今回は、6月1日~6月17日の日本上映/配信開始作を中心に、10作品を扱います。(含ドラマ1シーズン, 再掲1作)
※6月16日公開作『アシスタント』『青いカフタンの仕立て屋』他については次回とりあげます。
また6月2日公開作『ウーマン・トーキング 私たちの選択』『苦い涙』フドイナザーロフ特集等については前回扱いました。
タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート
[https://twitter.com/pherim]まとめの第269弾です。
強烈オススメは緑、
超絶オススメは青で太字強調しています。
(2020年春よりドラマ含むネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしばタイトル黒太字表記です。)
■6月1日配信作
『THE DAYS』Netflix
役所広司、神懸かり的。
福島原発事故の1週間を重厚に再現する手つきは、HBO傑作『チェルノブイリ』をも沈着冷静に更新する。
俳優の泣き叫びや説明ゼリフが溢れる邦画/日本ドラマの悪習は削られ、沈黙と厳かさで緊迫演出をこなす世界標準の和製ドラマ&いぶし銀の名優陣ガチ満喫。
"THE DAYS" https://twitter.com/pherim/status/1664867960744460288
『チェルノブイリ』スレ https://twitter.com/pherim/status/1177785498783191040
『チェルノブイリ1986』https://twitter.com/pherim/status/1512259852407508996
拙稿「ルーシの呼び声 (2) 」『チェルノブイリ1986』『インフル病みのペトロフ家』ほかをめぐって。
http://www.kirishin.com/2022/05/20/54383/
■6月9日公開作
『テノール! 人生はハーモニー』
寿司の出前バイトでオペラ座を訪れた青年が、
挑発に乗ったことから天性の美声を見出される。
ビートボクサーのMB14主演だけありラップバトルと声楽場面は見応え充満。本物のガルニエ宮ロケ撮も眼福で、格差を背景とする成長譚型パリ郊外映画の系譜を堂々更新。
"Ténor" https://twitter.com/pherim/status/1665342475882610688
『パリに見出されたピアニスト』https://twitter.com/pherim/status/1176327584222564353
パリ郊外映画スレッド: https://twitter.com/pherim/status/1234164785815515136
『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』
最高すぎて今年前半BEST確定。
世界を救うため犠牲を払ってきた。
しかしそれは本当に必要だったのか。
描画の革新性は前作を遥かにしのぎ、超今日的テーマを究極密度で語る製作陣の覚悟に戦慄。
多次元宇宙を敵に回しても、あなたを守る。
"Spider-Man: Across the Spider-Verse - Part One" https://twitter.com/pherim/status/1665683213241679879
この画は劇場で観てというしかない。ケタ違い。
通念化への抗いから筆描へ帰結した高畑勲『かぐや姫の物語』に匹敵する狂気を感覚。
革新的アニメ表現には数年に一度驚かされるけど、中でもこれはピカイチでした。
『スパイダーマン:スパイダーバース』連ツイ https://twitter.com/pherim/status/1085737242763522050
冒頭を飾るグウェンの物語が、再鑑賞ではより鋭敏に感覚される。明示的でなくふとした仕草や表情の仄めかす、心の襞のざわめきが静かに熱い。
黒の深さと音の厚みから、Dolby Cinemaにて再見。元科学者スポットが生むPotal穴の鬼マット暗黒感。
『エリック・クラプトン アクロス24ナイツ』
1990&91年ロイヤル・アルバート・ホールでの伝説的ライヴ“24ナイツ”から、ベストパフォーマンスを選び抜いた4K再現。
オーケストラと1人で拮抗、アルバート・コリンズらと競演する、悲劇の事故で息子を失う直前に到達した頂点からの響きが胸を打つ。
"Eric Clapton - Across 24 Nights" https://twitter.com/pherim/status/1669177249801863168
『エリック・クラプトン 12小節の人生』https://twitter.com/pherim/status/1064455539583676416
『エコー・イン・ザ・キャニオン』https://twitter.com/pherim/status/1529774363800928258
