pherim㌠

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pherim㌠さんの日記

(Web全体に公開)

2023年
04月13日
05:07

ふぃるめも262 蜘蛛の幻滅と花婿のサル

 
 

 今回は、4月8日~4月14日の日本上映開始作を中心に、11作品を扱います。(含短編1/再掲1作)

 タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート[https://twitter.com/pherim]まとめの第262弾です。強烈オススメは緑超絶オススメは青で太字強調しています。(2020年春よりドラマ含むネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしばタイトル黒太字表記です。)


 
■4月8日公開作

『最高の花婿 ファイナル』

多国籍婿たちの両親が、世界中からフランス古城の町へ集うことになり、バカ受け文化衝突コメディ再炎上。
本国超ヒットのシリーズ3作目。既出の面白アフリカ夫妻に対し、中国アラブユダヤ夫妻の一歩も引かない強烈キャラが笑わせる。予想外の横槍展開も飽きさせない。

"Qu'est-ce qu'on a tous fait au Bon Dieu ?" "Serial (Bad) Weddings 3" https://twitter.com/pherim/status/1645399165764247553

 『最高の花婿』2014https://twitter.com/pherim/status/709301515995848704
  拙稿「おとっさんのほかに神はなし」https://note.com/pherim/n/n8738a8365539
 『最高の花婿 アンコール』2018 https://twitter.com/pherim/status/1647457209612402688

 
 
 

■4月14日公開作

『幻滅』“Illusions perdues”
19世紀半ば、王党派が息吹き返す恐怖政治後の狂騒と享楽に沸くパリ社交界描く、バルザック『人間喜劇』の1篇を映画化。
新聞報道や芸術批評の虚妄を暴く監脚グザヴィエ・ジャノリの鋭さは2015年作『偉大なるマルグリット』を更新し、現代マスメディアの児戯を容易に刺し貫く。

"Illusions perdues" "Lost Illusions" https://twitter.com/pherim/status/1646355801144172544 
 
 『偉大なるマルグリット』https://twitter.com/pherim/status/681364290142519296
 
 
 
 
『search/#サーチ2』
遠い異国を旅する母が突然消える。
同行した新しい義父を疑い、不甲斐ないFBIを尻目に遠隔で母のゆくえ追う娘の奮闘が手に汗握る。
モニター内完結の物語が圧倒的に斬新だった前作の編集2人が監督登板、スリルと速度感を増した画面展開にふしぎな《見る快楽》を感覚する。

"Missing" https://twitter.com/pherim/status/1644315255391281152 

 『search/サーチ』https://twitter.com/pherim/status/1054701572423266310
 『アンフレンデッド:ダークウェブ』https://twitter.com/pherim/status/1098779336797151232
 『RUN/ラン』https://twitter.com/pherim/status/1404271477726142464





『聖地には蜘蛛が巣を張る』“Holy Spider”
娼婦16人を殺し“街の浄化”を謳った殺人鬼描くクライムノワール秀作。
夜の煌めき、路地の闇、祈りの声、忍び寄る牙。マザーズ/ボーダーのアリ・アッバシ新作は、母国イランの実話を緊密に再現する。
女性蔑視社会を具現化する悪の凡庸さこそ恐ろしい。

"Holy Spider" https://twitter.com/pherim/status/1645620813641682944

 『マザーズ』https://twitter.com/pherim/status/1499223885211844609




『マネーボーイズ』“金錢男孩/Moneyboys”
都会へ出て体を売る、中国農村部出身の若い男たち。
送金で家族を支え、親族から蔑まれる日々。溢れでるエネルギーと底深い葛藤、偽装結婚、経済的成功と心の虚無を活写する映像の距離感が印象深い。
刹那的な暮らしへと加速するしかない生の在りよう。

"金錢男孩" "Moneyboys" https://twitter.com/pherim/status/1644609210267897856 




■特集上映《知られざるサッシャ・ギトリの世界へ Bonjour, monsieur Sacha Guitry》シネマヴェーラ渋谷
 http://www.cinemavera.com/backnumber_detail.html?no=291

『あなたの目になりたい』1943
視力を失いゆく彫刻家とモデル女性の悲恋。
ナチス占領下の昏いパリが舞台。先の見えない逼塞を“視力”へ象徴させ検閲を免れたサッシャ・ギトリ作。
戦後被った対独協力の嫌疑より、「この映画だけが灯火管制の現実を忠実に描く」とのトリュフォー評に遥かな説得力。
[動画見当たらず]
"Donne-moi tes yeux" https://twitter.com/pherim/status/1642709677166440451

 『怒りの日』“Vredens Dag”1943 https://twitter.com/pherim/status/1480862178500812806




■国内過去公開作(含映画祭上映作)

『ノア 約束の舟』
2014
開幕5分からの超展開。
創造主からアダムとイヴへ連なる導入が聖書の正伝映像化を予感させるも、そこは流石のダーレン・アロノフスキー監督作。方舟完成へ至る独創性と聴覚体験の豊かさに仰天。
この宇宙的展開を極限=1身体まで凝縮させたのが新作『ザ・ホエール』なのでした。

