pherim㌠

<< 2024年12月 >>

1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031

pherim㌠さんの日記

(Web全体に公開)

2024年
12月10日
15:55

ふぃるめも339 東京国際映画祭2024《3》 続ワールド・フォーカス部門リプステイン特集、ユース部門ほか

 


 今回は、第37回東京国際映画祭(2024年10月28日~11月6日開催) ワールド・フォーカス部門リプステイン特集、ナンニ・モレッティ特集、マルチェロ・マストロヤンニ特集、クロージング作品、ユース部門など12作品を扱います。(含再掲2作)

 タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート[https://twitter.com/pherim]まとめの第339弾です。強烈オススメは緑超絶オススメは青で太字強調しています。(2020年春よりドラマ含むネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしばタイトル黒太字表記です。)



■ワールド・フォーカス部門3 メキシコの巨匠 アルトゥーロ・リプステイン特集
 https://2024.tiff-jp.net/ja/lineup/list.html?keyword=&...

『純潔の城』“El castillo de la pureza” 1973
父により18年間幽閉され、殺鼠剤を作り続けた一家の実録物語。
世間の悪意から守るためと正義を掲げる父、盲信する母、家の外を知らず性の疼きを覚える姉弟。
出口なき日々を象徴する、雨降り続く中庭の灰暗色がおぞましい。

"El castillo de la pureza" "The Castle of Purity" https://x.com/pherim/status/1858782205121884561

ブリー・ラーソン『ルーム』https://x.com/pherim/status/717280334274887680
『幸福なラザロ』https://x.com/pherim/status/1117991307211751424
拙稿「ラザロとは誰か」https://www.kirishin.com/2019/04/19/24526/





『聖なる儀式』“El santo oficio”1974
16世紀メキシコで起きたユダヤ教徒への迫害描写が丹念すぎて生理にくるアルトゥーロ・リプスタイン監督作。
KKKやゾンダーコマンド、反動分子の三角帽など忌わしさのルーツが凝縮されすぎな異端審問ギミックの数々に見入る。カトリック抑圧者たちの想像力。

"The Holy Inquisition" "El santo oficio" https://x.com/pherim/status/1850918552506872092

『奇跡の女』“Himala” https://x.com/pherim/status/1237209232811765760
『ヒトラーと戦った22日間』https://x.com/pherim/status/1054370057155883012





『境界なき土地』“El lugar sin límites” 1978
農園主が支配する村の、立ち退き間近な娼館を舞台とする群像劇。
チリ作家ホセ・ドノソ原作の映画化を果たせなかったブニュエルの意を継いだ経緯が、濃密構成と深い余韻へ結実。パワフルなオカマヒロインの悲運描写で魅せる。

"The Place Without Limits" "El lugar sin límites"

『ナチュラルウーマン』https://x.com/pherim/status/969932627095388160




『深紅の愛(ディレクターズカット版)』“Profundo carmesí” 1996
濃密な異時空抱えるこれは傑作。
結婚詐欺の常習犯と、騙されながら男を愛する看護士が連続殺人カップルと化すカルト版ナチュラルボーン・キラーズ by アルトゥーロ・リプステイン。
救いなき黄土の荒野を生き延びる女の濃い赤、情緒の深さにただ目眩いする。

"Deep Crimson (Director's Cut)" "Profundo carmesí (Versión del director)" https://x.com/pherim/status/1874074771018965122




『嘆きの通り』“La calle de la amargura” 2015
双子の小人症レスラーと、ふたりの娼婦。
殺人や薬物に塗れたメキシコ裏町、日の差さぬ路地を生き抜く人々をモノクロームで映すアルトゥーロ・リプステイン監督作。“母の聖戦”のアルセリア・ラミレス醸す貧者の風格にただ痺れる。

"Bleak Street" "La calle de la amargura"

『母の聖戦』https://x.com/pherim/status/1606855330092429312




■ワールド・フォーカス部門5 監督特集ナンニ・モレッティ
 https://2024.tiff-jp.net/ja/lineup/list.html?keyword=&...

『チネチッタで会いましょう』
映画の製作現場を物語化した映画を撮る老監督、というありがち事態を本人主演で対象化するナンニ・モレッティ監督新作。
フェリーニ他の名作群が大量引用、マチュー・アマルリックに加え過去作俳優もわらわら出演、奔流のごとく終幕へ殺到する力技に圧倒される95分。

"Il sol dell'avvenire" "A Brighter Tomorrow" https://x.com/pherim/status/1856300657097265584

『母よ、』https://x.com/pherim/status/706445193268989952
マチュー・アマルリック『月の寵児たち』『彼女のいない部屋』https://x.com/pherim/status/1625460754609741825





■ワールド・フォーカス部門4 生誕100周年 マルチェロ・マストロヤンニ特集
 https://2024.tiff-jp.net/ja/lineup/list.html?keyword=&...
 