『逃げきれた夢』
物忘れの加速する教頭が、退職を前に生き惑う。
二ノ宮隆太郎/監督長編第4作。役者の長所に傾注する主演/光石研への心酔ぶりと、気の強い教え子/吉本実憂や実娘/工藤遥の役柄は、萩原みのり全力推しの『お嬢ちゃん』を想わせ魅せる。
松重豊と光石の九州弁による交友もガチ熱い。
"" https://twitter.com/pherim/status/1665920457349136385
『お嬢ちゃん』https://twitter.com/pherim/status/1177050699034550272
『枝葉のこと』https://twitter.com/pherim/status/993687008961703936
『ミート・ザ・フューチャー~培養肉で変わる未来の食卓』
培養肉の拓く未来。
フード・テックCEOウマ・ヴァレティ博士の活力ある佇まいと、培養肉ビジネス最前線が興味深い。
未来展望の影へ目配せしないカリフォルニアン・イデオロギー礼賛ムーヴに、対極の食糧映画傑作Ghost Fleetも想起され。
"Meat the Future" https://twitter.com/pherim/status/1666275609335717888
『ゴースト・フリート 知られざるシーフード産業の闇』https://twitter.com/pherim/status/1530080708332781568
『牛』https://twitter.com/pherim/status/1454791119078715393
『GUNDA グンダ』https://twitter.com/pherim/status/1467478395663847425
『リファッション~アップサイクルでよみがえる服たち』
ゴミ埋め立てが地形を変えゆく香港事情へ、衣料廃棄の観点から迫る。
香港人の楽天性が活かされた全編の軽快さと、私企業が公共問題をより意識せざるを得ない政治的特殊性は印象的。紡績工場萌えにも応える一作。
"Refashioned"
『ノーマ・レイ』https://twitter.com/pherim/status/1613743745773752324
『マリとユリ』https://twitter.com/pherim/status/1662310961192243200
『水は海に向かって流れる』
母のW不倫で壊れた家庭に育った主人公の暮らすシェアハウスへ、母の不倫相手の息子高校生が入居してくる。
主演/広瀬すずの役柄が、腹違い姉妹と出逢う『海街diary』少女役を継ぐようで、瑞々しくも何と風情豊かな女性になったなと感じ入る。北村有起哉&生瀬勝久よい味。
"" https://twitter.com/pherim/status/1665188341120368640
『海街diary』『MOTHER マザー』長澤まさみ&夏帆ツイ
https://twitter.com/pherim/status/1278324463541514242
■6月16日公開作
『探偵マーロウ』
1930年代LAに事務所を構える腕利き探偵の、沈着にして優雅なる事件解決。
マイケル・コリンズ等に続くニール・ジョーダン監督&リーアム翁のアイリッシュ・タッグ3作目は、レイモンド・チャンドラー小説の流麗さを損なわずにノワール映画化、渋く魅せる。
チョイ役アラン・カミングもイカす。
"Marlowe" https://twitter.com/pherim/status/1668451091925856256
■6月17日公開作
『世界が引き裂かれる時』
2014年ドンバス戦争勃発。夫婦は誤射で壁を破壊された草原の家に住み続け、妻は臨月を迎える。
黒海北岸ステップ平原の戦場化描写が逐一具体的で生々しい。妊娠という生理と国際情勢がシームレスに連動し、壁の大穴を通し匿名的個人とマレーシア航空機墜落の煙が接続する寓話性。
"KLONDIKE" https://twitter.com/pherim/status/1601917613478924288
余談。予測不能の痛恨事ほか色々あって更新さらに遅れ気味。1ヶ月ぶんくらい巻き返さないとだけど、それだけでも数ヶ月事業になりますの。以前なら観ていた新作もかなり削っているのが現状です。まぁ、一作一作だいじにして参りとう。
おしまい。
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コメント
06月22日
06:28
1: いなだ つつみ
>予測不能の痛恨事
おつかれさまです。やはり人生は思ってもみないことがおきるものですね
06月28日
13:44
2: pherim㌠
日々の気力の回復ルーチンが見失われる感じがなんともつらめです。意識できてないだけで、人生の潮目みたいなものが変わろうとしているのかも。