公開作
『ケアを紡いで』
27歳で癌を患った看護師のゆずなさんと
周りの人々の、思い深き日々。
残りの時を意識はする。焦らない。朗らかに。旅に出る。恐れない。穏やかに。受け入れる。笑う。
成人前でも中高年でもない、医療支援の薄い谷間“AYA世代”を背景に、『島にて』の監督撮影組が紡ぐ時間の充溢。
"" https://twitter.com/pherim/status/1640329249507926018
拙稿【映画評】発見と冒険のあいだで 2023年4月1日 キリスト新聞社HP
http://www.kirishin.com/2023/03/31/59765/
■4月7日公開作
『ザ・ホエール』
白鯨と悔恨。
命を脅かす過食で心の傷覆う、270kg巨漢をブレンダン・フレーザーが熱演する。
“マザー!”で母の物語を人類史級に拡張したダーレン・アロノフスキーが、今度は引き篭もる父の巨躯に世界の今を投影し“レスラー”を正統更新。終幕への疾走感は神懸かり的。
"The Whale" https://twitter.com/pherim/status/1641230003202588673
『マザー!』スレッド https://twitter.com/pherim/status/925203162281123840
『ザ・ホエール』でのブレンダン・フレイザー特殊メイク。特に下半身の動きが圧巻で、映画館鑑賞をお奨めしたい理由の1つでさえ。
本作↙とハムナプトラ期(~2008)の彼↘
事実上のハリウッド追放からオスカー受賞へ至る苦境を深海へ潜る鯨に喩えたスピーチは感動的でした。
※脇役4者セイディー・シンク/ホン・チャウ/タイ・シンプキンス/サマンサ・モートンめぐり追記予定。とりわけホン・チャウ!
&『ノア 約束の舟』に絡め追記するかも~
『パリタクシー』
免停直前のどん詰まりタクシー運転手が、
貴婦人の依頼を受けて始まるミラクル珍道中。
92歳女性の一生を貫くパリ縦走の、夫のDV含む壮絶な道行きを、今ある彼女の穏やかな瞳が睥睨する。
老人ホーム=終生の地への旅が、荒んだ中年運転手へもたらす豊穣の深みに胸打たれる。
"Une belle course" "Driving Madeleine" https://twitter.com/pherim/status/1641995457269485568
『タクシー運転手 約束は海を越えて』https://twitter.com/pherim/status/965029881430994944
『タクシードライバー』(ทองพูน โคกโพ ราษฎรเต็มขั้น) https://twitter.com/pherim/status/972054405242482688
『ノートルダム 炎の大聖堂』
鐘楼、身廊、螺旋階段他の実物大セットへ炎をくぐらせる、巨匠だけがなしうる意欲作。
薔薇の名前/愛人ラマンのジャン=ジャック・アノーが全編IMAX撮影で挑んだ本作、国宝級聖遺物群の救出顛末や、燃え盛るゴシック双塔への志願消防士の突入など圧巻の映像に見入る。
"Notre-Dame brule" "Notre Dame on Fire" https://twitter.com/pherim/status/1640535334898524162
2019年4月15日(パリ時間)当日ツイ https://twitter.com/pherim/status/1118028684831543296
『ノートルダム 炎の大聖堂』は2019年4月15日の火災発生~消火開始のリアリティ追求を経て、意外にも後半ジャン=ジャック・アノー固有世界へ突入する。
聖遺物《茨の冠》救出時には“実は本物が別の場所に~”とミステリアス展開、寡黙に闇奥へ消える司祭の後ろ背などもう薔薇の名前。
『薔薇の名前』建造物ツイ https://twitter.com/pherim/status/1581415200284348417
拙稿「【映画評】炎上と崩落のさきで 『ノートルダム 炎の大聖堂』」
http://www.kirishin.com/2023/04/06/59840/
『ジョージア、白い橋のカフェで逢いましょう』
夜の交差点で邂逅する男女を、幼木と古い雨どいと監視カメラと風が助けようとするジョージア宇宙。
知ってた。深夜の交差点ってそういうとこだよねっていう序盤からフワリとした着地まで、映画ならではの遊び&心地良さ充満の不思議ロマンス。コーカサス版アメリだよ。
"Ras vkhedavt, rodesac cas vukurebt?" "What Do We See When We Look at the Sky?" "見上げた空に何が見える?"
2021年秋初見時ツイ(東京FILMeX上映時邦題『見上げた空に何が見える?』ふぃるめも204)
https://twitter.com/pherim/status/1462615923907391489
『ダークグラス』
正体不明男に追われ、盲目となった女が味わう恐怖夜。
ダリオ・アルジェント御大82歳10年ぶり新作は、冒頭からアップテンポの『サスペリア』グルーヴ&音律がもうたまらん。
夜道、犬吠、白刃の煌めき、絶叫、鮮血。自己模倣なんてチャチな批判を予め封じるジャッロ貫徹、堪能。
"Occhiali neri" "Dark Glasses" "Black Glasses" https://twitter.com/pherim/status/1641776048437346304
ジャッロ追随微妙作『べネシアフレニア』https://twitter.com/pherim/status/1605397754141761537
ダリオ・アルジェント出演作(尊顔画像ツイ) https://twitter.com/pherim/status/1614124120891088897
『ダークグラス』“Occhiali neri”で印象深い脇役2人。
①ダリオ・アルジェントの実娘アーシア。味方の歩行訓練士役。
②バディの東洋少年。イタリア移民社会化の象徴的側面も。
(画像
https://twitter.com/pherim/status/1642896054856323073 )
無数のジャッロ追随作を生むも、21世紀にゾンビの如き蘇る(超絶褒めin this case)本家の迫力は格別でした。
『ガール・ピクチャー』“Tytöt tytöt tytöt”
まぶしいほどのヒリヒリ感。わけもなく惹かれあい、疼きを持て余し、ぶつかって傷つき、赦しあう。
壁の前で立ち止まる恋人のスケート選手を、誤解されても突きはなし推進力を与える展開など、伝わらないリスクを恐れず突貫する演出の度胸が心地よい。
"Tytöt tytöt tytöt" "Girl Picture" https://twitter.com/pherim/status/1643221580510806017
“フィンランド語の原題Tytöt tytöt tytötは、girls girls girlsという意味です。これは、女の子たちが悪いことをした時に、見下したり、恥ずかしい思いにさせたりするために言うフレーズ。そのフレーズを新しいトーンに変えたいと思いました。もっと楽しいトーンにするのです”
―Alli Haapasalo監督
■日本公開中作品
『コンパートメントNo.6』
モスクワで孤独をかこつフィンランド人女性が、北極圏の先史岩絵を目指す寝台列車で味わう最低で最高の旅路。
一見クズな同室ロシアニキの熱い振る舞いに、ロシア~フィンランド国境含むあらゆる緊張関係と無理解とをほぐす鍵を想ってしまう。幕切れも爽快すぎて至福眼福、超一級の旅映画。
"Hytti nro 6" "Compartment Number 6" https://twitter.com/pherim/status/1639186536792199169
※ロシアニキの行動原理など追記するかも~
極私的ベトナム北上寝台列車ツイ:https://twitter.com/pherim/status/440796189546397696
余談。『コンパートメントNo.6』は通年ベスト10入りほぼ確。まだ全国順次公開中ですよ。
おしまい。
#ふぃるめも記事一覧: https://goo.gl/NXz9zh
コメント
04月06日
23:49
1: そらまめ
> Tytöt tytöt tytöt
なんか、姦しいと似てて面白いですね。蒙古斑どうし通じるものを感じました。
04月07日
01:08
2: pherim㌠
めめめしい!!!
(フィン人とは蒙古斑どうしという認識なのか……さすが北越)