今回は、11月23日~12月1日開催の第25回東京フィルメックスのオープニング作品とコンペティション部門上映作から10作品を扱います。
タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート
[https://twitter.com/pherim]まとめの第337弾です。
強烈オススメは緑、
超絶オススメは青で太字強調しています。
(2020年春よりドラマ含むネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしばタイトル黒太字表記です。)
■第25回東京フィルメックス・オープニング作品(特別招待作品)
https://filmex.jp/program/ss/
『新世紀ロマンティクス』“风流一代”Caught by the Tides”
ジャ・ジャンクー/賈樟柯新作は、2001年からコロナ禍まで21世紀中国の孕んだ熱が、四半世紀撮り貯めた素材により描かれる。
長年の伴侶でもある趙濤が黙して旅する軸となり、“中国現代”こそが主役となる重量級の物語に浸った圧倒感覚。
"风流一代" "Caught by the Tides" https://x.com/pherim/status/1860518650387792196
『帰れない二人』https://x.com/pherim/status/1172827488830935041
ジャ・ジャンクー インタビュー拙稿「中国、その想像力の行方と現代」
https://www.kirishin.com/2019/11/27/39116/
(副題「新作映画ジャ・ジャンクー『帰れない二人』、フー・ボー『象は静かに座っている』にみる表現の自由と未来」)
『海が青くなるまで泳ぐ』https://x.com/pherim/status/1334656782556262401
『山河ノスタルジア』https://x.com/pherim/status/720841333636599808
コロナ禍短編「来訪」https://x.com/pherim/status/1253466577376145410
『罪の手ざわり』https://x.com/pherim/status/486005701676781569
ジャ・ジャンクー発香港取材スレッド https://x.com/pherim/status/1153847898074841088
■第25回東京フィルメックス・コンペティション部門
https://filmex.jp/program/fc/
『ベトとナム』Viet and Nam
炭鉱労働者の青年2人が地下数百mの暗闇で絡み合い、もつれ合う。
黒光りする坑道壁と官能描写の重ね他、素材良いのに色々勿体ない。ベトコンの残滓埋もれる中部高原森林での父の遺骨探しや、ボートピープルとコンテナ密入国の合成メタファーなど良カットも幾らかあり。
"Viet and Nam" https://x.com/pherim/status/1863917328263737649
クチのヴェトコン地下トンネル探検 https://x.com/pherim/status/439932408305971200
『鉱 ARAGANE』https://x.com/pherim/status/919382678687772672
『サントーシュ』SANTOSH
殉職した夫の代わりに婦警となった主人公(そういう制度がある)が目撃する、汚職と腐敗、因習と諦念の連鎖。
北インド産クライムノワールという稀なる秀作。カースト/性差別や風刺が盛り込まれつつも緊迫感を維持し、幼娘と穏和な抑圧父、賢人女上司など人物配置も巧い。
"SANTOSH" https://x.com/pherim/status/1861603645202337976
『私たちの場所』“एक जगह अपनी”https://x.com/pherim/status/1650337583686352896
『水の影』 https://x.com/pherim/status/1201345451598893056
『家族の略歴』家庭簡史
エリート家庭へ貧困少年が潜り込み、優秀さにエリート両親は惚れ込んで実子が焦る。
効果音をバシバシ効かせ、イケてる感演出が過剰すぎてダサいのも狙いです、みたいな面倒感ある一方、エイリアンの家族侵入物とわかってからの展開は単調。アンドレの方が肉感あったな。
"家庭簡史" "Brief History of a Family" https://x.com/pherim/status/1862136162024063195
『わが友アンドレ』“我的朋友安德烈” https://x.com/pherim/status/1859151875922424228
『アナイアレイション 全滅領域』 Netflix https://x.com/pherim/status/1845647105442148596
『女の子は女の子』Girls Will Be Girls
優等生女子がイケメン帰国男子と恋するも、女子の母が鋭く介入し、三角戦争前夜の緊迫感にハラハラし続ける118分。
ヒマラヤ山麓のエリート寄宿舎という舞台設定が大変興味深くかつ眼福。男子の昼寝に母が添い寝する光景を眺める娘のつらたん味とか新しい。
"Girls Will Be Girls" https://x.com/pherim/status/1863408614364647440
『娘よ』https://x.com/pherim/status/843982998684934144
"The Sweet Requiem" https://x.com/pherim/status/1178160319161520128
『アラヤ』https://x.com/pherim/status/1324890492388044802
『黙視録』Stranger Eyes
行方不明の幼い娘を探す夫婦の元へ、2人を盗撮したDVDが届いて始まるシンガポール・ノワール、幻土↑の楊修華第2作。
動機不明の男演じる李康生の“生身感”が、監視社会を内面化した人々の平衡感覚へ異を唱える。情緒ベースの後半展開は微妙。
"Stranger Eyes" https://x.com/pherim/status/1862676152827224561
『幻土』https://x.com/pherim/status/1078637735408095233
『日子』https://x.com/pherim/status/1350040145676836869
『ハッピー・ホリデーズ』Happy Holidays
ハイファに暮らすパレスチナ人家族の物語。
各々が直面する人生上の難題を、複雑な背景がより至難とする様へ繊細に切り込む意図は高尚ながら、物語の展開も画の逐一も既視感を出ず、冷静に撮りながら情緒に頼る凡庸さは惜しまれる。
[動画見当たらず]
"Happy Holidays" https://x.com/pherim/status/1864305912607068676
『スウェーデン・テレビ放送に見るイスラエル・パレスチナ 1958-1989』https://x.com/pherim/status/1858143826747294092
『お父さんはナクバと同じ100歳で生まれた』https://x.com/pherim/status/1103866194287722497
『テルアビブ・ベイルート』https://x.com/pherim/status/1592155554302263296
『ソクチョの冬』Hiver à Sokcho
里帰りして民宿で働く娘が、墨絵画家のフランス人旅客に惹かれて始まるひと冬の恋。
画家が田舎の店で画材を口に含みながら選んだり、娘が不意に料理する場面が謎に良い。母子含め距離感が基調テーマとなっていて、日仏ハーフ監督が韓仏作家原作への共感語るQ&Aに納得。
"Hiver à Sokcho" "Winter in Sokcho" https://x.com/pherim/status/1861930629996372124
主演Bella Kimについてなど追記するかもー。
『リトル・フォレスト 春夏秋冬』https://x.com/pherim/status/1128484008151535617
『母とわたしの3日間』https://x.com/pherim/status/1792535088619778225
『空室の女』空房间里的女人
泣きっ面に蜂女の夜の彷徨。
40代主婦の誰とも分かち合えないつらさ描写が延々続き、中年版『母性のモンタージュ』↓を観る心地。夜の映像質感に光るものはあれ、諸々ちぐはぐな観念先行型ムード作で編集がんが。
英題“Some Rain Must Fall”。単に降って終わった。
"空房间里的女人" "Some Rain Must Fall" https://x.com/pherim/status/1861786877210308638
『母性のモンタージュ』“虎毒不”https://x.com/pherim/status/1851771067955843127
『見上げた空に何が見える?』https://x.com/pherim/status/1462615923907391489
『四月』აპრილი
ジョージアで隠れて堕胎処置を行う産科医女性がみる現実の酷薄、内面の危機。
新進女性監督Dea Kulumbegashviliによる極度の抽象とリアリズムの往還は、フェミニズム目線で裁く者を拒み、アートハウス観客を惑わせる。名作“四月”のイオセリアーニ想わす画も散見されるこれは傑作。
"April" "აპრილი" https://x.com/pherim/status/1865952447535239356
イオセリアーニ『四月』აპრილი 1961 https://x.com/pherim/status/1636613247204986882
余談。第25回東京フィルメックス受賞結果
最優秀作品賞 Grand Prize
『四月』April(აპრილი)
審査員特別賞 Special Jury Prize
『サント―シュ』SANTOSH
スペシャル・メンション Special Mention
『白衣蒼狗』Mongrel(白衣蒼狗)
観客賞 Audience Award
『未完成の映画』An Unfinished Film(一部未完成的電影)
学生審査員賞 Student Jury Prize
『サント―シュ』SANTOSH
というわけで、コンペ作で唯一観なかった『白衣蒼狗』がスペシャルメンション獲得という画竜点睛を欠くやもしれぬ鑑賞履歴でしたが、まぁ後悔はなし。特別招待作『未完成の映画』は次々回ふぃるめもにて扱います。ダントツに面白かった。SANTOSHも良かったけど、被らせるくらいならGirls Will Be GirlsかHiver à Sokchoにあげてほしかったですね。どちらも快作で、やっぱ励みになるだろうし。
おしまい。
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