今回は、第37回東京国際映画祭(2024年10月28日~11月6日開催)部門、部門上映作から12作品を扱います。(含再掲2作)
タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート
[https://twitter.com/pherim]まとめの第343弾です。
強烈オススメは緑、
超絶オススメは青で太字強調しています。
(2020年春よりドラマ含むネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしばタイトル黒太字表記です。)
■アジアの未来
https://2024.tiff-jp.net/ja/lineup/list.html?keyword=&...
『赦されぬ罪』“不赦之罪”
お前は神に赦された者を許せるか。
黄秋生/アンソニー・ウォン演じる牧師が、愛娘を殺した青年の改心と向き合い苦悩する林善+譚善揚監督作。
名作シークレット・サンシャインの信仰主題をさらに深堀り、香港キリスト教会の苦境をも重ねるシリアス一本調子がややつらい。
"Valley of the Shadow of Death" "不赦之罪" https://x.com/pherim/status/1878307585285333009
『シークレット・サンシャイン』https://x.com/pherim/status/9074582832
『赤い原罪』https://x.com/pherim/status/1446795873883619335
『魂のゆくえ』https://x.com/pherim/status/1114741539383545856
『田舎司祭の日記』https://x.com/pherim/status/1398856578409787392
『三匹の去勢された山羊』“三个羯子”
コロナ禍下の禁制を破ってヤギを街へ卸したい男をシテとする、陝西省の山深い僻村での珍騒動。
ウイルス東京へ帰れと祈祷の舞を踊る婆やほか、母国検閲も通らないだろうブラックジョーク群で笑いをとるも、新人監督会場へいるけどQ&A中止など不穏。がんが!
"Three Castrated Goats" "三个羯子" https://x.com/pherim/status/1853097157236236365
『武漢、わたしはここにいる』https://x.com/pherim/status/1455894024565379073
『幼な子のためのパヴァーヌ』“搖籃凡世”
マレーシアの赤ちゃんポストで働く若い女性=フィッシュ・リュウ/廖子妤の目を通し描かれる、多文化社会の亀裂や矛盾をめぐる諸相。
ある利用者の保護から主人公の過去が明かされ、華人社会の宗教風俗がもつグロテスク面へ突貫する静かな白熱展開に見入る。
"Pavane for an Infant" "搖籃凡世" https://x.com/pherim/status/1866313647875830122
『ベイビー・ブローカー』https://x.com/pherim/status/1533292692117295104
『春が来るまで』
夫の自死を受け入れられない女性の日常を静かに追う質実作。
核家族化へ適応した世代の孤独を包摂できない大家族や、職場の同僚、上司たち。日本へ来るイラン映画には稀な個人主義描写と抑制の利きに、ペインティングプールやMajbourimが想い起こされ。
[動画見当たらず]
"Wait Until Spring" "Ta Bahar Sabr Kon" https://x.com/pherim/status/1871750573919490094
『ペインティングプール』https://x.com/pherim/status/1303159740277555200
“Majbourim” (No Choice) https://x.com/pherim/status/1581992838052872192
『花嫁と角砂糖』https://x.com/pherim/status/1308024457609375745
『昼のアポロン 夜のアテネ』“Gündüz Apollon Gece Athena”
訳あり地縛霊たちに導かれし、生き別れ実母との和解の旅路。
東地中海沿岸のギリシア遺跡を収める絶景が度々登場して眼福。神話を半端に引用した情緒展開にげんなりしかけるも中盤から盛り返し、成仏しゆく欲望物語の普遍性に和む。
"Apollon by Day Athena by Night" "Gündüz Apollon Gece Athena" https://x.com/pherim/status/1853239583070404903
『メルテム 夏の嵐』https://x.com/pherim/status/1275738861134471168
トルコの世界遺産のギリシア系遺跡 https://x.com/pherim/status/717404701650595841
■ウィメンズ・エンパワーメント
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『イヴォ』“Ivo”
緩和ケアの看護師であり母である主人公が、あるクライアント家族と恋仲になった果てに迫られる倫理上の選択。
ひとりになれる愛車空間に憩う描写を始め、他者の命扱う重圧を受け流しきれない内面表出を質実にこなす力量は『或る終焉』を想起させるも、終盤の素っ気なさはやや意外。
"Ivo" https://x.com/pherim/status/1868486733685477646
『或る終焉』https://x.com/pherim/status/734869221834772480
『すべてうまくいきますように』https://x.com/pherim/status/1621735620602384384
『母性のモンタージュ』“虎毒不”
香港新界で暮らす若い母親のリアル。夫や義母の無理解、育児と仕事の両立困難、制度の不備、もう無理と叫んでも届かない日々。