『異邦人』デジタル復元版 1967

判事:なぜ人を殺した?
ムルソー:太陽がまぶしかったから

のカミュ名篇ルキノ・ヴィスコンティ映画化作。留置所のじっとり湿った時間描写が、高精細化でよりぬめって重量増した感。マストロヤンニの口半開きな空虚顔好き。名作デジタル処理版の再見価値ほんと大。

"The Stranger" "Lo Straniero" https://x.com/pherim/status/1851614250902663479




『ひまわり』“I girasoli”1970 50周年HDレストア版
大戦下、出征し雪原に倒れた男。
終戦後、男を探し鉄のカーテンを超えゆく女。
ひまわり畑の圧倒的生命力と、
かつての惨劇を囁く農婦。
ソフィア・ローレン&マルチェロ・マストロヤンニが駆けるウクライナの大地、今再び戦場化した大地が挽歌を唄う。

"I girasoli" "Sunflower" https://twitter.com/pherim/status/1514433140890120196

拙稿「【映画評】ルーシの呼び声(1)」 http://www.kirishin.com/2022/04/16/53879/




『8 ½』 1963
慄えるし、痺れる。
言わずとしれたフェリーニ怪作あかん、神経に刺さってくる圧、心理じゃなく神経系へギンギン来る。
マストロヤンニ、ニーノ・ロータ。映画に狂う男に狂う。大昔観たのに全編新鮮、信じがたい尖り具合とスピード感。映画すげぇ。アガる。

"Otto e mezzo"

『チネチッタで会いましょう』https://x.com/pherim/status/1856300657097265584




■クロージング作品
 https://2024.tiff-jp.net/ja/lineup/film/37000TOC02

『マルチェロ・ミオ』
マルチェロ・マストロヤンニとカトリーヌ・ドヌーヴとの娘キアラが、鏡に父の面影をみとめ、男装して街へそして旅へ出る。
その姿を茶化すよりも真に受け、数十年ぶりの時空を蘇らせる人々の群像劇が趣深い。実母ドヌーヴとの掛け合いも楽しい、クリストフ・オノレ監督新作。

"Marcello Mio" https://x.com/pherim/status/1866404333384032714

『異邦人』デジタル復元版 1967 https://x.com/pherim/status/1851614250902663479
『ひまわり』(1970 50周年HDレストア版) https://x.com/pherim/status/1514433140890120196
『ひまわり 50周年HDレストア版』について書きました。
【映画評】ルーシの呼び声 (1) https://www.kirishin.com/2022/04/16/53879/

『ハッピー・バースデー 家族のいる時間』https://x.com/pherim/status/1347821659776901121
『太陽のめざめ』https://x.com/pherim/status/761883205553139712





■ユース部門
 https://2024.tiff-jp.net/ja/lineup/list.html?keyword=&...

『フー・バイ・ファイヤー』
ケベックの山小屋でもつれる青年の恋、老練脚本家と監督の亀裂、が招く一触触発の会話劇、からの山登り&渓流下りヤバ展開。
不穏さと緊張の高まりが、動き少ない中盤会話劇のあと頂点で頂点に達する(観れば分かる説明なのです)、練られた構成で引っ張る腕力良い。

"Who by Fire" "Comme Le Feu" https://x.com/pherim/status/1851427298282783086




『煙突の中の雀』“Der Spatz im Kamin”
本年極私BESTの《家》映画。
幼少期を暮らした家で、中年姉妹が各々の家族を連れて過ごす時間が呼び起こす感情の闇と記憶の幻影。
ミニマルな完成度が凄まじい。音響&撮影も抜群で、一軒家における半日の内に、紛うことなき一個の小宇宙が生起退行する。

"Der Spatz im Kamin" "The Sparrow in the Chimney" https://x.com/pherim/status/1866053296374661153

『関心領域』“The Zone of Interest” https://x.com/pherim/status/1791069859855626657
拙稿「『関心領域』“The Zone of Interest”と呼ばれた場所」https://x.com/pherim/status/1791069859855626657






 余談。
 
 東京国際映画祭は10スクリーンくらいで同時上映し続けるため、どうしたってこの機会しか観られないかもしれないマイナー国のマイナー新作映画優先になり、日本映画新作や旧作、日本語字幕の有無はともかくYoutubeほかで大抵観られる旧作名画の特集上映などは後回しになるのです。

 この意味では、アルトゥーロ・リプステイン特集上映、全5作観たのは予定外だったし、でも大満足。これはスクリーンで観ておけて良かった。しかも夜中23時半に終わるような上映の感じは、内容ともども記憶に刻まれた感ある。雨降ってたしなぁ。よきよき。





おしまい。
#ふぃるめも記事一覧: https://goo.gl/NXz9zh
: