pherim㌠

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pherim㌠さんの日記

(Web全体に公開)

2022年
10月21日
14:31

ふぃるめも241 第34回東京国際映画祭《3》 ワールド・フォーカス部門他

 


 今回は、第34回東京国際映画祭ワールド・フォーカス部門、アジアの未来部門、クロージング作品他から16作品を扱います。(含再掲9作/近回にてドラマ1シーズン1作カウント連打で調整予定)

  第34回東京国際映画祭《1》(ふぃるめも198) https://tokinoma.pne.jp/diary/4390
  第34回東京国際映画祭《2》(ふぃるめも240) https://tokinoma.pne.jp/diary/4687
  
  ※来週末から始まる第35回東京国際映画祭ではなく、去年分。

  去年に続き、いつか更新しようと後回すうち一年たっちゃったシリーズ再来の弐。
  
 タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート[https://twitter.com/pherim]まとめの第241弾です。強烈オススメは緑超絶オススメは青で太字強調しています。(2020年春よりドラマ含むネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしばタイトル黒太字表記です。)


 
■ワールドフォーカス
 https://2021.tiff-jp.net/ja/lineup/list.html?keyword=&...
 
『箱』“La Caja”
メキシコ北部、砂漠の町の共同墓地へ父の遺骨を引き取りに来た少年が、父と瓜二つの中年親父を見かけ居候を決め込む。
ふつうに人情も厚い中年親父が、ふつうに少年を犯罪へ巻き込みゆく、生業と倫理をめぐるメキシコあるある展開の先に広がるビルドゥングス煉獄ロマンの焔。

"La Caja" "The Box" https://twitter.com/pherim/status/1508640528694341633

 『母の聖戦』(市民/La Civil) https://tokinoma.pne.jp/diary/4687




『ムリナ』“Murina”
クロアチアの小島を舞台とする少女の成長&脱走劇。
家父長制と顔に書いてある抑圧父と、その友人の解放系ギラッギラ男との対照が鮮やかで、アドリア海へ潜る主演Gracija Filipovicの肢体で魅せたい製作スコセッシの意図ダダ漏れ感は微笑ましい。あとCliff Curtis久々に目視。

"Murina" https://twitter.com/pherim/status/1600324887482339328

 Cliff Curtisスレッド https://twitter.com/pherim/status/1148401818281529344




『復讐は神にまかせて』
インドネシア武術シラットが全編に炸裂するアクション怪奇ロマンス。
期待値の斜め上すぎて笑う。香港カンフー映画の気配満載なうえ、人ならぬ怪異も加わり突然くノ一ナンバ走り始めるわ、デコトラ絵は動きだすわの謎エネルギー充満。エドウィン作常連Ladya Cheryl大活躍。

"Seperti Dendam Rindu Harus Dibayar Tuntas" https://twitter.com/pherim/status/1455686581109420032 
 
 


『べネシアフレニア』“Veneciafrenia”
観光客のおバカな若者たちが、次々と秘密結社の毒牙にかかる。
ヴェネツィアの路地裏や、屋敷半地下の水路門扉内などを見せてくれる建築萌え。ダリオ・アルジェントやルチオ・フルチら’70sジャッロ/Giallo映画オマージュとはいえ、演出の冗長さが惜しい。

"Veneciafrenia" https://twitter.com/pherim/status/1605397754141761537




『スワンソング』“Swan Song”
くたびれた田舎町の施設でしみったれた日々を暮らす伝説の老ヘアドレッサーが、旧友の遺言をきっかけに蘇る。
すべてを押し流す現実に直面しつつも、生気を取り戻しゆく一日の描写が素晴らしい。
ウド・キアー、いぶし銀とはまさにこのこと。息するだけで名演なのに踊る踊る。

"Swan Song" https://twitter.com/pherim/status/1561916449064898560




『テロライザーズ』“青春弒戀”
台北で起きた通り魔事件を下敷きとする若者群像劇。
突如の忍者行などポップに錯綜するため「わかりにくい」系の感想を散見するけど、臺灣新電影(ニューシネマ)の21世紀更新をしたい監督の意図を踏まえる要。
李沐/Moon Leeと林柏宏/Austin Linの佇まいが大変好み。

"青春弒戀" "Terrorizers" https://twitter.com/pherim/status/1597837427024224256



 
■アジアの未来部門
 https://2021.tiff-jp.net/ja/lineup/list.html?keyword=&...

『アメリカン・ガール』
母の病により米国から帰台した家族の心模様を、異文化生活に馴染めない13歳長女の視点から描く。
カリーナ・ラムが思春期少女の母役を務める、男人四十からの光陰矢。
1990年生まれ阮鳳儀/ロアン・フォンイーの自伝的長編デビュー作。団地暮らしの淡々描写佳き。

"美國女孩" "American Girl" https://twitter.com/pherim/status/1581639095004311552

※邦題『アメリカから来た少女』にて2022年10月より日本劇場公開およびNetflix配信開始。

 『アメリカから来た少女』製作トム・リン/林書宇が監督&主演カリーナ・ラム/林嘉欣デビュー作の
 『男人四十』https://twitter.com/pherim/status/1476175624662564866

 トム・リン/林書宇監督&カリーナ・ラム/林嘉欣主演作
 『百日告別』連ツイ https://twitter.com/pherim/status/832760993088278528
 拙稿トム・リン/林書宇インタビュー http://www.kirishin.com/2017/03/11/8575/

 
 
 
 
『誰かの花』
嵐の日、団地の上階から落ちた花瓶が若い父親を殺す。
工場で働く青年が醒めた眼であたりを見回す。住人の冷えた距離感。痴呆の老父、疑われる中年男、被害者妻の硬直した瞳、少年の憎しみに歪む唇。湾曲するリアル。
寡黙な同僚が溶接し続ける町工場描写の醸す、静かな抜けは印象的。

"Somebody's Flowers" https://twitter.com/pherim/status/1485181386474803202




『ブローカーたち』
土地開発ビジネスの闇を、コネ社員青年の視点から描く。
バラック街の町内会模様と、マニラの摩天楼との対照は鮮烈で、欲と暴力の不穏な影が緊張感を生む。
ブリランテ・メンドーサ製作、安定のミクロ政治活写。門下の新人監督作でメンドーサ組の俳優らが要所を締める良構成。

"The Brokers" https://twitter.com/pherim/status/1598166448790470656

 『復讐』“Payback”https://twitter.com/pherim/status/1507186180118351872
  拙稿「ジェンサンの風 『義足のボクサー GENSAN PUNCH』主演・尚玄インタビュー
  http://www.kirishin.com/2022/05/26/54440/





『よだかの片想い』
顔にあざもつアイコは、取材を受けたルポの映画化を望む若手監督と恋に落ちた途端に軋みを感じだす。
幼い頃あざをからかわれて以来俯きがちに生きる女性の秘めた情熱を、松井玲奈が熱演する。監督業へ心血注ぐ青年役/中島歩はじめ、藤井美菜/手島実優/池田良らの好演が心地よい。

"" https://twitter.com/pherim/status/1570573911963897859




■日本映画監督協会新人賞 上映とシンポジウム
 https://2021.tiff-jp.net/ja/lineup/list.html?keyword=&...
 
『37セカンズ』
出生時37秒の遅れがもたらした脳性麻痺を抱え、母の過保護に汲々とする女性ユマの、解放の兆しへの畏れと渇望が瑞々しい感動作。心に傷負う母役・神野三鈴ほか渋川清彦や渡辺真起子ら熟練の脇役陣が、ユマ役佳山明の熱演を力強く支える。夜の東京から陽光のタイへの転回は爽々しい。

"37 Seconds" https://twitter.com/pherim/status/1224894445344002048

 Netflix『37セカンズ』 https://www.netflix.com/title/81062369

↑すばらしく良い映画なので観て。




■第18回文化庁映画週間
 https://2021.tiff-jp.net/ja/lineup/list.html?keyword=&...
 
『夜明け前のうた 消された沖縄の障害者』
日本で戦前に法令運用された座敷牢“私宅監禁”の存在が、沖縄戦と米軍統治により沖縄でのみ戦後も残り続けた哀史。
竹富島の観光客ゆきかう穏やかな情景と、そこに住まうおばあの記憶語りとのギャップの烈しさ。拘禁性精神病という自家撞着、の今日性思う。

"" https://twitter.com/pherim/status/1488511461630816261

情緒へ訴えがちな演出に序盤からややクドさを感じたが、男女のナレーションのうち男の方は監督本人なのか、端的に内容と不調和で歪つな印象を与えクドさをいや増す。そのうえ謎の白仮面ダンスによる幻想演出や終盤の西アフリカ取材など、逆向きの偏見助長ムーヴさえ感覚され奇妙に映る。

戦後の沖縄で、精神障害者の比率が日本の2倍、調べると戦時中子供であった世代に多いという。『オキナワ サントス』ではブラジルへ飛び火した琉球の八重山差別が描かれるが、知られざる歴史を周知させる作品の存在意義は真に大きい(からこそ問われる演出の巧拙)。

  『オキナワ サントス』 https://twitter.com/pherim/status/1423124588846714880




『二重のまち 交代地のうたを編む』
震災当時は子どもだった若者が、陸前高田に滞在する。
嵩上げにより、かつての町と新しい町が二重化しゆく地で彼ら4人が触れるものと、本作監督小森はるか+瀬尾夏美の十年とが響き合う。ありえた時間とありうる時間の重なり、呼び声と応答の果てなき連なり。

"" https://twitter.com/pherim/status/1365520416752603138 
 
  『空に聞く』 https://twitter.com/pherim/status/1329582085724459008

  拙稿「重なりあう時間たち」 http://www.kirishin.com/2021/02/27/47563/





『きこえなかったあの日』
生まれつき耳が聴こえない今村彩子監督が撮る、東日本大震災からの十年。
熊本地震、西日本豪雨、新型コロナウイルス流行。災害下の障碍者に固有の困難と孤立感とを抱えた人々の姿は、この監督にしか撮れない表情に満ちて熱い。
緊急警報が聴こえない世界への想像力。

"" https://twitter.com/pherim/status/1364942207375958024

  今村彩子前作『友達やめた。』 https://twitter.com/pherim/status/1305698392157290497

  拙稿・今村彩子監督インタビュー「好きとむずかしさのあいだ」
  http://www.kirishin.com/2020/09/20/45250/
  
  拙稿「重なりあう時間たち」 http://www.kirishin.com/2021/02/27/47563/





■「SKIPシティ 国際Dシネマ映画祭2021」 受賞作品上映
 https://2021.tiff-jp.net/ja/lineup/list.html?keyword=&...

『夜を越える旅』
超絶へんてこ奇怪譚。
ヒモ生活寸前の鬱屈と旧友達のリア充感に挟まれて、叶わなかった恋心が炸裂する青春モード絶頂、からの異様すぎる転調にめっちゃときめく。
想い残す過去への決着と苦境脱出のブレイクスルーが重なる巧さから、廃墟愛好家のハート貫く終盤までお好みてんこ盛り。

"Journey Beyond the Night" https://twitter.com/pherim/status/1444989332155105284


 

■クロージング
 https://2021.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3400TOC02

『ディア・エヴァン・ハンセン』
思春期の自殺と優しい嘘をテーマとする学園&ホームドラマ。
エイミー・アダムズvsジュリアン・ムーアの母親対決が、十代の心の物語に厚みを生む様はさすが。
突然歌い出すよ~のミュージカル展開が驚くほど違和感なく、磨き抜かれたブロードウェイ原作と知り納得。

"Dear Evan Hansen" https://twitter.com/pherim/status/1460591683209367555
 




 余談。『洞窟』や『ASU:日の出』も観たけど睡魔に負けたためツイート控え。とくに『洞窟』はのっけから滅茶傑作オーラしかなかったけど、身体コンディションから前半のうち撃沈、再見の機会けっきょく未訪。
 
 今年は年内に更新するぞい。溜めてよいことは何もなかった。(去年もなかった。)





おしまい。
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