今回は、8月9日の日本上映開始作と、クシシュトフ・ザヌーシ/Krzysztof Zanussi監督作群から10作品を扱います。(含配信ドラマ1クール/短編1作)
タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート
[https://twitter.com/pherim]まとめの第318弾です。
強烈オススメは緑、
超絶オススメは青で太字強調しています。
(2020年春よりドラマ含むネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしばタイトル黒太字表記です。)
■8月9日公開作
『夜の外側 イタリアを震撼させた55日間』
1978年の元首相アルド・モーロ誘拐事件を描く、
マルコ・ベロッキオ渾身の6時間ドラマ。
政界/襲撃/法廷全てが迫真演出。キリスト教民主党党首モーロと教皇パウロ6世の関係描写は、チャーチルとエリザベスを思わせ興味深い。
"Esterno notte/Exterior, Night" https://x.com/pherim/status/1821007344022778283
『エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命』https://x.com/pherim/status/1784063390719279289
『シチリアーノ 裏切りの美学』https://x.com/pherim/status/1297420717789605890
『甘き人生』https://x.com/pherim/status/884021926313607168
拙稿 【映画評】『甘き人生』https://www.kirishin.com/2017/07/19/7678/
『マルクスは待ってくれる』https://x.com/pherim/status/1817185156387820025
『ボレロ 永遠の旋律』“Bolero”
永遠ループが中毒性ある名曲ボレロの発生過程を描く、『夜明けの祈り』のアンヌ・フォンテーヌ新作。
ボレロを「混沌の内に終わる人生の寓話」と自ら評したラヴェルの、戦争体験やJazz、工場音に感応し、病と闘いミューズに囲まれた背景描写の逐一が興味深い。
"Bolero" https://x.com/pherim/status/1821153440086815200
『夜明けの祈り』https://x.com/pherim/status/877317356510265345
『コメダ・コメダ』https://x.com/pherim/status/1194461717754863616
『夏の終わりに願うこと』“TÓTEM”
少女は感じとっている。誰も教えてくれないけれど、父の誕生日は今日が最後かもしれないと。
みなが望むから、気づいていないフリをする。妹の無邪気な明るさ、つらさを隠す母。繊細な連なりの果て突如訪れる鋭き不穏。リラ・アヴィレス第2作、この監督は要注目。
"TÓTEM" https://x.com/pherim/status/1821469970767008119
『箱』 “La Caja” https://x.com/pherim/status/1508640528694341633
『息子の面影』“Sin Señas Particulares” https://x.com/pherim/status/1453725858095534098
■クシシュトフ・ザヌーシ/Krzysztof Zanussi監督作
『結晶の構造』“Struktura kryształu”1969
成功した物理学者が、田舎で気象学へ転向し素朴に暮らす旧友を連れ戻そうと訪れる。モノクロ美と淡い友情、ポーランド社会風刺。
クシシュトフ・ザヌーシ長編デビュー作にして、のちの全てが凝縮されたまさに結晶。旧友の妻との危うい関係描写でも魅せる。
"Struktura kryształu" "THE STRUCTURE OF CRYSTALS" https://x.com/pherim/status/1826442435897295021
『神に仕える者たち』“Služobníci/Servants” https://x.com/pherim/status/1558431452815294464
『イーダ』https://x.com/pherim/status/1197505806930853888
『イルミネーション』“Iluminacja” 1973
クシシュトフ・ザヌーシ傑作。
現実との正対を試みる青年が、物理学→医学→育児→修道院と挫折を重ねもがく日々を、戦後ポーランド社会の薄明かりが包み込む。
Illuminationは啓蒙/解明の意でアウグスティヌス由来、僧院で隠者の死を看取る場面の隔世感凄い。
"Iluminacja/The Illumination" https://x.com/pherim/status/1821848339517940046
“Constans”“The Constant Factor” 1980
ヒマラヤに消えた父。
寄る辺なき青年の心を、綱で宙吊りとなる工事&登山景が象徴するザヌーシ1980年作。
母の入院に際し、賄賂の必要を教えた看護婦を伴侶としたピロートークで統計と宿命を巡り語った直後の演出が、全編を凝縮し見事。
"Constans" "The Constant Factor" https://x.com/pherim/status/1827903957483827349
『帰れない山』“Le otto montagne” https://x.com/pherim/status/1654022239753478146
『山の焚火』https://x.com/pherim/status/1258606789567713280
『ブータン 山の教室』https://x.com/pherim/status/1377229438467776517
『アンデス、ふたりぼっち』https://x.com/pherim/status/1552847952401793025
“Blutch” https://x.com/pherim/status/1477135171363217414
『山〈モンテ〉』https://x.com/pherim/status/1092417047537963008
“Życie za życie”“Life for Life: Maximilian Kolbe” 1991
イングロリアス・バスターズのナチス将校役で世界ブレイクしたクリストフ・ヴァルツが、アウシュヴィッツを脱走した男の生涯を熱演。
別人の身代わりに餓死した実在神父M. Kolbeへ捧げるザヌーシ監督作。ホロコースト映画の分厚さに唸る。
"Życie za życie" "Life for Life: Maximilian Kolbe" https://x.com/pherim/status/1829325410871726491
拙稿「神はアウシュヴィッツを赦しうるか」https://www.kirishin.com/2021/11/30/51683/
『アウシュヴィッツ・レポート』https://x.com/pherim/status/1420214891839823873
“Life as a Fatal Sexually Transmitted Disease” 2000
末期癌の宣告を受けた老医師の最期の日々。
中世の寒村で、馬泥棒が信仰を得て回心する冒頭2分の劇中劇(↓vimeo動画)が凄まじく良い。が、あとはいつものザヌーシ展開で、題名はパスカル言及等に由来。主人公が翁である辺り、監督直の反映も色濃く感じる。
[youtube動画見当たらず]
https://vimeo.com/467681719
"Zycie jako smiertelna choroba przenoszona droga plciowa"
あとけっこう、老医師が達観しながら現世欲もちょいちょい出すバイタリティの持ち主なのが利いてる。これも監督の(少なくとも内面の)反映では。
“Suplement” 2002
前ツイ↑クシシュトフ・ザヌーシの2000年作原題“Zycie jako smiertelna choroba przenoszona droga plciowa”と同じ作品世界で、主人公を老医師から彼の所有宅に住まう若い男女へ入れ替えたのが2002年“Suplement”。同じ素材も使われ、“Constans”の登山要素も入り込む。いずれ英字幕付をきちんと観たい。
https://www.primevideo.com/gp/video/detail/The-Supplement...
"Suplement/The Supplement"
■VOD配信/TV放映作(非劇場公開作)
『ライリーの初デート?』“Riley's First Date?”
インサイド・ヘッドの後日譚ショート。
娘のBFすわ襲来かと総軍警戒態勢のパパと、ニヤけちゃうママ、に呆れつつも憎めない娘の脳内分泌物たち。ボンヤリ少年が脳内一番騒がしいの、親しみしか。
全編↓ (Disney+日本語字幕あり)
"Riley's First Date?" https://x.com/pherim/status/1825127622680142270
『インサイド・ヘッド』https://x.com/pherim/status/641425936554967040
余談。ひさびさにmubiを堪能できた。クシシュトフ・ザヌーシ全UP作の撤収を5日前に知ったからだけど、考えてみたらmubiまで観切れないモードに入ってもう数年は、ほとんど単に課金だけ続けるサブスクになり果てていた。
30日限定セレクトだった頃は、よく配信終了間際の作品を焦って観ていたものだけど、まさか締め切りがないとやらない病がここまで深刻なものだとは。
など、思わず別方面の教訓を得てまう夏の夜。
おしまい。
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