pherim㌠

<< 2025年11月 >>

1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30

pherim㌠さんの日記

(Web全体に公開)

2025年
11月19日
23:50

ふぃるめも384 メーサーロシュ・マールタとマーク・ドミニク・マンジャンホン

 
 

 今回は、《 Mészáros Márta 監督特集 第2章》上映全7作と、11月21日の日本公開作から10作品を扱います。(含再掲1作)

 ※同企画第1章全5作については、「ふぃるめも267 メーサーロシュ・マールタと魔女教室」: https://tokinoma.pne.jp/diary/4933 にて扱いました。再掲作分の調整は10-12月ふぃるめもの配信ドラマ/アニメ換算にて。
 
 タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート[https://twitter.com/pherim]まとめです。強烈オススメは緑超絶オススメは青で太字強調しています。(2020年春よりドラマ含むネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしばタイトル黒太字表記です。)


 
■11月21日公開作

『ドミニク 孤高の反逆者』
コロンビアに降り立った流れ者のウクライナ女が、生真面目すぎて命狙われる警官フリオの家族を襲う危機へ立ち向かう。
カルテルや腐敗警察相手に無法地帯で屹立するグリンガ(よそ者白人女)の今日的西部劇な設えが、ウクライナを背負って陰翳増すニュアンスも良い。

"Dominique" https://x.com/pherim/status/1991468891202285595

『SISU/シス 不死身の男』https://x.com/pherim/status/1774644933137485857
『ナチス・バスターズ』https://x.com/pherim/status/1465318409076232204
拙稿「神はアウシュヴィッツを赦しうるか 再監獄化する世界」https://www.kirishin.com/2021/11/30/51683/





『満江紅/マンジャンホン』
チャン・イーモウ/張芸謀新作は、匠の技を感じさせる宮廷陰謀物。
南宋の名将/岳飛の詩「満江紅」に基づく本作では、崖上のスパイ(↑)の謀略濃度が羅生門級の閉鎖空間へと結晶、同じ史劇でもグレートウォールより全然楽しい。日本公開待たれる。

"Full River Red" "满江红" https://x.com/pherim/status/1829158789398048920

『崖上のスパイ』悬崖之上 https://x.com/pherim/status/1622114361195241472
『グレートウォール』https://x.com/pherim/status/853192183314235393
『ワン・セカンド 永遠の24フレーム』https://x.com/pherim/status/1525790703917604865


岳飛と秦檜の扱いをめぐる監督Q&A @TIFF2024が興味深い。
Q. 主戦派の岳飛を謀殺した秦檜は、講和を図った点で業績もあるが映画では完全に悪役、なぜ?
A. 岳飛の詩「満江紅」は中国なら誰でも知っており、史的評価より誰からも愛されるようになった過程こそが描きたいテーマだった。




『マーク・アントニー』Mark Antony
バック・トゥ・ザ・フューチャー4インドで爆誕、の趣き。
S.J.スーリヤの怪演に、ヴィシャールが真顔で応える連続が永遠笑える、バタフライ・エフェクト並行世界エンタメ。
電話になったデロリアン他ハリウッド名作パロ満載なのも、BttF世代の目に嬉しい。

"Mark Antony" https://x.com/pherim/status/1991102400003027237

『ジガルタンダ・ダブルX』https://x.com/pherim/status/1832031407524479311
『政党大会 陰謀のタイムループ』மாநாடு https://x.com/pherim/status/1916336330646425738





■メーサーロシュ・マールタ監督特集 第2章
 https://meszarosmarta-feature.com/
 
『エルジ』Eltávozott nap 1968
児童養護施設の日々に嫌気がさし、実母を訪れるも姪と偽られて始まる女の変転暮らし。
男を渡り歩いて遂げる数奇な出逢いの逐一が突き抜けており見飽きない。が、特に深まりもしないのは第1作ゆえか。紡績工場+女工シーンの共時性など想う。

"Eltávozott nap" https://x.com/pherim/status/1986628885497471265

『マリとユリ』1977 https://x.com/pherim/status/1662310961192243200
『ノーマ・レイ』“Norma Rae” 1979 https://x.com/pherim/status/1613743745773752324





『月が沈むとき』Holdudvar 1969
名士の夫に先立たれ相続を拒み新たな人生を望む主人公が、世間体重視の息子に軟禁される。
息子の婚約者が、口では唾棄しながら主人公へ感応しゆく描写も鋭いメーサーロシュ・マールタ長編第2作。
DV必至な予感醸すイケメン息子役も巧い。