"Noah" https://twitter.com/pherim/status/1642136449561825287

 『ザ・ホエール』“The Whale”https://twitter.com/pherim/status/1641230003202588673
 『マザー!』"Mother!" https://twitter.com/pherim/status/925203162281123840
 “Noah” 2014年バンコクDolby Atmos鑑賞時ツイ https://twitter.com/pherim/status/459192993434460160





『ブラック・フォン』“The Black Phone”
子供の連続失踪事件が起きているコロラド州の町で、気弱少年が誘拐される。
イーサン・ホーク&ブラムハウスは“パージ”以来かな。幽閉部屋の断線してる黒電話がなぜか鳴り、少年を励ましたり諭したり。オカルト接続の成長克服譚って目の付け処が面白い。

"The Black Phone" https://twitter.com/pherim/status/1654458174932672512

  イーサン・ホーク言及パージ連ツイ https://twitter.com/pherim/status/1155949701780258819
  イーサン・ホーク良作オカルトwithエマ・ワトソン『リグレッション』
  https://twitter.com/pherim/status/1045130199006728192





■国内劇場未公開作(含VOD公開/DVDスルー作)

“Juliet dans Paris”
1967
孤独の入り口で、目には見えない“世界の半分”へこの掌の先が触れている。茫漠とした不安に仄かな救いさえ予感する、かつて浸ったあのリアルが甦る。
5月革命前夜の不穏さの、精確な映像化とも直観されるクロード・ミレール初短編。
大丈夫。私は夜を待たねばならない。

"Juliet dans Paris" https://twitter.com/pherim/status/1643601949575749633

  1967年製作エテックス『大恋愛』https://twitter.com/pherim/status/1612398094175596544
  1967年舞台作『5月の花嫁学校』https://twitter.com/pherim/status/1397030754169724930


“Juliet dans Paris”は、クロード・ミレール25歳の作。ブレッソンやゴダール、ドゥミらの助監督時代で、ヌーヴェルヴァーグ味に拘束感さえ覚える感性の鋭さが良い。
Youtube全編あり。↑(こねこさま大変な目に遭うなり)
サングラス&長髪と血糊の黒紅様式美にダークグラスも想起され。
 
 『ダークグラス』https://twitter.com/pherim/status/1641776048437346304
 
 
 
 
『カーター』Netflix
のっけから壮絶状況を生き延びる記憶喪失の男が、自ら記憶抹消したと知り斬った張ったの大冒険。
アクション極振りの近未来SFで、家族物展開の幼稚さも全く気にならない曲芸戦闘の畳みかけを空っぽ頭で楽しむやつ。マスキュラーなヒーロー物にさえなってないのがとても良い。

"카터" "Carter" https://twitter.com/pherim/status/1650840152376479744

 『JUNG_E ジョンイ』Netfli2023 https://twitter.com/pherim/status/1617019881828020228

 


『ジョン・レグイザモのサルでもわかる中南米の歴史』“Latin History For Morons” Netflix
めちゃ情熱的で知性的、パワフルにしてユーモラス。
ヒスパニック系の人々が米国社会でどれだけ不当に蔑まれ辛酸を舐め、それでも活力を失わず今を生きているか。
野卑さと繊細さの饗宴に心底痺れる。

"Latin History For Morons" https://twitter.com/pherim/status/1635469272783945729 

  スクルージ役『バイオレント・ナイト』
  https://twitter.com/pherim/status/1621073100979965952
  ↑ER緊急救命室ラテン医師役出演言及も。


構成も巧くて、中南米の多くの国へ言及するのだけど、カリブ海とくにプエルトリコが出た瞬間の会場盛り上がりがNYぽいなぁと。(実際にどこかは知らず)

かなり前に途中まで観ていたのだけど、今回ミシェル・ヨーのオスカー受賞の流れで観たら格段に嵌ってしまった。

  ミシェル・ヨー東洋人女優の苦渋と栄光スレッド
  https://twitter.com/pherim/status/1614937702855757826


書きかた微妙ゆえ補足。プエルトリコは非国家だけど近隣島国同等の固有性があり、代表チームも出るし大量移民先のNYには巨大コミュニティ健在。米占領下沖縄にやや似。
ちなWBCでオランダが強豪なのは、欧州本土選手というよりキュラソー島とかカリブ海の蘭自治領勢が強いから。





 余談。

  2023年3月映画ランキング my best10 https://twitter.com/pherim/status/1641373874632949763

 毎月ベスト10をつけつづけて地味に1年以上たってました。その時々で微妙に基準や好みが変わっていくのも記録されるようで、引用RTからどんどん遡っていくのも結構楽しい。(その変化については自分にしかわからないだろうけど)

 ツイッターは見てないひともそこそこいるだろうと気づいたのもあり、付記。てかベスト10そのものをふぃるめもに載せてけばいいのか。というわけで。
 
 
 #2023年3月映画ランキング my best10
 
 コンパートメントNo.6
 ジョージア、白い橋のカフェで逢いましょう
 ザ・ホエール
 あなたの目になりたい
 Everything Everywhere All at Once

 オマージュ
 零落
 落葉
 ダークグラス
 トオイと正人

 次点:書かれた顔4K
 番外:Latin History For Morons



 エブエブが意外に下がった感。あと書かれた顔4K圏外も。もち面白い作品と多く出逢えたのは僥倖として。





おしまい。
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