にもかかわらず、祝福されていること。日常の逼塞を丁寧に撮る陳小娟/オリバー・チャン監督の、世界肯定への強靭な意思に慄える。(続
"虎毒不" "Montages of a Modern Motherhood" https://x.com/pherim/status/1851771067955843127
夫役や陳小娟の映像表現ほか追記予定
『淪落の人』https://x.com/pherim/status/1221655891801337856
『三個金幣』(’13) https://x.com/pherim/status/1161212848170651649
Jacqueline Rose『母たち 愛と残酷さについて』https://x.com/pherim/status/1595319748560326656
カモンカモンRT
母の苦渋、にもかかわらずそれは祝福されていること、幸福なこと、必ず報われること。母への最大限のエールであると同時に、この映像による世界肯定の力が凄い。
『灼熱の体の記憶』
おばあさんたちの性、その記憶と現在。
より強い社会的抑圧下を生き抜いた彼女らの抱えるトラウマから、逆照射される今日の生きづらさを映す孫世代監督の鋭き目線。
遠いロマンスの思い出に生きるばかりじゃないんだよ、っていうあたりは去年観た上海ばあちゃんも想起され。
"Memories of a Burning Body" "Memorias de un cuerpo que arde" https://x.com/pherim/status/1871399132839219688
『メイ』“梅的白天和黑夜” https://x.com/pherim/status/1825266907949453452
『ブラックバード、ブラックベリー、私は私』https://x.com/pherim/status/1863556226380189908
■特別上映
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『対外秘』
1990年代の釜山を舞台にくり拡げられるポリティカルノワール夜。
与党公認を取り消され不正で落選させられた主人公が、極秘文書を入手し黒幕へ逆襲する、『悪人伝』のイ・ウォンテ監督作。狼たちの墓標以降、地方の港町舞台の韓流ノワールは粒揃い続きで新作が毎度楽しみ。
"The Devil's Deal" "대외비" https://x.com/pherim/status/1855948696334299262
『悪人伝』https://x.com/pherim/status/1267654449054355461
『野獣の血』https://x.com/pherim/status/1612436468315873280
『狼たちの墓標』https://x.com/pherim/status/1528272006143430656
『ヴェノム』
正義を相対化する今日性。
ダーク/アンチヒーロー&バディ物にしてイマジナリーフレンドを取り込む、マーベル映画化の遅さが蓄積活かす吉と出た秀作。
エミネムED曲もキマってる。ちな寄生獣とどっち先論争はVenom原作’84年でQED。雑貨屋女店主チェンさんの泰然自若ぶり好き。
"Venom" https://x.com/pherim/status/1875036338438938852
『寄生獣 -ザ・グレイ-』https://x.com/pherim/status/1873996367775097319
『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』
ウディ・ハレルソンが、レクター博士の監禁状態だった第1作から脱獄起動。ステンドグラスも鮮やかな大聖堂での対決で魅せるが、物語的にはダレる。
“Breath”↓監督作と知り少し納得。次作が“The Batman”なの、リベンジよな。
"Venom: Let There Be Carnage" https://x.com/pherim/status/1881337285800759412
『ブレス しあわせの呼吸』https://x.com/pherim/status/1036612535867207682
『不思議の国のシドニ』
作家役イザベル・ユペールが日本を旅する。夫の幽霊役アウグスト・ディールとの絡みは2人の演技力に脱帽。
京都や被災地、広島等を巡るインバウンド映画で、“外国人がみたい非実在日本”表現極まる。オリエンタリズム目線を貫く謎演出が、全てを換骨奪胎しゆく夢幻の心地。
"Sidonie au Japon/Sidonie in Japan" https://x.com/pherim/status/1866683861809369349
『岸辺の旅』https://x.com/pherim/status/659324462806863873
『ポルトガル、夏の終わり』https://x.com/pherim/status/1294104183960793091
『私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰?』https://x.com/pherim/status/1714469927246311664
『エル』https://x.com/pherim/status/905443824511574016
『名もなき生涯』https://x.com/pherim/status/1230430112287354881
『復讐者たち』https://x.com/pherim/status/1418414158622511107
余談。新設のウィメンズ・エンパワーメント部門、正直舐めてました。陳小娟の新作来ることすら気づいておらず不覚。まぁ観られたし、最高だったので良しとしますけど。
キリスト新聞紙面へ、映画祭まとめ記事を寄稿しました。↓
「《母と娘》に映り込むもの 第37回東京国際映画祭/第25回東京フィルメックス」
https://www.kirishin.com/2024/12/23/70845/
おしまい。
#ふぃるめも記事一覧: https://goo.gl/NXz9zh