"Holdudvar" "Binding Sentiments" https://x.com/pherim/status/1987714387898196249

『女の子は女の子』Girls Will Be Girls https://x.com/pherim/status/1863408614364647440




『リダンス』Szabad lélegzet 1973
織物工場の女工が、大学生と恋に落ちるも学生のフリを貫く。
同世代の学生らや円満な中流家庭に引け目を感じる主人公の目線を通した、社会主義国となっても変わらない階級格差。
能天気に歌って意気投合する父同士を尻目に、二人の母との対峙描写が流石に鋭い。

"Szabad lélegzet" "Riddance" https://x.com/pherim/status/1988802215465861376

『イルミネーション』“Iluminacja” 1973 https://x.com/pherim/status/1821848339517940046




『ジャスト・ライク・アット・ホーム』Olyan, mint otthon 1978
血の繋がらない父娘の出逢いと蜜月、そして。
女性監督だろうと今ならNGな瑞々しいカットの続くメーサーロシュ私小説作。
アンナ・カリーナが父娘を揺さぶる恋人アンナ役で登場、異質な存在感が妙に利く。

"Olyan, mint otthon" "Just Like at Home" https://x.com/pherim/status/1990397896538067438

『アンナ・カリーナ 君はおぼえているかい』https://x.com/pherim/status/1271689436682530816




『日記 子供たちへ』Napló gyermekeimnek 1980-83
メーサーロシュ・マールタ自伝的3部作、始まる。
ヤン・ノヴィツキが父と父に激似の後見人を好演、監督自らの分身となる少女役Czinkóczi Zsuzsaとの疑似父娘が定着し、ハンガリー現代史を象徴する。バナナを知らない子供らなど描写が新鮮。

"Napló gyermekeimnek" "Diary for My Children" https://x.com/pherim/status/1992077148866433096

『バリエラ』https://x.com/pherim/status/1195179700491972608
“Constans” “The Constant Factor” https://x.com/pherim/status/1827903957483827349





『日記 愛する人たちへ』Napló szerelmeimnek 1987
メーサーロシュ・マールタの、全ソ国立映画大学VGIKへ入学した若き日を自伝的に描く日記シリーズ続編。
ハンガリーからモスクワ行きを果たす青春譚も注目ながら、朝鮮系学生もいるVGIK学内描写が白眉。そしてあの日が。(続

"Napló szerelmeimnek" "Diary for My Loves" https://x.com/pherim/status/1993586771977031740

『殺し屋』https://x.com/pherim/status/1122039482939629568
『ようこそ、革命シネマへ』https://x.com/pherim/status/1654364985685065729
『さらばわが愛、北朝鮮』https://x.com/pherim/status/1269838576851709952


『日記 愛する人たちへ』は、ソ連最高裁による監督の実父ラースローの名誉回復判決大写しから始まる。
スターリン葬儀映像も“国葬”↓ばりに使われ、ユーゴとの関係性描写やVGIK学友の故郷シベリア独ソ戦下残酷物語ほか、激ハイコンテクストながら観た甲斐極大の傑作でした。

『国葬』https://x.com/pherim/status/1322013378240372736




『日記 父と母へ』Napló apámnak, anyámnak 1990
スターリン像破壊を含むハンガリー動乱から始まる本編に、制作期1987年~の沸騰がダブるメーサーロシュ・マールタ渾身作。
前作でのティトー批判描写からの反転など、ソ連への怒りに牽引された演出の総体が狂おしく物悲しい。

"Napló apámnak, anyámnak" "Diary for My Father and Mother"

『親愛なる同志たちへ』https://x.com/pherim/status/1510042722190594050
『金の糸』(ოქროს ძაფი) https://x.com/pherim/status/1497193264977301505
拙稿「ルーシの呼び声(1)」https://www.kirishin.com/2022/04/16/53879/

メーサーロシュ・マールタ監督特集 第1章:
『ドント・クライ プリティ・ガールズ!』1970 https://x.com/pherim/status/1658457710818627585
『アダプション/ある母と娘の記録』1975 https://x.com/pherim/status/1659773148961857537
『ナイン・マンス』1976 https://x.com/pherim/status/1661225714002317312
『マリとユリ』1977 https://x.com/pherim/status/1662310961192243200
『ふたりの女、ひとつの宿命』1980 https://x.com/pherim/status/1663903577784430594






 まったくどうして時間がぬ。





おしまい。
#ふぃるめも記事一覧: https://goo.gl/NXz9zh
: