pherim㌠

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pherim㌠さんの日記

(Web全体に公開)

2023年
06月28日
13:37

ふぃるめも270 青い鹿と引き裂かれる世界の角

 
 

 今回は、6月16日~23日の日本上映開始作を中心に、10作品を扱います。(含ドラマ1シーズン/再掲2作)

 タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート[https://twitter.com/pherim]まとめの第270弾です。強烈オススメは緑超絶オススメは青で太字強調しています。(2020年春よりドラマ含むネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしばタイトル黒太字表記です。)


 
■6月16日公開作

『アシスタント』

映画製作会社で大物プロデューサーのアシスタント業務に就いた主人公の、憧れとは真逆の色褪せた日々。
理不尽な感情労働が日常化し、昼も夜ものっぺりとつづく閉塞感を、#Metoo 震源の映画業界へ深く取材した監督が厳かに映像化する。
オフィスにただよう静けさの鋭利な不穏。

"The Assistant" https://twitter.com/pherim/status/1670766753033621505

 『スキャンダル』https://twitter.com/pherim/status/1227421852819001344
 『フェアウェル』https://twitter.com/pherim/status/1310776656416530432

 
『アシスタント』が映す、昼でも夜のように沈んだ色調のオフィス描写は寒々しくも心地よい。
ノワール系とも異なるこの張りつめて渇いた夜の冷温感覚に、『女神の見えざる手』も想起され。
あとブラムハウスやDCでよくみるパトリック・ウィルソンの唐突カメオ、ニヤける。

『女神の見えざる手』https://twitter.com/pherim/status/920123721322446853




『青いカフタンの仕立て屋』
カサブランカ旧市街で仕立て屋を営む夫婦の日々。
末期乳がんに冒された気丈な妻は、繊細な芸術家肌の夫が自らの死後も誇り高く生きられるよう最後の選択を為す。
同性愛が処罰対象のモロッコ社会を抉りながらも、抑制された構成美で魅せるマリヤム・トゥザニの粋。

"Le bleu du caftan" "The Blue Caftan" https://twitter.com/pherim/status/1672948469693313024

トゥザニ前作『モロッコ、彼女たちの朝』https://twitter.com/pherim/status/1422754616626741248

『⻘いカフタンの仕立て屋』妻役・ルブナ・アザバルの、病床でも気丈に繊細な夫を守る演技は真に凄まじい。
癌で痩せ細る姿を撮影期間中の減量で再現、終盤の痩躯はCGと疑う酷い姿で、女版クリスチャン・ベイルここにあり感。初期作から芯の強さが印象深い彼女の代表作更新。

『エグザイル 愛より強い旅』“Exiles” 2004 https://twitter.com/pherim/status/1640828119186821120
『テルアビブ・オン・ファイア』https://twitter.com/pherim/status/1191902626884907008
拙稿「伝統料理フムスの兆しかもす未来」 http://www.kirishin.com/2019/12/13/39661/





『探偵マーロウ』
1930年代LAに事務所を構える腕利き探偵の、沈着にして優雅なる事件解決。
マイケル・コリンズ等に続くニール・ジョーダン監督&リーアム翁のアイリッシュ・タッグ3作目は、レイモンド・チャンドラー小説の流麗さを損なわずにノワール映画化、渋く魅せる。
チョイ役アラン・カミングもイカす。

"Marlowe" https://twitter.com/pherim/status/1668451091925856256
 
 


■6月17日公開作

『世界が引き裂かれる時』

2014年ドンバス戦争勃発。夫婦は誤射で壁を破壊された草原の家に住み続け、妻は臨月を迎える。
黒海北岸ステップ平原の戦場化描写が逐一具体的で生々しい。妊娠という生理と国際情勢がシームレスに連動し、壁の大穴を通し匿名的個人とマレーシア航空機墜落の煙が接続する寓話性。

"KLONDIKE" https://twitter.com/pherim/status/1601917613478924288




■6月23日公開作

『告白、あるいは完璧な弁護』

密室殺人で無罪を勝ち獲った容疑者のIT社長が、ある交通事故死にも関わっていたことから転がりだすクライム・サスペンス。
羅生門展開の主観視点が、3人からどんどん増えゆく趣向は新鮮。精密細工のような脚本を名優キム・ユンジン&ソ・ジソブが活かし切る。終幕も見事。

"자백" "Confession" https://twitter.com/pherim/status/1671387995029774337

『バーニング 劇場版』https://twitter.com/pherim/status/1086468613412814848




『NO LIMIT,YOUR LIFE ノー リミット,ユア ライフ』
難病ALSを患うクリエイター武藤将胤の挑戦。
本人の苦闘はいわずもがな、広告代理店勤めの若き将胤さんに声をかけられ“チャラい”印象をもった木綿子さんが、発病後のプロポーズを受け入れ溌溂と介護する様にも感動を覚える。天使は実在するのね。

"" https://twitter.com/pherim/status/1673161577430945792

『ギフト 僕がきみに残せるもの』 https://twitter.com/pherim/status/896718080885137410
拙稿「困難のない人生のためには祈らない」http://www.kirishin.com/2017/08/14/8091/





『To Leslie トゥ・レスリー』
宝くじ賞金を酒に溶かしたアル中おかあさんの、再生へ向けた七転八倒の日々。
’50~60年代の酒場やモーテル、ダイナーを設えとする35mmのザラ目質感が良い。
周辺人物との優しい距離感や息子との緊張関係などは、アサイヤス&マギー・チャン秀作“Clean”を想起させる。

"To Leslie" https://twitter.com/pherim/status/1672797588951797762

"Clean"他言及ツイ https://twitter.com/pherim/status/1092025867860041728




■国内過去公開作(含映画祭上映作)

『ヴィレッジ』

山陵そびえる絶景の中腹から、巨大なゴミ処理施設が限界村を見下ろす異様。帰郷した女、残った青年、出ていった刑事。
薪能「邯鄲」を全編の通奏低音とする試みが、古田新太や西田尚美ら存在感ある端役まで共鳴し切らず、世界狙った感あるも芯が弱い。中村獅童の稽古場面は流石。

"" https://twitter.com/pherim/status/1673893122055766016

『THE DAYS』Netflix https://twitter.com/pherim/status/1664867960744460288




『きさらぎ駅』
都会を走る電車が突如存在しない田舎駅へ停まり、降り立った主人公が体験する異世界模様。
2ch発の都市伝説を、B級ホラーへ仕立て直し低予算下で色々頑張った感。終盤の安CG頼りが切ない。脇役の芹澤興人が良かった分、主演/恒松祐里のシリアス一本槍と佐藤江梨子の説明ゼリフ一辺倒が惜しい。

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今泉力哉初期短篇/芹澤興人初期出演作『微温(ぬるま)』https://twitter.com/pherim/status/1320185988992303104




■国内劇場未公開作(含VOD公開/DVDスルー作)

『スイート・トゥース:鹿の角を持つ少年』 Season1

動物x人間のハイブリッド新生種たちが、
終末世界を強く生き抜く冒険活劇。
28日後やWALKING DEADほか終末世界SF傑作群の風味を継ぎつつ、コロナ禍の逼塞感&社会の視野狭窄感をファンタジー冒険活劇へ見事に昇華。
鹿少年の耳こそ隠れた演技巧者。

"Sweet Tooth Season 1" https://twitter.com/pherim/status/1673303515861774338

 

 

 余談。来た試写案内はできるだけ多く観る、を心がけ去年まで8割鑑賞ラインを割ることは稀だったはずだけれど、今年に入ってこの数字は大きく落ち込み、6月に至ってはもしかしたら半数近くを諦めているかもしれない。その中には『カードカウンター』始め観たかったし観るべきだった作品も複数含まれ残念でならないが、この割合自体は今後回復しない気もすこしする。書くことを正面に据えると、時間の制約からどうしても視聴本数を絞らざるを得ない。
 どう絞るかについて、慣らされた方法がまだ身についてないことに今更気づく。





おしまい。
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